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抗腫瘍効果が大きく、副作用が少ないレブラミドにより治療成績が大きく向上
患者さんに朗報!新薬の登場で治療の手だてが増えた多発性骨髄腫治療

監修:末永孝生 亀田総合病院血液・腫瘍内科部長
取材・文:黒木 要
発行:2011年5月
更新:2014年1月

  

末永孝生さん
亀田総合病院
血液・腫瘍内科部長の
末永孝生さん

新薬の登場で、がんの進行を以前よりずっと長く抑えられるようになってきた多発性骨髄腫。
そこへさらに2010年にレブラミドという新しい薬剤が加わり、多発性骨髄腫の治療は大きく変わった。

免疫を担う血液細胞ががん化する病気

[多発性骨髄腫で起こりやすい臓器障害]

高カルシウム血症 血中カルシウム値> 11㎎/㎗
腎不全 クレアチン値>2㎎/㎗
貧 血 ヘモグロビン値<12g/㎗
溶骨性骨病変 ────

 
[MGUS、無症候性骨髄腫(くすぶり型骨髄腫)、症候性骨髄腫の識別]

種 類 MGUS 無症候性骨髄腫
(くすぶり型骨髄腫)
症候性骨髄腫
骨髄での形質細胞の割合 <10%
かつ
≧10%
かつ/または
≧10%
かつ/または
血清M蛋白 <3.0g/㎗ ≧3.0g/㎗ ≧3.0g/㎗
臨床症状 なし なし あり

「骨髄には、白血球や赤血球などの様々な血液細胞をつくる造血幹細胞が数多く存在しています。これが分化を繰り返していろんな血液細胞になるのですが、その過程でがん化することがあります。血液細胞のうち、体内に侵入してきた病原菌などの異物を排除する抗体をつくるのが形質細胞で、これががん化するのが多発性骨髄腫です」

こう説明するのは、亀田総合病院血液・腫瘍内科部長の末永孝生さんです。

多発性骨髄腫が疑われる場合、まず検査を行います。

その結果、病気の存在がわかると、病気の進行やどんなタイプかを確認し、治療法選択の参考にします。

とはいえ、病気の診断が下ったら、全ての人がすぐに治療を開始するわけではありません。「病気の広がりや進行度を表す病型があって、①MGUS、②くすぶり型骨髄腫、③症候性骨髄腫の3つが代表的です。①と②は経過を見守っていき、③になったら治療を開始します」

①のMGUSの段階ではMタンパクや骨髄腫細胞が少なく、症状はまったくありません。病気の前駆状態といえ、治療は不 要です。

②のくすぶり型骨髄腫の段階では、骨髄腫細胞がやや増え、Mタンパクが多くなった状態ですが、この場合でも症状はほとんどなく治療は行いません。しかし③の症候性骨髄腫になると、症状が出るようになり、治療が必要になります。

化学療法を中心とした多発性骨髄腫の治療

治療は、抗がん剤を主とした薬物療法が中心となります。

「初期治療でできるだけ骨髄腫細胞を少なくする、あるいは難しいけれど、完全になくすことが当面の目標です。初期治療がうまくいけば、たとえ再発しても、それまでの期間を延ばせることがわかってきました」

初期治療としては、年齢や重篤な合併症の有無により、①大量化学療法+自家末梢血幹細胞移植、②化学療法のみ行うの2つに大きく分かれます。

大量化学療法+自家末梢血幹細胞移植

[多発性骨髄腫治療のアルゴリズム]
図:多発性骨髄腫治療のアルゴリズム

通常は65歳以下で、臓器障害がなく、心肺機能が正常であれば、自己末梢血幹細胞移植の適応があるとされています。

この治療法は、事前にさまざまな化学療法でできるだけ骨髄腫細胞を減少させます。その後、自分自身の末梢血液に含まれるごくわずかな末梢血幹細胞を採取し、凍結保存しておきます。その後に大量の抗がん剤で、それまでの化学療法でも残っていた骨髄腫細胞を根絶し、凍結保存しておいた末梢血幹細胞を戻す治療法です。この時、幹細胞を戻す骨髄に腫瘍細胞が残っていては何にもなりませんから、その前に大量の抗がん剤によって、骨髄腫細胞を根絶させるのです。この時の、移植前に行う大量化学療法としては、アルケラン()大量療法(アルケラン 200ミリグラム/平方メートル)が行われます。

アルケラン=一般名メルファラン

化学療法

高齢者(一般的には65歳以上)や骨髄腫細胞による肝臓や腎臓などの重い臓器障害がある場合などは、自己末梢血幹細胞移植の適応はありません。

「その場合、標準量の化学療法により、骨髄腫細胞を出来るだけ減少させて、病気の進行を抑えます」

この場合アルケランとプレドニン()を組み合わせた治療(MP療法)などが行われます。

プレドニン=一般名プレドニゾロン

従来の化学療法の限界

ただし、こうした初期治療を行っても効果は十分とはいえませんでした。これらの治療が効かない難治性は少なくなく、仮に効果はあっても、すぐに再発したりすることが大半でした。

「MP療法は造血幹細胞の殺傷能力も強く、その後に自己末梢血幹細胞移植を行おうと思っても、できなくなるというデメリットがあります。また、移植する前に行う化学療法も、骨髄腫細胞を十分に叩き切ることができませんでした」

そうしたなか、サレド()やベルケイド()、レブラミド()といった薬剤が登場し、従来の治療成績を大きく上回るようになってきた のです。

サレド=一般名サリドマイド
ベルケイド=一般名ボルテゾミブ
レブラミド=一般名レナリドミド


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