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TS-1+シスプラチン併用療法が進行・再発胃がんの標準治療になる!? 胃がんガイドラインの書き換えを迫る日本発・抗がん剤のパワー

監修●今野宗一 流山中央病院外科医師
取材・文●町口 充
発行:2009年7月
更新:2019年8月

  
今野宗一さん
流山中央病院外科の
今野宗一さん

胃がんは再発・転移すると有効な抗がん剤がないため、治癒は難しいとされてきた。しかし、TS-1が登場し、新たに発表された臨床試験の結果は、胃がん治療ガイドラインの書き換えを迫るものであり、再発胃がん治療を大きく前進させるものとなった。胃がんは、たとえ再発しても諦めなくていい時代になってきたのだ。


治りにくい再発胃がん

胃がんの再発とは内視鏡や手術、抗がん剤などの治療を行ったあとに、再びがんが出現することをいう。がん細胞が、リンパ液や血液の流れに乗ってほかの臓器で増殖するのが転移である。再発の原因は、他臓器への転移が多い。

胃がんの転移形式で一番多いのは、「腹膜播種転移です。ほかにも肝転移やリンパ節転移、その他の臓器への転移があります」と、流山中央病院外科の今野宗一さんはいう。胃がんは、大きくなると胃壁を突き破って、がん細胞が腹腔内にこぼれ落ちる腹膜播種を起こしやすいし、胃を通過した血液は肝臓に流れ込むので、肝転移も起こしやすい。胃の周囲のリンパ節は早期がんでも転移しやすいところであり、放置するとリンパ節からリンパ節へと転移し、体のあちこちに広がってしまう。

「がんが見つかった時点でのステージ(病期)が進んでいればいるほど、腹膜やリンパ節、血管への浸潤も進行しているので、再発の危険性も高く、また再発すると治りにくくなります。再発が起こるのはほとんどが3年以内に多いとされ、ほかのがんに比べても再発率が高いという特徴があります。再発がんでは、手術単独では取り切れないことが多く、全身治療、つまり化学療法が必要となります」

推奨できるレジメンはなかった

胃がんの治療はいくつかあるが、手術療法が一般的で、化学療法は手術に次ぐ治療法である。

胃がんの手術は、胃の3分の2以上(全摘手術を含む)を切除して、周囲のリンパ節までを取り除く(郭清という)手術が基本。胃の周囲のリンパ節は胃に接して存在する第1群リンパ節と、胃に流れ込む血液に沿って存在する第2群リンパ節とがある。進行がんの3a期の場合というのは2群リンパ節にまで転移があるがんで、手術ではこの2群リンパ節までを広く郭清(D2郭清という)する。それでもがんは再発し、半分以上の患者は亡くなってしまう。

また、それより浸潤が小さいステージ1期、2期でも、予防的にD2郭清を行うが、同じように手術しても再発する人としない人がいて、ステージ2期の場合、25パーセントの人は何らかの形で再発し、亡くなる。

「それはなぜか、がんに違いがあるのかどうか、という研究が進んでいますが、実は2群郭清までしたけれども、手術した時点では見えなくてもリンパ節転移はもっと先にまで進んでいる、ということが考えられます。そこで行われてきたのが術後補助化学療法ですが、今までにいろいろな臨床試験が行われたけれども、有効性は20パーセント程度しかないというので、推奨できるレジメン(薬の投与方法)はありませんでした」

つまり、さまざまな薬を試してみたものの、手術後の再発を予防する有効な抗がん剤はいまだに存在しない、というのが胃がん治療の現実である。 さらに、再発した場合は化学療法によってがんを小さくはできるが、完全治癒は困難で、生存期間をどこまで延長できるかが治療の目標となっている。

[切除不能胃がんに用いられる併用療法]

  薬剤名(商品名)
FAM 5-FU、アドリアシン、マイトマイシン
FAMTX 5-FU、アドリアシン、メソトレキセート(高用量)
EAP ベプシド/ラステット、アドリアシン、シスプラチン(一般名)
ELF ベプシド/ラステット、5-FU、ロイコボリン
ECF ファルモルビシン、シスプラチン(一般名)、5-FU(静注)
CF シスプラチン(一般名)、5-FU
IF カンプト/トポテシン、5-FU、ロイコボリン
TC タキソテール、シスプラチン(一般名)
TCF タキソテール、シスプラチン(一般名)、5-FU(静注)
出典:Mayer, ASCO2007(discussion #LBA4513 & #4514)
[切除不能胃がん第3相臨床試験にみる各併用療法の治療成績]

レジメン 奏効率 TTP中央値(月) 生存期間中央値(月) 出典
CF 25% 3.7 8.6 JCO2006
26% 4.2 8.7 ASCO2005
IF 32% 5 9 ASCO2005
ECF 46% 7.4 8.9 JCO1997
42% 7 9.4 JCO2002
TCF 37% 5.6 9.2 JCO2006
※TTP=進行するまでの期間 出典:Mayer, ASCO2007(discussion #LBA4513 & #4514)

 

成果を得た「日本発」の医薬品

最近になって、胃がん治療を進歩させる臨床試験の結果が明らかとなり、胃がんの標準治療が変わろうとしている。

現行の「胃癌治療ガイドライン」は01年に公開され、04年に改訂された。そこでは胃がんに対する化学療法は「国内外の臨床試験成績からも現時点で特定のレジメンを推奨することはできない」としている。

ところが、ガイドラインの変更を迫る試験結果が出てきたのだ。しかも、日本の研究者が、日本で開発された薬を使って、日本人の患者を対象に臨床試験をして得た、“日本発”の研究成果である。

07年のASCO(米国臨床腫瘍学会)で、日本で行われた2つの臨床試験結果が発表された。

1つは、「JCOG9912」という試験(JCOGとは厚生労働省がん研究助成金指定研究班を中心とする日本臨床腫瘍研究グループのこと)で、手術ができない進行・再発胃がんに対して、初回治療(ファーストライン)として従来から使われてきた抗がん剤5-FU(一般名フルオロウラシル)単独治療、カンプト/トポテシン(一般名イリノテカン)+シスプラチン(一般名)併用治療、それに経口剤であるTS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)単独治療の効果を比較した。

TS-1は日本の大鵬薬品工業が開発した経口抗がん剤で5-FUの効果を増強し、副作用は少なく工夫された薬剤である。

結果は、無増悪生存期間(病気の増悪または死因を問わない生存期間)が5-FU単独治療2.9カ月、カンプト/トポテシン+シスプラチン治療4.8カ月、TS-1単独治療4.2カ月で、後者の2つの治療は5-FUと比較して有意に無増悪生存期間が延長した。

全生存期間(中央値)では、5-FU単独治療10.8カ月、カンプト/トポテシン+シスプラチン治療12.3カ月、TS-1単独治療11.4カ月で、TS-1は他の治療法に比べ、優位性は認められなかったが、劣っていないということが証明された。

[JCOG9912試験成績(無増悪生存期間)]

図:JCOG9912試験成績(無増悪生存期間)


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