CTで2ミリの影。経過観察だけで大丈夫か?
3年前に肺がんの3a期で右肺下葉を切除し、その後、抗がん剤治療を受けました。先月、CT検査で2ミリほどの影が見つかりましたが、「半年後の検査で様子を見ましょう」と言われています。時間が経っても大丈夫なのでしょうか。血液検査の結果は問題ないそうです。
(石川県 男性 65歳)
A すりガラス状の2ミリの影なら、半年後に検査を
CT画像で影が見えた場合には、①細菌などによる炎症によるもの、②炎症の痕(肉芽腫あるいは器質化肺炎という)、③肺のなかのリンパ節、④肺がん、の4つのケースが考えられます。①~③は良性のものです。
ただし、2ミリ程度の影では、このうちどれなのかの判断がまずつきません。そのため、経過を見て手術まで含めた診断が必要かどうかを考えるのが、一般的です。①や②の場合は、炎症が静まれば消えますし、細菌の繁殖が盛んになると大きくなります。③は、感染によってリンパ節が腫れて濃く映ることもあります。
日本CT検診学会のガイドラインでは、画像の影の状態と大きさに応じた、経過観察の判定基準を示しています。具体的には、(1)10ミリ未満のすりガラス状の影の場合は、3カ月後にCTの再検査、(2)10~15ミリ以下の影ですりガラス状内に濃い影が混ざる場合は、1カ月後、(3)10~15ミリ以上で濃い影の場合は、急に大きくなる場合があるので、要注意扱い、となっています。
また学会では、経過観察のうえで、大きくなる場合や変化がない場合は、組織をとって生検を行うことを推奨しています。ただし、ミリ単位の小さいものは、大きくなるまでCT検査で経過を見ることになります。
相談のケースでは、影の状態についての情報がないので、的確なアドバイスができかねますが、通常、10ミリに満たない影については、3カ月から半年の間様子を見るのが一般的です。すりガラスを含む2ミリの影なら半年後の再検査が適切かと思います。
またもう1つ、検査条件の問題も影響します。古いCT装置の場合は画像を1センチ刻みで撮影するものがあります。そうすると、数ミリの影は検査時によって、映ったり映らなかったりするわけで、例えば、以前は映らなかったリンパ節や病変が、次のときには映ったということも考えられます。
最近は、ヘリカルCTでの検査が多く、ミリ単位での撮影ができるため、このような問題も減ってきていますが、術前の検査でたまたま映らなかった影が、術後の検査で見つかるということは起こり得ます。その影が転移による「がん」であった場合には、すでに血液に乗って全身を流れていることになります。もしも肺に小さな影が3つ、4つと増えた場合は、残念ながら再発となります。血液の中を駆け巡っているがん細胞は手術で取りきれないため、化学療法による治療を行います。
また、万一再発であったとしても、抗がん剤の効くがんか効かないがんかによって治療効果、予後が左右されることから、再発転移がはっきりした時点で治療を行えば十分とされています。このような点も含めて、2ミリ程度の影の経過観察の仕方としては、半年後のCT検査が一般的な判断となるのです。
最後に、血液検査については、CEAなどに代表される腫瘍マーカー検査があります。しかし、肺がんの診療においては、術前の検査で値の高かった場合を除いて、再発に関する判断材料にはなりにくいとされています。比較的早期の肺がんの多くは、腫瘍マーカーが正常なのです。