抗がん剤が効いた進行喉頭がん。手術しなくてよいか
62歳の父のことでご相談です。父は先ごろ、喉頭がんと診断されました。がんはとても大きくなっており、その時点では喉頭全摘出術を受ける可能性が大きかったのですが、手術前に化学療法を受けたところ、がんが半分以下に縮小しました。そのため、主治医は治療方針について、「手術はやめて、化学療法+放射線治療(化学放射線療法)でもよい」と言っています。私たち家族は父が声を失うことを半ば覚悟していたのでうれしい限りですが反面、治療効果が低下しないか心配です。全摘手術はしなくても大丈夫でしょうか。
(愛媛県 女性 34歳)
A 化学放射線療法を試してからでも遅くない
喉頭がんの治療では発声機能の温存が大きな課題で、抗がん剤を先行して投与し、声を残せる道を探ることがよく行われています。お父様の病期はわかりませんが、進行喉頭がんで術前化学療法を行っているということは、4期に達しているのかもしれません。3期、4期の場合、抗がん剤での効果を見たうえで、切除するか放射線治療を行うかを判断する治療法も行われているためです。
抗がん剤で目ざましい効果が見られた場合、進行がんであっても治療方針を手術から化学放射線療法に切り替えることは珍しくありません。化学療法が効いたということは、そのがんは放射線も効きやすいといえるからです。抗がん剤と放射線を併用すれば、より大きな治療効果が期待できます。もし、がんが残ってしまった場合は、そのときに手術という選択肢を考慮することになります。主治医の判断は妥当といえるでしょう。しかし、放射線治療後の手術では傷の治りが悪くなるため、術後の合併症の危険性が増加します。このことも念頭に置いて治療法を判断されるとよいでしょう。
喉頭がんの化学療法で使われるのは主にシスプラチン*で、これに5-FU*、タキソテール*を加えることも多いです。化学療法で使われた薬は不明ですが、化学放射線療法でも、効果のあった薬を続けて使えばいいでしょう。
また、ご相談者が心配されている手術との治療効果の比較についてですが、確かに局所再発率に関しては全摘手術に軍配が上がります。ただし、手術と引き換えに声は失います。そうした点も踏まえて、どちらの治療法がよいか担当医とご家族で検討されるといいでしょう。
*シスプラチン=一般名 *5-FU=一般名フルオロウラシル *タキソテール=一般名ドセタキセル