腎がんの治療の指標となる腫瘍マーカーはある?

回答者:井上 克己
昭和大学横浜市北部病院 泌尿器科准教授
発行:2011年8月
更新:2013年10月

  

4年前に左腎がんを発症し、左腎臓と副腎を摘出しました。肺と肝臓に転移したため、インターフェロン治療を行った後、ネクサバール、スーテント、アフィニトールで治療を続けています。腎がんには腫瘍マーカーはないのでしょうか。経過を追うにあたり、何を指標にしていけばよいかがわかりません。また、薬物療法を始める前に、その薬物が患者さんに効果があるかどうかがわかる、遺伝子発現検査などの研究は行われているのでしょうか。

(和歌山県 男性 60歳)

A 腎がんに早期発見や治療効果の指標となる腫瘍マーカーはない

残念ながら、腎がんに早期発見や治療効果の指標となる腫瘍マーカーはありません。

進行がんの治療の目安となる予後の指標は、パフォーマンスステイタス(全身状態の指標)、貧血、カルシウム値、CRP(炎症を反映するタンパク質)、LDH(乳酸脱水素酵素)などの値です。最終的には画像診断により、腫瘍の大きさ、数、発生部位などを見て治療方針を決めます。

東日本大震災による福島原発事故以後、放射線の影響を心配してCT検査を躊躇される患者さんがいらっしゃいます。

しかし、進行腎がんの場合は腫瘍マーカーがなく、血液検査だけではほとんど情報が得られないので、CT検査の結果が大事な指標になります。CTの画像診断で経過を追うことにより、適切な時期に薬を切り替えていけるのです。1~2カ月に1度CTを撮る程度なら放射線の影響は心配ありませんので、怖がらずにぜひ検査を受けてください。

また、分子標的治療をする際の治療効果や副作用を反映する遺伝子発現の研究は行われてはいますが、今のところ臨床で応用できるものはありません。

ネクサバール=一般名ソラフェニブ スーテント=一般名スニチニブ アフィニトール=一般名エベロリムス
予後=今後の病状の医学的な見通し

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