わずか1年余りで妻の子宮体がん、自身の前立腺がん、胃がんを経験したフリーTVプロデューサーが辿りついた結論とは
ちゃんと検査して早期に発見すればがんは怖くない
小笠原恒夫 さん (フリーTVプロデューサー)
定年を迎える頃になって、がんを発症する人は多い。東京在住のフリーTVプロデューサー小笠原恒夫さん(66歳)は、定年前後のわずか1年余りで、妻の子宮体がんと自分の前立腺がん、胃がんを立て続けに経験。幸い、どれも早期発見できたため、大事に至ることはなかったが、がん検診の大切さを痛感した。
『年に1回は絶対に胃カメラをのんだほうがいいよ』
「人間ドックで、がんが早期のうちに見つかったのは、つくづくラッキーでした。だから、周りの人には常々、『年に1回は絶対に胃カメラをのんだほうがいいよ』といっているんです」
妻が子宮体がんにかかり 病院選びに奔走
現役時代は、『トゥナイト』『徹子の部屋』『ワイドスクランブル』などの人気番組を次々に手がけてきた小笠原さん。職業柄、生活は不規則になりがちだったが、幸い病気らしい病気をすることもなく、多忙な日々を過ごしていた。
ひと回り年下の妻が、がんであることがわかったのは、2010年11月。小笠原さんが還暦を過ぎた頃のことだ。
当時、山形の実家で母の世話をしていた妻は、ある日わずかな出血があったことが気にかかり地元の大学病院を受診。検査の結果、子宮体がんの疑いがあると告げられた。
予想もしていなかった、妻のがんの疑い。小笠原さんは、伴侶が深刻な病に蝕まれているのではないか、もしがんなら早く対処しなくては取り返しのつかないことになるのではないか、と心中穏やかではなかった。
「焦りましたね、自分自身ががんになったときより、焦ったかもしれない。がんがどういう病気かもよく知らなかったので、余計に恐怖感がありました」
だが、山形の大学病院では検査待ちの人数が多いため、すぐには生検の予約がとれないという。検査を待つ間にも、病状は進行するかもしれない。小笠原さんはネット情報や伝手をたどり、病院選びに奔走した。
知人に銀座のクリニックを紹介してもらい、そこの医師の勧めで築地の国立がん研究センター中央病院を受診。ステージ0の早期がんではあったが、翌11年1月、妻は子宮全摘手術を受けた。
前立腺がんが発覚、小線源療法などを行う
妻の病気は、小笠原さんの健康に対する意識を大きく変えることとなった。同年3月、六本木のクリニックで、毎年恒例の人間ドックを受診。いつもは受けたことのない腫瘍マーカー検査や胃カメラ検査をオプションで追加したところ、異常が見つかった。
「PSAの数値が4.68と高いので、1回ちゃんと前立腺の検査をしたほうがいいですよ。それから、胃腺腫もありますね。これはがん化する可能性がありますから、定期的に検査をしましょう」
まずは前立腺をきちんと検査したほうがいい、と勧められ、4月中旬に国立病院機構 東京医療センターで受診。前立腺生検で10カ所の検体をとったところ、2カ所から陽性反応が出た。
主治医によれば、小笠原さんのがんは前立腺内にとどまっており、浸潤はないものの、「人相の悪いがん」が2、3混じっているという。妻に続いて自分までが、がん宣告を受けるとは――小笠原さんは茫然とした。
検査の結果、ステージⅠの早期がんと判明したが、主治医からは手術を勧められた。
「手術して全部とっちゃいましょう。とっちゃえば再発もないし、スッキリしますよ」
だが、治療法については事前にインターネットで調べていたので、前立腺がんの手術をすると、排尿障害などの後遺症が出ることはわかっていた。紙おむつの生活など真っ平だと思い、慶應大学病院にセカンドオピニオンを求めた。
「そこで医師が私に『小笠原さんのケースでは手術・小線源・重粒子線のどれを選んでも、制がん率に差はありません。小線源の合併症は排尿障害ですが、1年でほぼ改善します。重粒子線は保険適用外診療なので、今のがんの状態であれば、他の治療と比べてあまりメリットはないでしょう』と伝えたのです。
東京医療センターには小線源療法を行っている斉藤史郎医師がいることは知っていたので、迷いなく小線源治療を選択したのです」
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