女性のがんサバイバーに、ヨガを通して「今、ここに生きている」と感じてもらいたい

乳がんになってみてあらためてヨガのよさを確認しました

取材・文●吉田燿子
発行:2014年10月
更新:2015年6月

  

ヤマダリエ さん (ヨガインストラクター)

本名 山田理恵 1963年福岡県生まれ。15年間グラフィックデザイナーとして広告代理店に勤務した後、2002年結婚を機に退職し、フリーランスでデザインに携わる。03年運動不足解消のためヨガに通い始め、07年パワーヨガ、ハタヨガのインストラクターとなる。11年に乳がんを発症。13年より乳がん経験者を対象としたヨガを始め、現在、ヨガセラピー、乳がん経験者のヨガ、パワーヨガ、シニアヨガ講師

古代インド発祥の健康法として知られるヨガ。呼吸法などによって心と体の調和を図ることから「動的瞑想」ともいわれ、リラクゼーションに加えて、集中力や感受性を高める効果もあるという。このヨガを支えに乳がんを克服し、女性がんサバイバーのためのヨガセラピーに取り組んでいる人がいる。ヨガインストラクターのヤマダリエさん(50歳)だ。


下着についた汚れから乳がんが発覚

ヤマダさんがヨガを始めたのは、体型変化や運動不足が気になり始めたアラフォーのころ。パワーヨガなどのインストラクターの資格をとり、ヨガスタジオで指導をするかたわら、ヨガ療法士の養成コースにも通い始めた。そんなヤマダさんが体の変調に気づいたのは、47歳のとき。東日本大震災直後の11年5月のことだ。

入浴のため着替えをしていると、ブラの内側に血の塊のようなものがついているのに気がついた。ヨガの試験が終わるのを待って、5月末に近所の防衛医科大学校病院(埼玉)を受診。マンモグラフィやエコー・乳頭分泌物検査、針生検を行った。

検査結果は「非浸潤がん」。主治医の守屋智之医師は、努めて軽い口調でこういった。「石灰化が広がっているから、乳房は全摘することになる。でも、転移もないようだから、同時再建できると思う。手術したら、それでおしまいだと思うよ」

全摘を宣告されたことはショックだったが、ごく初期のがんで、同時再建も可能といわれたことが、せめてもの救いだった。「『しょうがないよなあ。そんなもんかぁ』と……そのときは、あまり深くは考えられませんでした。何かが欠落していたのかもしれません」

だが、術前のPET検査でリンパ節転移が発覚。ヤマダさんは、事の成り行きに呆然とした。

「最初に受けた針生検では、数カ所に針を刺して細胞を採取するのですが、たまたま針を刺した場所からは、非浸潤がんしか見つからなかったらしいんです。リンパ節に転移が見つかったので、病期は2bに上がってしまいました。それからは、いろいろ悩みましたね」

ホルモン療法と化学療法どちらを選ぶか

リンパ節転移の告知を受けたときの守屋医師の言葉を、ヤマダさんは今でも覚えている。

「傷跡がきれいになるように手術するからね。こちらは、1日でも長く生きられるように、万全を尽くして手術をやるつもりだから、あなたも何か目標を持ちなさい」

「じゃあ、(手術の)1カ月半後にヨガに復帰できますか」

「そういう目標を持つことが、大事だよ」

心のこもった医師の言葉が、ヤマダさんの胸に沁みた。ふと、「自分はいい病院に来たんだな」と思った。「私は、主治医には本当に恵まれたと思います。今の主治医の山崎民生先生も、患者と真剣に向かい合い、一番よい方法をとことん考えてくれるんです。この前も『最近どう?』と訊かれたので『ブリッジのポーズが前のようにできない』と答えたら、『もう傷は開くことないから思い切ってブリッジをやればいい』って言ってもらいました。こんな風に言ってくれる先生はなかなかいないよなぁ、と思いました」

7月14日、左乳房の全摘手術を実施。2個のリンパ節転移が見つかり、腋窩リンパ節を郭清した。術後の治療方針として、化学療法とホルモン療法の2つがあると聞かされたが、遠隔転移の可能性も否定できないため、抗がん薬を勧められた。だが、化学療法を選べば、1年間は、大好きなヨガができなくなる。そう聞いて、目の前が真っ暗になった。(ヨガができない自分なんて、自分じゃない)――ヤマダさんは悶々とした。

なぜ、ヨガに対してそれほどのこだわりがあったのか。ヤマダさんはこう語る。「ヨガには、心を穏やかにしてくれる効果があるんです。ヨガを始めてからは、穏やかな自分が感じられるようになった。ヨガ特有の哲学にも興味を持ち、どんどんのめり込んでいったんです」

退院1ヵ月半後のヨガ復帰を目指して

ヨガを実践すればするほど、波立つ心や荒ぶる心が鎮まり、心身が整っていく。それを実感していただけに、ヨガができない生活など考えられなかった。

抗がん薬をやらなければ再発のリスクが高まることを承知の上で、ヤマダさんはホルモン治療を選択。8月から、注射薬リュープリンの投与(2年間)と、経口薬ノルバデックスの服用が始まった。後者は5年間の予定だったが、昨年(2013年)からは10年間に延長された。

ホルモン治療では女性ホルモンの分泌を止めるので、疑似更年期の状態になる。体重増加やホットフラッシュは経験したものの、うつなどの深刻な更年期症状に悩まされることもなかったのは「ヨガのおかげ」、とヤマダさんはいう。

1カ月半後のヨガ復帰を目標に、退院当日から自宅でリハビリを始め、朝1時間のウォーキングと午後2時間のヨガが日課となった。復帰を急ぐあまり、やりすぎてお腹や足が腫れてきたこともあったが、術後の回復はおおむね順調だった。

「汗を流して身体を動かしたり、呼吸を整えたりすると、心が落ち着くんですね。筋肉を鍛えることが、がんの再発予防につながるという研究報告もあるそうです。私はリンパ節を切除しているのですが、左胸や背中の筋肉を鍛えているせいか、リンパ浮腫の後遺症もない。がんになってみて、あらためてヨガのよさを確認しましたね」

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