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手術と効果は同等。副作用に対する考え方がポイントに
前立腺がん治療に新たな選択肢 ホルモン療法を併用したIMRT治療とは?

監修:中田渡 大阪府立成人病センター泌尿器科診療主任
取材・文:増山育子
発行:2012年5月
更新:2013年4月

  

中田渡さん
ホルモン療法+IMRTの
長期成績が待たれると話す、
中田渡さん

前立腺がんの治療にまた新たな選択肢が増えそうだ。それが、ホルモン療法と放射線治療の1つであるIMRTを用いた治療法だ。
では一体、どういった治療法なのだろう。

ホルモン療法で生き残ったがんを放射線でたたく

[図1 局所進行前立腺がんに対するホルモン療法+放射線治療の効果]
図1 局所進行前立腺がんに対するホルモン療法+放射線治療の効果

出典:The Lancet,vol.378 No.9809 p2104-2111より一部改変

前立腺がんの治療の要となるホルモン療法に放射線治療を上乗せすることで、再発リスクの軽減や生存率が改善されることが欧米で行われた臨床試験の結果、明らかになっている(図1)。

大阪府立成人病センター泌尿器科診療主任の中田渡さんは「ホルモン療法は治療効果がとても高いのですが、それだけでがん細胞を死滅させることはできません。また、放射線治療でもがん細胞をゼロにするのは難しい。それで当院では中リスク以上ではホルモン療法にIMRT(強度変調放射線治療)を組み合わせています」と話す。

大阪府立成人病センターでは患者さんが放射線治療をすると決めたら、まず、半年から1年ほどホルモン療法を行う。それからIMRTを実施し、高リスクでは2年ほどホルモン療法を追加する。これが「ホルモン療法併用IMRT」と呼ばれる治療法だ。

前立腺がん治療の柱はホルモン療法

前立腺がんは男性ホルモンの影響で増えるので、男性ホルモンの分泌や働きを抑えてがん細胞の増殖を止めようとするのがホルモン療法である。

ホルモン療法で使う薬剤は、LH-RHアナログ製剤と抗男性ホルモン剤。脳に働きかけて男性ホルモンの分泌を促すホルモンの放出を妨げ、精巣から男性ホルモンが出ないようにするのがLH-RHアナログ製剤。一方、抗男性ホモン剤は副腎で作られる男性ホルモンの分泌を抑える。

[図2 ホルモン療法+IMRTの流れ]
図2 ホルモン療法+IMRTの流れ

「当院では、まずはLH-RHアナログの注射剤だけにして、放射線治療を始めるまでの6カ月間でPSAの下がり方が鈍ければ抗男性ホルモン剤を追加します」

リスクが高い前立腺がんでは、ホルモン療法の期間は2~3年とされているが、2年と3年とで治療成績を比較したデータはないという。

「それで放射線治療開始前の6~12カ月、放射線治療中の2カ月、放射線治療後約2年の合計で2年半~3年としています」(図2)

IMRTでよりがんだけを標的にした治療へ

[図3 放射線治療の進歩と適応拡大]
図3 放射線治療の進歩と適応拡大
 
[画像4 IMRT照射]
画像4 IMRT照射

IMRTによって、放射線の線量の強弱が可能になった

かつては前立腺にあるがんを殺せるだけの放射線を当てると、隣接する直腸や膀胱にも当たって出血するなど、重い合併症が起こっていた。かといって、周辺臓器が耐えられる線量まで落とすとがんに対する効果が不十分。そんなジレンマを抱えた放射線治療は、90年代半ばの3次元原体照射の登場から、定位放射線、 IMRT、粒子線と飛躍的に進歩してきた(図3)。

前立腺の放射線治療について中田さんは「合併症や副作用も非常によくコントロールされ、保険適応範囲内ではI MRTが最良だと思います」と話す。

多方向からX線を照射するのは3次元原体照射と同じだが、IMRTの特徴は放射線に強弱がつけられることで、ゆがんだ形でもコンピュータが読み取り、がんだけに当たるように各方向からの放射線量を微調整できる点だ。周辺の正常な細胞を避けながら多くの線量を前立腺に集中させることが可能で、「IMRTが前立腺がんで保険適応になって以来、当院では外照射治療としてそれ以外の方法は勧めていません」(中田さん)というくらい評価が高いのだ(画像4、5)

[画像5 IMRT照射の様子]
画像5 IMRT照射の様子


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