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乳がんの「アバスチン+パクリタキセル療法」で起こる副作用と対策&セルフケア
副作用をうまくコントロール!再発乳がん治療を長く続けるコツ

監修:渡辺 亨 浜松オンコロジーセンター 院長                             
宮本康敬 浜松オンコロジーセンター薬剤師(がん専門薬剤師)
角谷京子 浜松オンコロジーセンター看護師                        
取材:がんサポート編集部       撮影:向井 渉                              
発行:2012年7月
更新:2019年8月

  

渡辺亨さん 腫瘍内科医の第一人者である
渡辺亨さん

昨年9月、進行・再発乳がん治療に加わったアバスチン+パクリタキセル療法。
乳がんの進行を長く抑えることが明らかになった一方、今後重要になってくるのが副作用への対策だ。
治療を長く継続するためにもいかに副作用を抑えるか──チーム医療を実践している浜松オンコロジーセンターに話を伺った。

外来での投与が可能

昨年から、乳がんの治療に アバスチン()+ パクリタキセル()(一般名)療法が新たに加わった。この治療について、浜松オンコロジーセンター院長の渡辺亨さんは、こう話す。

[写真2]
写真2

「アバスチンとパクリタキセルの併用療法は、進行・再発乳がんに使われる治療です。パクリタキセルを単独で使うのに比べ、アバスチンを併用したほうが、奏効率が高くなり、がんの進行を抑える期間も長くなることが明らかになりました。対象となるのは、再発して初めてパクリタキセルを使う患者さんです」

アバスチンは、血管新生阻害剤というタイプの分子標的薬である。がんは増殖するのに多くの栄養と酸素を必要とするため、近くの血管から新たな血管を伸ばし、たくさんの血液ががんに流れ込むことで、栄養と酸素を補充する。アバスチンは、この血管ができるのを阻害することで、がんの増殖を抑えるのである。

投与スケジュールは、アバスチンが2週間毎で、パクリタキセルが1週間毎。ただしパクリタキセルは3週続けたら4週目は休みとなる(図1、写真2)。

「外来で行える治療です。ただし、念のため初回投与だけ入院で行う施設もあります。しかし必要以上に心配する必要はありません」(渡辺さん)

外来で行えるので、仕事を続けながらこの治療を受ける患者さんも多いという。

[図1 ベバシズマブ+パクリタキセル療法の投与スケジュール]
図1 ベバシズマブ+パクリタキセル療法の投与スケジュール

アバスチン=一般名ベバシズマブ
パクリタキセル=商品名タキソールなど

3つの治療目標のうち2つを実現させる

[図3]
図3

ベバシズマブ+パクリタキセル療法の様子。
浜松オンコロジーセンターでは、患者さんには全員、中心静脈ポートと呼ばれる医療機器を設置し、抗がん剤などの点滴投与を行っている

アバスチン+パクリタキセル療法には、どのような効果が期待できるのだろうか。それを説明するためには、進行・再発乳がんの治療目標を理解する必要がある。

「進行・再発乳がんの治療目標は、症状緩和(Palliate Symptoms)、症状発現の先送り(Prevent Symptoms)、延命(Prolong Survival)の3つで、3つのPと呼ばれています(図3)。アバスチンとパクリタキセルの併用療法で達成できるのは、症状緩和と症状発現の先送り。3つのPのうち2つを目指せることがわかっています」(渡辺さん)

こうした効果は臨床試験で確認されている。海外で行われた〈パクリタキセル単独療法〉と〈アバスチン+パクリタキセル療法〉の比較試験では、パクリタキセル単独療法の奏効率が22.2%、アバスチン+パクリタキセル療法の奏効率は48.9%だった。奏効率とは、がんが小さくなり、それが1カ月以上続いた患者さんの割合である。

[図4 ベバシズマブ+パクリタキセル療法の効果]
図4 ベバシズマブ+パクリタキセル療法の効果

出典:N Engl J Med Volume 357(26):2666-2676 December 27, 2007

また、がんの進行を抑える期間を意味する無増悪生存期間の中央値は、パクリタキセル単独療法が5.9カ月、アバスチン+パクリタキセル療法が11.8カ月だった(図4)。

「腫瘍縮小作用が強ければ、症状を緩和する効果は大きくなり、症状発現の先送りも期待できます。アバスチンとパクリタキセルの併用療法では、3つのPのうち、2つを達成することを目指します」(渡辺さん)

副作用の高血圧に対して腎臓を守る降圧薬を使用

こうした2つのPを達成するためにも、いかに治療を継続するかが重要になってくる。そのために大切になってくるのが、副作用対策だ(写真5)。アバスチンとパクリタキセルの併用療法では、どのような副作用が現れるのだろうか。まず多く現れるのが、アバスチンの副作用である高血圧だ。

[写真5]

右から渡辺亨さん、がん専門薬剤師の宮本康敬さん、看護師の角谷京子さん果 浜松オンコロジーセンターで配布されている資料
(左)浜松オンコロジーセンターでは、副作用に対してチームで対応している。右から渡辺亨さん、がん専門薬剤師の宮本康敬さん、看護師の角谷京子さん。(右)浜松オンコロジーセンターで配布されている資料。副作用についても詳しく載っている

「ほとんどの患者さんで、じわじわと血圧が高くなっていきます。そこで、アバスチンの治療を開始する前から、朝夕の血圧を自宅で測り、それを血圧手帳に記入します。こうすることで、血圧の変化を的確に把握することができます」(渡辺さん)(写真6)

[写真6]

ベバシズマブの副作用として高血圧が現れることがある 治療を開始する前から、朝夕の血圧を測り、血圧手帳を使って血圧の管理をすることが大切
ベバシズマブの副作用として高血圧が現れることがある。治療を開始する前から、朝夕の血圧を測り、血圧手帳を使って血圧の管理をすることが大切

家庭血圧は、収縮期血圧135㎜Hg、拡張期血圧85㎜Hgが基準値で、これを超えると高血圧と診断される。

「通常、高血圧は動脈硬化や脳卒中の原因として問題視されますが、それは高血圧が5年も10年も続く場合です。アバスチンで問題なのは、高血圧で腎臓が障害されることです」(渡辺さん)

アバスチンの副作用として、腎臓に影響が現れ、タンパク尿が出ることがあるが、これには注意が必要だ。浜松オンコロジーセンター薬剤師の宮本康敬さんは、こう話す。

「高血圧を放置して、タンパク尿が出たり、腎機能が低下したりすると、その後の薬物療法が制限を受ける可能性があります。腎臓から排出されるような抗がん剤や支持療法が行いづらくなる可能性があるのです。そうした事態を避けるためにも、高血圧に対する適切な治療が必要です」(宮本さん)

高血圧の治療には降圧薬が使われる。よく使われるのは、ARB(アンジオテンシン2受容体拮抗薬)と呼ばれるタイプの薬剤や、カルシウム拮抗薬といったタイプの薬剤。とくにARBには腎臓の保護作用があるので、タンパク尿を伴う高血圧には適している。なお、添付文書ではパクリタキセルとカルシウム拮抗薬の相互作用に注意喚起されているが、臨床上は問題になることはほとんどなく、必要以上の注意は不要ということだ。


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