ラジオ波と化学塞栓療法、どちらが肝障害少ないか
3年前に肝細胞がんの手術を受けましたが、先日、再発したことがわかりました。転移した場所が手術では取りにくい場所であるということで、手術はできないと言われました。転移巣は3カ所あり、ほかの臓器への転移はありません。今後の治療ですが、ラジオ波焼灼療法と、肝動脈化学塞栓療法という2つの治療法があるようです。肝機能があまり良くない状態の私の場合、どちらの治療法が肝臓に負担が少ないのでしょうか。現在肝機能は、血清ビリルビン値は3mg/dl、血清アルブミンは3.5g/dl、ICGR15は30%、プロトロンビン活性値は60%です。
(佐賀県 男性 67歳)
A 肝障害が少ないのはラジオ波焼灼療法
肝がんの再発治療には、ラジオ波焼灼療法、肝動脈化学塞栓療法が大きな役割を果たしています。肝がんの再発治療では、他のがんとは異なり、こうした局所療法がよく行われます。
肝がんの治療法の選択は、がんの進行度に加え、肝機能の状態が重要な判断材料になります。なぜなら、たとえがんが治療できたとしても、肝機能が失われて肝不全を引き起こしてしまうと、命の危険に関わってくるからです。
ラジオ波焼灼療法とは、皮膚から針電極を刺し、がんまで到達させて、針先から低周波の電磁波を生じさせ、その熱でがんを焼き殺す治療法です。腫瘍壊死効果は高く、また低侵襲で行うことができるので入院日数も少なくてすみ、患者さんの負担は少ない治療法です。
このラジオ波焼灼療法が可能となるのは、肝障害度の基準*でA、またはBであり、腫瘍が3cm以内で3個までとなります。
一方の肝動脈化学塞栓療法とは、肝動脈に抗がん薬を直接投与して抗腫瘍効果を目的とするとともに、その肝動脈をゼラチン様の塞栓剤や油性の造影剤で塞ぐことによって、がんに栄養を送らないようにして兵糧攻めにするという治療法です。
その方法は、足の付け根の動脈からカテーテルを入れてがんに栄養を送る肝動脈まで進め、抗がん薬、塞栓剤、油性造影剤を注入します。これらの薬剤により肝動脈を遮断することで、がんに抗がん薬が長く留まること、そしてがんに栄養を与えないようにします。
肝動脈化学塞栓療法は、肝障害度がAまたはBであり、腫瘍が3cm以上で4個以上ある場合にも適応となります。
ラジオ波焼灼療法と肝動脈化学塞栓療法では、どちらのほうが肝機能に負担が少ないかといえばラジオ波焼灼療法のほうが少ないといえます。肝動脈塞栓療法では、抗がん薬が肝臓全体に行きわたってしまうために、広い範囲の肝臓組織に影響を与えてしまうからです。
相談者の場合は、転移巣の大きさはわかりませんが、肝障害の基準からいうとどちらも受けることができるかと思います。肝機能の今後の負担も考えて、肝機能の数値をよくみながら主治医と相談されて適切な治療を選ぶようにするとよいでしょう。
*肝障害度は、血清値などによりA~Cの3段階に分類され、Cが最も重症