バリに住む20年来の友人が同じ肺がんで亡くなった巡り合わせを想う
小細胞肺がんを発症して 医療スタッフのすごさを思い知らされました
今村浩介 さん (デザイン会社勤務)
3年前に小細胞肺がんを発症、化学療法を行った後、左肺全摘手術を行うという治療を選択し無事、職場復帰を果たした今村さん。その今村さんにはバリ島に住む20年来の友人がいた。奇しくもその友人も、同じ肺がんに罹りこの世を去っていた……
〝異例〟の治療を選択
小細胞肺がんは、一般に悪性度が高く、進行が早いがんといわれる。だが、がんは100のちがった病気といわれるように、常に同じような経過をたどるとはかぎらない。
3年前に小細胞肺がんを発症し、化学療法を行った後、左肺全摘という〝異例〟の治療を選択し、職場復帰を果たした人がいる。都内のデザイン会社に勤める今村浩介さん(50歳)だ。
47歳のとき 小細胞肺がんを発症
都内のデザイン会社でデザイナーとして活躍。40代で結婚し、まもなく家も購入した。順風満帆であるかに見えた今村さんに、病の影が忍び寄ったのは、2010年12月のことだ。
会社の健康診断を受けたところ、肺のレントゲンの2次検査を受けるように、との通知が来た。だが、たまに咳が出るぐらいで、自覚症状はない。自宅の完成を間近に控えていたこともあって、再検査を受けないまま時が過ぎていった。
だが、2011年2月に入ると、階段の上り下りに息苦しさを感じるようになった。そして、引越しの前日、3・11に東日本大震災が発生。新居に被害はなかったが、それは来るべき試練の序章に過ぎなかった。
健康診断の結果を持参して、都内の大学病院の呼吸器内科を訪れたのは3月下旬のことだ。気管支鏡検査をしたところ、肺に150ccの胸水がたまっていることが判明。水の中からがん細胞が検出され、その日のうちに脳のMRI検査を受けた。異常は見つからなかったが、脳転移を疑う医師の様子から、病状はかなり深刻であることがうかがわれた。
4月1日、今村さんは検査結果を聞きに、1人で病院を訪れた。病名は「小細胞肺がん」。CT検査の結果、左肺に13 × 11cmの大きな腫瘍が1つあることがわかった。
「正直、ショックというのはなかったですね。現実感がないというか……。どこか他人事のような感じでした」
小細胞肺がんの最大のリスク因子である喫煙にしてもほとんどなく、ましてや、アスベストを大量に吸ったこともない。「なぜ自分が」という思いはぬぐえなかった。
化学療法を行うも 病状は一進一退
小細胞肺がんには、限局型と進展型という2つのタイプがある。だが、医師からは病期についての説明はなく、転移の有無についても明言はされなかった。「肺に水がたまっていること自体が転移ともいえるし、がんが肺の内部に留まっているから転移ではないともいえる。そこは判断が分かれるところだ、というのが先生の説明でした。僕の場合、発病してから今に至るまで、腫瘍マーカーの値が異常を示したことは一度もないんです。小細胞肺がんの典型的なパターンに当てはまらないので、いろんな意味で『判断が難しい』という話でした」
4月中旬から、*シスプラチン/*エトポシド(一般名)による化学療法がスタート。治療は5クールまで行われ、腫瘍サイズは当初の6、7割まで縮小した。だが、治療が回を重ねるごとに副作用が強まり、味覚障害や手足のしびれを感じるようになった。
10月に入り、いったん休薬期間を設けることになった。しかし、12月末の検査で腫瘍が再び大きくなっていることが判明。薬を変えて治療を再開することになった。主治医の治療方針に不安があるわけではなかったが、「念のためセカンドオピニオンを聞いてみよう」と思い、今村さんはがん研有明病院を受診。
ここでも「今までの治療で問題ない」といわれ、新たな治療に臨む決意を固めた。翌年1月5日に再入院し、*ハイカムチンによる化学療法がスタートした。
*シスプラチン=商品名ランダ/ブリプラチン *エトポシド=商品名ベプシド/ラステット *ハイカムチン=一般名ノギテカン
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