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新しい治療薬・治療法の効果に期待

メラノーマ(悪性黒色腫)、血管肉腫の治療が大きく変わる

監修●吉野公二 がん・感染症センター都立駒込病院皮膚腫瘍科医長
取材・文●星野美穂
発行:2015年8月
更新:2016年10月

  

「新しい治療の情報を得て、適切な治療を受けて欲しい」と話す
吉野公二さん

皮膚がんには、基底細胞がん、メラノーマ(悪性黒色腫)など数種があるが、それぞれ病気の性格が大きく異なり、治療法も違う。患者数は少なく、これまで新しい治療法の開発が進みにくい状況にあったが、メラノーマについては、昨年(2014年)から新薬が次々に発売され、血管肉腫では、治療法が変わり生存期間を大きく伸長している。激変する皮膚がんの治療を紹介する。

メラノーマに期待の新薬登場

メラノーマとは、いわゆる「ほくろのがん」である。皮膚のメラニン色素を作る色素細胞ががん化したもので、進行が早く悪性度が非常に高いがんだ。欧米人に多いがんだといわれていたが、最近は高齢化の影響もあり、日本人でもメラノーマにかかる人が増えてきている。

メラノーマの基本的な治療は、手術でがんを取ってしまうことである。手術後、所属リンパ節転移が判明した場合、またはリンパ節転移がなくても厚く盛り上がった病変の場合は、インターフェロン(IFN)療法を行う。日本で使われているインターフェロンβに加えて、2015年5月から日本でも、欧米で使われているインターフェロンαの週1回製剤である、ペグイントロンが、メラノーマにも使えるようになった。

一方、内臓に転移している場合は、化学療法が行われる。これまでの30年間、ダカルバジンが使われてきたが、単剤での奏効率は5~20%であり、そのほとんどが部分奏効(PR)であった。

インターフェロンβ=商品名フェロンなど インターフェロンα=商品名ペグイントロン ダカルバジン=一般名ダカルバジン

新しい作用機序の新薬

そんな状況を打破する薬として期待を担い2014年9月に登場したのが、免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボである。日本で開発され、世界に先駆けて発売となった抗PD-1抗体薬である(図1)。

オプジーボは、自分自身の免疫機能を高めて、がんを攻撃する力を強める薬である。

使用に際しては、ダカルバジンを使って効果がなかった場合にのみ使用できるという制約がある。

オプジーボに続いて、2015年2月に発売されたのが、BRAF阻害薬のゼルボラフである。ゼルボラフは、がん細胞だけに出現している特別なシグナルを攻撃する薬。BRAFに変異があるとがん細胞が異常増殖するため、この特別なシグナルを標的としてがんを攻撃する(図2)。

BRAFに変異がある(BRAF陽性)メラノーマに効果があるといわれているが、メラノーマでBRAFに変異があるのは、欧米人では60%程度、日本人では30%程度といわれている。

図1 オプジーボの作用(抗PD-1抗体の働き)
図2 BRAF阻害薬の作用

オプジーボ=一般名ニボルマブ ゼルボラフ=一般名ベムラフェニブ

新薬登場で治療に大きな手応え

内臓に転移のあるメラノーマの治療薬については、このあと、オプジーボと同じ免疫チェックポイント阻害薬のipilimumab(イピリムマブ)や、ゼルボラフと同じBRAF阻害薬のtrametinib(トラメチニブ)とdabrafenib(ダブラフェニブ)も発売を控えている。

こうした状況について、がん・感染症センター都立駒込病院皮膚腫瘍科医長の吉野公二さんは話す。

「昨年9月まではダカルバジンが効かないと、次に打つ手はないという状況でした。今はオプジーボがあり、ゼルボラフがあり、その次の手も控えている状態で、治療状況は激変しています」

治療の手応えも感じているという。

「全員が全員というわけではありませんが、オプジーボは効く人には劇的に効くという実感を得ています」

ipilimumab/イピリムマブ=商品名Yervoy trametinib/トラメチニブ=商品名Mekinist dabrafenib/ダブラフェニブ=商品名Tafinlar

どの薬から使うのがいいか

図3 効果の比較
(ダカルバジン、BRAF阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬)

(①Chapman, P.B. et al: N Engl J Med 364;26,2011.

②Omid H. et al: N Engl J Med 369;2, 2013)

日本での発売を受けて、オプジーボは欧米でも使われ始めており、そのほかの新薬も含め、治療成績が発表され始めている。

ダカルバジンとBRAF阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体薬)の腫瘍縮小効果を比べた試験では、ダカルバジンに比べてBRAF阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬は腫瘍縮小効果が高いという結果が得られている(図3)。

引用している論文が異なるので一概には言えないが、BRAF阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬を比べると、BRAF阻害薬のほうがやや腫瘍縮小効果は高い傾向にある。また、BRAF阻害薬の効果発現は早いが、免疫チェックポイント阻害薬は自身の免疫を使ってがん細胞を攻撃するため、効果発現までに約3カ月を要すると言われている。

しかし、BRAF阻害薬はほぼ1年以内に抵抗性が出てきて効果が低くなると言われている。生存期間については、免疫チェックポイント阻害薬のほうが長く望める症例が出るとの報告もある。

「このような薬剤の特性を考えて治療を組み立てていく必要があります」

全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)のガイドラインでは、3カ月以内に病勢のコントロールが利くような人は、初めにオプジーボを使い、病勢が早く3カ月以内にコントロールが利かない人は、BRAF遺伝子が陽性であれば初めにゼルボラフを使うように推奨されているが、治療方針は日々変わっており、最新の情報を入手することが大切だ。

「日本ではオプジーボの前にダカルバジンを使わなければいけないし、今後に発売を控えている新薬もある。それらの薬をどういう戦略で使って行くかは、これから検討していくことになります」

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