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国際標準に沿った新しいステージ分類に、補助化学療法の推奨が2大ポイント 大きく変わった、新「胃癌治療ガイドライン」のここに注目

監修●山口俊晴 癌研究会有明病院副院長・消化器外科部長
取材・文●柄川昭彦
発行:2010年8月
更新:2019年8月

  
山口俊晴さん
癌研究会有明病院副院長
・消化器外科部長の
山口俊晴さん

一般向けの「胃癌治療ガイドライン」が6年ぶりに改訂される。今回の改訂では、国際標準に合わせて従来のステージ(病期)分類が変更されるとともに、進行胃がんに対する術後化学療法の有効性など、エビデンスに基づいた新しい研究内容も盛り込まれる。改訂のポイントを、ガイドライン作成委員でもある癌研究会有明病院副院長の山口俊晴さんに教えてもらった。

医師用と一般用の2種類を刊行

胃がんの治療ガイドラインが、日本胃癌学会の編集で初めて刊行されたのは、2001年のことだった。この年、医師向けの『胃癌治療ガイドライン』だけでなく、一般向けの『胃がん治療ガイドラインの解説』も刊行されている。現在でこそ、いろいろながんの治療ガイドラインが作られているが、胃がんのガイドラインは、最も早い時期に刊行されたものの1つだ。

癌研究会有明病院副院長の山口俊晴さんは、01年版のガイドラインより作成委員会委員を務めている。

「ガイドラインが作られる前は、たとえば、同じ進行度の胃がんに対して、いろいろな治療が行われているという現状がありました。研究として行われるべき新しい手術が、治療成績が評価されないまま、最も進歩した手術として行われていた例もあったのです。これではまずいということで、日常診療で行われるのにふさわしい治療法を、ガイドラインという形で示すことにしたわけです」

一般向けを作ったのは、どうしてもそれが必要だと考えたからだった。

「治療を行うときには、その治療法について、患者さんやご家族にも理解してもらう必要があります。ガイドラインを医師と患者さんの両方にわかる言葉でまとめるというのは、当たり前のことだと思いますよ」

各種のがん治療ガイドラインの中で、一般向けが刊行されているのは、胃がんや大腸がんなどごく一部である。

患者さんやその家族がガイドラインを購入しようと考えているなら、一般向けの解説書がいいだろう。基本的な説明が丁寧で、誰にでも理解できるように編集されている。

10年夏には第3版が刊行される

胃がんの治療ガイドラインは01年に刊行された後、04年に第2版が出た。新たに発表された研究成果を盛り込み、時代に即した内容に改訂したものだった。それから6年が経過し、10年の夏には第3版が刊行される予定になっている。

山口さんに第2版からどこが変わるのかを教えてもらった。大きな変更ポイントは、2つあるそうだ。

1つは新しいステージ(病期)分類の導入に伴う変更。胃がんのガイドラインは、進行度に応じたステージ分類に従い、ステージごとにどのような治療が推奨されるかを示す形をとっている。そのステージ分類が変更になったことにより、ガイドラインも新しくなったわけだ。

もう1つは、04年の第2版以降、新たにわかった研究成果が加えられた点である。とくに化学療法に関して、大きな変更がある。

国際標準に沿った新しいステージ分類

まず、ステージ分類の変更から説明しよう。

日本における胃がんのステージ分類は、『胃癌取扱い規約』によって定められている。ガイドラインは各種治療法の臨床における具体的な指針を示すもの。これに対して、取り扱い規約は、がんの状態を原発病変、転移、進行度などの面からどう評価するか、治療効果を根治性や薬物の効果からどう評価するかといった基本的なルールが定められている。

「かつて『胃癌取扱い規約』は、日本独自の方法でまとめられていました。日本の胃がん治療は世界で最も進んでいたため、ステージ分類も非常に細やかで、大雑把な国際標準とは、ずれがありました。しかし、そのために、日本で行われた優れた研究が、国際的には通用しないという現実があったのです。そこで、日本の『胃癌取扱い規約』を国際標準に近付ける作業が行われてきました」

胃がんの病期を判定する国際標準としては現在、TNM分類が使われている。腫瘍の規模(T)、周囲リンパ節への転移状況(N)、他の臓器への転移状況(M)という3つの基準から病期を判定する方法である。

『胃癌取扱い規約』は、TNM分類の改訂に合わせて第14版がまとめられ、今年3月に刊行されたという。『胃癌治療ガイドライン』第3版は、この新しい規約のステージ分類に合わせ、治療の指針が示されているのである。

転移リンパ節の個数による分類へ

[胃壁の構造]
図:胃壁の構造

出典:『胃がん治療ガイドラインの解説第2版』日本胃癌学会編(金原出版)より改変

腫瘍の規模(T)に関しては、胃がんの深達度によって分類されている。胃壁は内側から、粘膜(M)、粘膜下層(SM)、筋層(MP)、漿膜下層(SS)、漿膜(S)で構成されている。胃がんの深達度は、がんが胃壁のどの層まで及んでいるかで判定される。

第2版の分類と異なるのは、「漿膜下層まで達したがん」という新たな分類が加わり、それがT3となった点である。そして、かつてのT3(漿膜を破って外に出ているがん)はT4aに、T4(漿膜から外に出て周囲に浸潤しているがん)はT4bになった。

