課題は再発した場合の治療。ジェムザールなど、新たな薬剤も登場
あきらめない! 飛躍的進歩を遂げる悪性リンパ腫の最新治療
リツキサンの登場で、悪性リンパ腫の治療は著しい向上をみせた。最近、新らたに有効な薬の登場もあり、悪性リンパ腫の治療はどう変わるのか。
さまざまな臓器に発生し症状も異なる
悪性リンパ腫の治療は、ここ10年ほどの間に目ざましく進歩してきた。東海大学医学部血液・腫瘍内科講師の大間知謙さんは、「今後、10年の間にも悪性リンパ腫の治療は相当変わるのではないでしょうか」と話す。
悪性リンパ腫は、免疫を担当する白血球の一種であるリンパ球ががん化する病気。発症率は、10万人に15人程度だが、最近ジワジワと増加している。
大間知さんは「組織型により異なりますが、一般的には60代が発症のピークで高齢者に多く、女性より男性にやや多い傾向があります」と話す。人口の高齢化も、悪性リンパ腫増加の一因のようだ。
悪性リンパ腫は、とにかく多種多様ながんが含まれる。そのため症状も多彩。リンパ節以外にも、消化器や皮膚などさまざまな臓器に発生し、部位によって症状も異なる。
しかし、「一番多い症状は、リンパ節の腫れです」と大間知さんは言う。首や腋の下、足の付け根などリンパ節が集まっている部位でリンパ節の腫れに気づくことが多い(図1)。
普通、リンパ節が腫れると痛みを伴うが、悪性リンパ腫の場合は「痛みがない」のが特徴。また、他のがんがリンパ節に転移すると、リンパ節が石のように固く腫れ、周囲の組織と癒着してガッチリと動かなくなるが、リンパ腫の場合は「消しゴムぐらいの固さで、触ると動く」のだそうだ。
その他症状としては、むくみが出たり、38度C以上の原因不明の熱が続く、半年以内に10%を越える体重減少がある、シーツを替えなくてはならないほど寝汗をかくなどの全身症状が見られる。こんな症状があれば、1度は病院を受診したい。
80種類以上ある悪性リンパ腫
80種類以上ある悪性リンパ腫だが、一般的には、ホジキンリンパ腫とそれ以外の非ホジキンリンパ腫に分けられる。
日本人に圧倒的に多いのは、非ホジキンリンパ腫で、これもがん化したリンパ球がB細胞なのか、T細胞なのかで治療方針が違ってくる。日本では非ホジキンリンパ腫の中でもB細胞ががん化したタイプが75%以上を占める。その中でも一番多いのが、「びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫」だ。これに次ぐのが、同じくB細胞ががん化したろ胞性リンパ腫(図2)。
さらに、悪性度によって低、中、高と3種類に分けられており、たとえば、びまん性の悪性リンパ腫は中悪性度に属し、治療しないで放置すれば数週間から数カ月で命に関わってくる。
ただし、このタイプの悪性リンパ腫は、化学療法や放射線療法に対する反応がいいのが特徴。つまり、治療が効きやすい。大間知さんは「治療効果があがれば、完治も望めます」と話す。
予後がよいわけではない低悪性度リンパ腫
一方、低悪性度のリンパ腫は進行が極めて遅く、年単位で進んでいく。
低悪性度という言葉から、タチがいいように聞こえるが、「症状も乏しく、放っておく人もいます。そのため、受診したときにはすでに進行期に入っている人も少なくありません」と大間知さん。リンパ節の腫れも大きくなったり、消えたりするので重大な病気とは気づきにくいという。
悪性リンパ腫は化学療法が良く効くので、寛解*に入る人は多いが、低悪性度は再発も多いのが特徴。そのため完治することは少ないという。
こうした特徴を示すのが、スタンフォード大学で治療した患者の生存曲線を示したグラフだ(図3)。低悪性度の患者は、すぐに亡くなってしまうことはないが、徐々に亡くなっていく人が増えていく。一方、中悪性度の患者は、診断直後の死亡率が高いが、5年もたつと亡くなる人は少なくなる。治る人は完治していくからだ。その結果、診断後15年ぐらいで生存曲線が交差する。
つまり、低悪性度のリンパ腫は進行が遅く治療効果もあるが、再発率が高く、残念ながら完治する割合は少ないのだ。
*寛解=画像上腫瘍が消失した状態
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