これまで薬のなかったT細胞リンパ腫にも、もうすぐ新たな薬が
あきらめない!新薬登場続く悪性リンパ腫の治療
「新薬も毎年登場。たとえ再発してもいろいろな手段があるのであきらめずにがんばりましょう」と話す
新津望さん
(イラスト/佐藤竹右衛門)
悪性リンパ腫に、新薬が続々と登場している。再発しても長期生存はもはや夢ではなくなってきている。
そんな悪性リンパ腫とどう向き合っていけばよいのか。
胃腸、肝臓、脳、皮膚……体中のどこにでもできる
リンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞)は、いわば「人体の警備兵」。骨髄で作られ、リンパ管や血管を通って全身に散らばり、ウイルスや異物を攻撃する。悪性リンパ腫はこのリンパ球が腫瘍化する病気だ。
「悪性リンパ腫の患者さんは白血病の患者さんの約3倍といわれ、血液腫瘍の中では頻度の高い病気です。高齢者に多く、原因は特定できませんが、微増しています」
と、埼玉医科大学国際医療センター造血器腫瘍科教授の新津望さんは説明する。
悪性リンパ腫はホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分類される。日本では、ホジキンリンパ腫は約1割(欧米は約3割)。9割を非ホジキンリンパ腫が占める。さらに、非ホジキンリンパ腫は、リンパ球の中のB細胞が腫瘍化したB細胞リンパ腫と、T細胞・NK細胞が腫瘍化したT/NK細胞リンパ腫に分けられる。
ホジキンリンパ腫は主に、首やわきの下や胸の縦隔などにあるリンパ節から発生する。
一方、非ホジキンリンパ腫は、リンパ節から発生する人が半分。残り半分は、
「胃腸、肝臓、すい臓、乳腺、卵巣、精巣、脳、皮膚……。どこにでもできます。できた場所によって症状もまちまち。胃にできれば胃潰瘍のような症状が出るし、脳にできて麻痺や意識障害が出ることも。ほかの病気と間違われて診断が遅れたり、治療が適切でないこともあるので、セカンドオピニオンを受け、正しい診断、治療が受けられるよう気をつけたいところです」
実際、「どこにでもできて多様な」非ホジキンリンパ腫は、70種類以上に分類されている。組織型が違えば、治療法も違う。たとえば、胃にできるマルトリンパ腫は、かつて胃がんと間違えられ、手術されることもあった。が、最近はピロリ菌を除菌すれば治ってしまうとわかり、専門医なら手術や抗がん剤治療ははじめには行わない。
つまり、悪性リンパ腫は正しい診断を受けることが重要かつ治療の第1歩なのだ。
進行は年単位~週単位迅速で正しい診断を
では、正しい診断を受けるには、どんな検査が必要なのか。悪性リンパ腫の検査はリンパ節あるいは組織を生検する。できるだけ大きな(最低2㎝以上)リンパ節が必要で、針で刺す細胞診では診断はつかない。①病理組織診断、②細胞表面マーカー検査(*)、③染色体検査、④遺伝子解析などを行う。すべての検査が保険で受けられる。
検査・診断はできるだけ早く行うことが望ましい。「病気により、進行のスピードと広がり方が全然違うから」だ。
悪性リンパ腫は悪性度で低悪性度群、中悪性度群、高悪性度群に分類されている。年単位で進行する低悪性度群は数年間、無治療でも命に別条ないこともあるが、週単位で進行する高悪性度群だと治療が1週間延びたら手遅れということがある。だから、診断を早く行うことが重要なのだ。月単位で進行するのは中悪性度群で、その代表はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫。日本人に1番多い。
*細胞表面マーカー検査=細胞の表面に出ている抗原(たんぱく質などの物質からなる細胞の性格を示す目印)を解析して調べる検査
病気と患者さんの状態をみて治療方針を決定
診断後は、できている場所(リンパ節にできているのか、リンパ節以外の場所にできているか)、病期(病気の進行具合)などの「病気の状態」と、年齢、全身状態など「患者さんの状態」を検討して、治療方針を決める。非ホジキンリンパ腫はB細胞リンパ腫かT/NK細胞リンパ腫か、またできた場所によって、治療は大きく違ってくる。
病期は、1~2期がリンパ腫が最初にできた場所と横隔膜の上か下にとどまっている限局期、3~4期が遠くの臓器に浸潤している進行期。こうした「病気の状態」に、年齢や全身状態などを考慮して、治療方針が決められる。
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