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整形外科との協力で関節痛などの副作用を緩和している
副作用をコントロールして乳がん術後ホルモン療法を乗り切る
横浜市立大学付属
総合医療センター
乳腺・甲状腺外科部長の
石川孝さん
はやし整形外科院長の
林毅さん
乳がんのホルモン療法でアロマターゼ阻害剤の治療を受けていると、関節の痛みやこわばり、骨粗鬆症などの副作用が現れ、日常生活に支障が出ることがある。そうした場合、治療を中止せざるを得なくなる場合があるが、こうした副作用を他の診療科との協力によって見事にコントロールして乗り切っているケースがある。その実例を紹介しよう。
乳がんの術後治療で微小転移をたたく
乳がんの手術後には、再発を防ぐために術後治療が行われる。なぜなら、手術で患部のがんをきれいに取り除くことができても、画像検査などでは見つからないほどの微小転移が、全身のどこかに起きているかもしれないからだ。これを見逃して放置してしまうと、微小転移が徐々に増殖していき、いずれ画像検査で見つかるような大きさになる。このように、手術した時点ですでに起きている小さな転移が、再発につながるのである。そこで、微小転移の段階で治療しておくために、術後治療が行われるわけだ。
手術で切除したがんの病理検査の結果、ホルモン感受性が陽性であることがわかったら、術後治療としてホルモン療法が行われる。乳がんには、エストロゲン(女性ホルモン)を利用して増殖するタイプと、エストロゲンとは無関係に増殖するタイプがある。ホルモン感受性が陽性ということは、エストロゲンを利用するタイプの乳がんであるということ。そこで、エストロゲンが作用するのを防ぐ薬や、エストロゲンが作られるのを防ぐ薬を使ったホルモン療法が行われている。
術後ホルモン療法で、まず使われるようになった薬はタモキシフェン(商品名ノルバデックスなど)だった。これは抗エストロゲン剤に分類される薬で、エストロゲンが乳がん細胞に作用するのを防ぐ働きをする。体内でエストロゲンが分泌されても、その影響で乳がんの増殖が進んだりしないようにするのである。術後、タモキシフェンを5年間投与すると、術後治療を行わなかった場合に比べ、再発率が低下することが確認されている。
閉経後のホルモン療法ならアロマターゼ阻害剤を使う
- 整形外科的には滑膜、関節包が炎症などにより受容した関節の疼痛。関節に限定した認識。
- 関節痛(整形外科的な狭義の関節痛、膝関節痛など)
- しびれ
- 頸部痛、背部痛、腰痛
- 腱鞘炎の痛み(ばね指など)
- 手指のこわばり
- 筋痛
- 関節炎(リウマチ様)
その後、閉経後の患者さんには、アロマターゼ阻害剤が使われるようになってきた。閉経すると、卵巣からはエストロゲンが分泌されなくなるが、体内でエストロゲンが作られなくなるわけではない。副腎から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)を材料にして、アロマターゼという酵素の働きにより、エストロゲンが作られているのだ。アロマターゼ阻害剤は、この酵素が働かないようにすることで、エストロゲンが作られるのを防ぐ働きをしている。
閉経後の患者さんにおいては、タモキシフェンよりも、アロマターゼ阻害剤による術後治療を行ったほうが、再発率が低下することが臨床試験で明らかになっている。アロマターゼ阻害剤には、フェマーラ(一般名レトロゾール)、アリミデックス(一般名アナストロゾール)、アロマシン(一般名エキセメスタン)という3種類の薬があるが、たとえばフェマーラによる術後治療では、タモキシフェンを使った場合に比べ、再発リスクが22パーセント低下することが明らかになった。
横浜市立大学付属総合医療センターの石川孝さんによれば、アロマターゼ阻害剤は、閉経後ホルモン受容体陽性乳がんの治療薬として広く使われているという。
「アロマターゼ阻害剤は閉経後の患者さんのホルモン療法で効果を発揮していますが、服用する際には、副作用に気をつける必要があります。1つは骨がもろくなりやすいことで、骨粗鬆症を招いてしまうことがあります。もう1つは関節の痛みやこわばりといった症状が現れること。これはアロマターゼ阻害剤を使った多くの患者さんが訴える症状です。術後治療では、5年あるいは10年という長期間にわたって薬を飲み続けるので、患者さんにとっては大きな問題になってしまいます」
再発を防ぐためには術後治療を継続することが大切だ。そのためには、副作用をうまくコントロールしていく必要があるようだ。
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