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小社主催前立腺がん市民公開講座パネルディスカッション
前立腺がんの治療は、打つ手が多く、あきらめないことが肝心!

総合司会:窪田吉信 横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学教授
パネリスト:上村博司 横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学准教授
佐藤威文 北里大学医学部泌尿器科講師
豊田博慈 前立腺がん患者
藤枝紫郎 前立腺がん患者
発行:2009年2月
更新:2013年4月

  

前立腺がんは早期発見、早期治療が基本だが、運悪く発見、治療が遅れても、打つ手はいろいろある。前立腺がんの患者さんは、いかに前立腺がんと共に生きていくべきか。2008年11月22日(土)前立腺がん市民公開講座が日石横浜ホールで開催された。1部の横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学准教授の上村博司さん、北里大学医学部泌尿器科学講師の佐藤威文さんの講演に続いて2部のパネルディスカッション「前立腺がんと共に生きていくために」が横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学教授の窪田吉信さんを座長に、上村さん、佐藤さん、前立腺がん患者の豊田博慈さん、藤枝紫郎さんをパネリストに迎え、患者さんや家族の方々からの質問に答える形で進められた。

放射線治療のあとに手術は選択できない

写真:パネルディスカッション
質問がたくさん集まり、活発に意見が交わされたパネルディスカッション

窪田 早期の前立腺がんの治療法をどう選択したらよいかについてのご質問です。

上村 早期がんの根治的治療法としては、手術と放射線治療があります。手術は年齢、合併症、PSA値が関係してきます。転移がなくてもPSA値が高い場合(たとえば50以上)は、手術を避けます。75歳以下で元気な人は、手術が一般的です。放射線治療に関しては、たとえば、PSA値が10以下、グリソンスコアが6以下、がん病巣が小さい人は、密封小線源療法で治せます。PSA値やグリソンスコアがそれより高めの人には、IMRT(強度変調放射線治療)など、それ以外の放射線治療を勧めます。

窪田 早期の前立腺がんの場合、根治性から言えば、手術が第1の選択肢だと思います。しかし、手術と同じ結果が得られるなら、別の方法を希望するという方がおられますし、肺や心臓が悪い、軽い脳梗塞をやったというような人には、手術はためらわれるというのが現実です。そういう場合、放射線は体にやさしい治療法だと思います。
ただ、私が患者さんに申し上げたいのは、根治性を求めて手術により、早期治療をしますが、10~20パーセントの方は再発をする可能性がある、ということです。それに対して2回目、3回目のサルベージ療法(救済療法)をしていかなければなりません。最初に手術を選択した場合は、サルベージとして放射線治療を選択できますが、最初に放射線を選択した場合には、サルベージとして手術を選択することはできません。これは理解しておいていただきたいポイントです。
次に、手術、放射線治療を受ける前に、「まずホルモン療法を受けておいてください」と言われた患者さんがいます。

上村 たとえば小線源療法では埋め込む線源の量は限られていますから、40㏄以上の大きな前立腺の場合、まずホルモン療法でがんを小さくする必要があります。私たちのところでは今、小線源療法を希望する患者さんに1年待ちをしていただいています。その間にがんが進行する可能性のある方には、ホルモン療法をやっていただいています。IMRTの場合も同じです。

手術のメインの目的はがんを根治すること

写真:総合司会の窪田さん
総合司会の窪田さん

窪田 3年間ホルモン療法をやってきた69歳の方ですが、今後、手術か放射線か、どちらがいいでしょう。

佐藤 ホルモン療法も1つの柱ですが、「とりあえずホルモン療法で」というのは、あまり好ましいことではないと思います。放射線治療の前や後にホルモン療法を行う有効性については、すでに欧米で確認されていますが、ホルモン療法をどれだけの期間行って、その後どのような根治療法を行うのか、目的を明確にして、治療開始時から最初に決めておくべきだと思います。

窪田 早期がんについては初期治療がもっとも大事です。その場合、基本的には手術、放射線治療が主体ですが、その前後にホルモン療法を行うことについてはエビデンス(科学的根拠)があります。ただ漫然とホルモン療法を続けることには疑問がある、というのが佐藤先生のご意見です。
次に、理想的な手術法を教えてくださいという質問です。

上村 医者の立場から言えば、がんをきれいに取り除くことです。患者さんのQOL(生活の質)から言えば、手術に伴って一定頻度で起こるとされている尿失禁、勃起障害にならないよう、尿道括約筋や勃起神経を温存することです。ただ、左右両方にがんがある場合には、どちらか一方の神経を残すことは難しいですから、患者さんに勃起障害が生じやすいことをよく説明しています。

窪田 ひと口に手術と言っても、直接体を切る手術、内視鏡を入れる手術、腹腔鏡を入れる手術といろいろあります。アメリカではロボティックサージャリー(ロボット手術)も行われています。これらの手術法について、どう考えますか。

佐藤 前立腺を取るという点では、基本的に同じです。一般的な開腹の手術ですと、ある程度、出血するリスクがありますが、内視鏡や腹腔鏡は出血が少ないメリットがあります。また、ロボット手術も徐々に導入されるでしょう。ただ、どんな手術法でも、大事なことはがんを取り切るということです。

窪田 手術の目的はがんを根治することですから、そこがメインですね。私も年とともに目が衰えてきましたが、最近の内視鏡は大きく見えますから、昔の機器よりはるかに安全にできます。アメリカ人は日本人ほど手先が器用ではないので、ロボットと最新の光学技術によってロボットサージャリーを開発し、その欠点を解決しました。日本にもやがて導入されるでしょうが、日本は医療技術・医療機器に対するサポートが少ないのが心配です。


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