血液がんの基礎知識 多彩な種類、治療法も様々
血液がんの基本を知ろう 治療成績は上がっている
種類も治療法も多岐にわたる血液のがん。まずは「血液がんとは何か」を特徴や症状、検査や治療の流れといった基本から抑えていきます。
Q1 血液がんの特徴は?
血液がんには多くの種類があります。性質も様々ですが、一番特徴的な白血病で見ると、皮膚や臓器にできるがん(固形がん)とは違った増殖の仕方をします。固形がんは組織に癒着して腫瘍を作っていきますが、白血病では組織に癒着することなく、白血病幹細胞から分化し、血中に流れて行きます。
悪性リンパ腫や多発性骨髄腫は、固形がんと白血病の中間的な性質で、リンパ節や骨髄にがん細胞が集まって固まりを作ります。
Q2 どのようなプロセスでがんになるのですか?
血液がんは、血液の分化の過程で異常な細胞が生じることで発生します。血管の中には、血漿という液体成分の中を赤血球、白血球、血小板といった血液細胞が流れています。赤血球には全身に酸素を運ぶ役割が、白血球には体に入ってきた細菌などの異物を退治する役割が、血小板には出血を抑える働きがあります。そして、これらの基になっているのが骨髄(骨の中心部の組織)にある造血幹細胞です。
造血幹細胞は多様に分化し、いろいろな血球に成長する機能を持っていて、最終的に赤血球など下記のような血液細胞になります(図1)。
しかし、その分化・成長過程で細胞ががん化する可能性があるのです。通常は、血液細胞になると、約2週間で骨髄から血管に入り、それぞれの仕事をした後に自然に死滅し、新しい血液細胞にバトンタッチします。
しかし、この分化のプロセスのどこかで細胞にがん化が起こるとサイクルが乱れ、未熟な異常細胞が極端に増殖したり、生き残り続けたりして、血液がんが発症します。
血液細胞のがん化は、染色体や遺伝子の異常が引き起こすと考えられています。一部の血液がんでは、原因となる遺伝子や染色体が割り出されていて、検査や治療に生かされています。
Q3 どんな種類がありますか?
図3 白血病の主な分類
血液がんの代表的なものは、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫の3つです。血液がんのほとんどを占めていると言えます(図2)。
中でも悪性リンパ腫はいわゆる5大がん(胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、肝臓がん)に次いで多く、人口10万人に対して10人が罹患しています。
どの血液がんになるかは、どのような細胞がいつがん化したかで決まります。白血病は骨髄中の未熟な造血幹細胞ががん化したものです。悪性リンパ腫はリンパ節中のリンパ球ががん化したもの、多発性骨髄腫は骨髄中の形質細胞(リンパ球のB細胞が成熟したもの)ががん化したものです。白血病には、さらにいろいろなタイプがあります(図3)。
Q4 自覚症状はありますか?
3大血液がんの種類ごとに見ていきましょう。急性白血病の初期症状は、インフルエンザなどによく似ています。貧血や発熱、下痢、鼻や歯肉からの出血もあります。慢性白血病は異常細胞が急速に増殖しないため、症状の出方もゆっくりとなり、初期には無症状のこともあります。がんが進行すると、腹部の膨満感や食欲の減退などが発現することがあります。
悪性リンパ腫の場合は、初期症状としては、首やわきの下(腋窩)、鼠径部などのリンパ節の腫れがあります。直径は1~5cmと幅があり、弾力がある硬さで痛みはありません。1cm以上の腫れで痛みがなければ病院に行きましょう。ほかに、タイプによってはせきや腹痛、高熱や体重減少、大量の寝汗など全身症状がみられることがあります。
多発性骨髄腫を発症する平均年齢は60歳代半ばです。原因となる形質細胞はいろいろな機能を持っており、腫瘍化した場合も異常なタンパクを出したり、骨を溶かす細胞(破骨細胞)を活発にするサイトカインが放出されたりするために、貧血、腰痛、骨折などの症状が起こります。
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