周囲リンパ節への転移状況(N)に関しては、以前はリンパ節転移がない(N0)、胃に接したリンパ節に転移がある(N1)、胃を養う血管に沿ったリンパ節に転移がある(N2)、さらに遠くのリンパ節に転移がある(N3)、と分けられていた。

第3版では、TNM分類に従い、転移リンパ節が0個(N0)、転移リンパ節が1~2個(N1)、転移リンパ節が3~6個(N2)、転移リンパ節が7個以上(N3)の4分類となっている。

「日本で行ってきた分類は解剖学的N分類といいますが、これはがんの進行度の指標として非常に正確です。ただし、調べるのに手間がかかるので国際標準には成り得ません。そこで、転移個数による分類を採用したわけです。実際に、この方法でもがんの進行度はほぼ正しく把握できるし、どちらの分類を使っても予後は変わらないこともわかりました」

もう1つの他の臓器への転移状況(M)に関しては、遠くの臓器への転移がない(M0)と転移がある(M1)に分けられる。これは従来と同じだ。

以上のT分類、N分類、M分類によって、1期(1A、1B)、2期(2A、2B)、3期(3A、3B、3C)、4期というステージが決められている。2期がAとBに分かれたのと、3Cが新たにできたのが、従来のステージ分類からの変更点である。

[第3版の胃がんの進行度別治療法(案)]

  N0
(転移リンパ節なし)
N1
(転移リンパ節1~2個)
N2
(転移リンパ節3~6個)
N3
(転移リンパ節7個以上)
T1a(M)
胃の粘膜に限局している
1A
分化型で2センチ以下(潰瘍なし)なら内視鏡で粘膜切除、それ以外は縮小した胃切除術(リンパ節郭清一部省略、神経、胃の出口、大網など残す)
1B
普通の胃切除術
2A
普通の胃切除術
2B
普通の胃切除術
T1b(SM)
胃の粘膜下層に達している
1A
分化型で1.5センチ以下なら縮小した胃切除術(リンパ節郭清一部省略、神経、胃の出口、大網など残す)、それ以外は少し縮小した胃切除術
T2(MP)
胃の筋層に達している
1B
普通の胃切除術
2A
普通の胃切除術+補助化学療法
2B
普通の胃切除術+補助化学療法
3A
普通の胃切除術+補助化学療法
T3(SS)
胃の漿膜下層までに達している
2A
普通の胃切除術
2B
普通の胃切除術+補助化学療法
3A
普通の胃切除術+補助化学療法
3B
普通の胃切除術+補助化学療法
T4a(SE)
漿膜を超えて胃の表面に出ている
2B
普通の胃切除術+補助化学療法
3A
普通の胃切除術+補助化学療法
3B
普通の胃切除術+補助化学療法
3C
普通の胃切除術+補助化学療法
T4b(SI)
胃の表面に出た上に、
他の臓器にもがんが続いている
3B
拡大手術(胃以外の臓器も切除)+補助化学療法
3B
拡大手術(胃以外の臓器も切除)+補助化学療法
3C
拡大手術(胃以外の臓器も切除)+補助化学療法
3C
拡大手術(胃以外の臓器も切除)+補助化学療法
AnyT, M1
肝、肺、腹膜など遠くに転移している
4
緩和手術(姑息手術:がんによる症状を改善する手術)、化学療法、放射線療法、緩和医療

[第2版の胃がんの進行度別治療法]

  N0
リンパ節転移がない
N1
胃に接したリンパ節に転移がある
N2
胃を養う血管に沿ったリンパ節に転移がある
N3
さらに遠くのリンパ節に転移がある
T1(M)
胃の粘膜に限局している
1A
分化型で2センチ以下(腫瘍なし)なら内視鏡で粘膜切除、それ以外は縮小した胃切除術(リンパ節郭清一部省略、神経、胃の出口、大網など残す)
1B
2センチ以下なら、縮小した胃切除術(リンパ節郭清一部省略、神経、胃の出口、大網など残す)、それ以外は普通の胃切除術
2
普通の胃切除術
4
拡大手術緩和手術(姑息手術:がんによる症状を改善する手術)化学療法放射線療法緩和医療
T1(SM)
胃の粘膜下層に達している
1A
縮小した胃切除術(リンパ節郭清一部省略、神経、胃の出口、大網など残す)
T2
胃の表面にがんが出ていない、筋層あるいは漿膜下層まで
1B
普通の胃切除術
2
普通の胃切除術
3A
普通の胃切除術
T3
漿膜を超えて胃の表面に出ている
2
普通の胃切除術
3A
普通の胃切除術
3B
普通の胃切除術
T4
胃の表面に出た上に、他の臓器にもがんが続いている
3A
拡大手術(胃以外の臓器も切除)
3B
拡大手術(胃以外の臓器も切除)
4
拡大手術緩和手術(姑息手術:がんによる症状を改善する手術)化学療法放射線療法緩和医療
肝、肺、腹膜など
遠くに転移している
4
拡大手術緩和手術(姑息手術:がんによる症状を改善する手術)化学療法放射線療法緩和医療

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