働き盛り38歳2児のパパが突然、中咽頭がんステージⅣaと宣告されたら がん患者になった私が皆さんに伝えたい2つのこと

取材・文●髙橋良典
撮影●「がんサポート」編集部
発行:2019年2月
更新:2019年7月

  

花木裕介さん ティーペック株式会社 サービス企画部サービス企画室 マネージャー

はなき ゆうすけ 1979年広島県福山市生まれ。2001年中央大学文学部卒業後、文化放送開発センター入社、コーチ・エィ、NTTデータユニバーシティ等を経て2016年から現職。2017年12月中咽頭がんステージⅣa宣告後よりブログ「38歳2児の父、まさかの中咽頭がんステージ4体験記~がんチャレンジャーとしての日々~」を開始、現在も執筆中。著書に『心折れそうな自分を応援する方法~現役子育てパパでも夢を諦めない』(セルバ出版)、『今くすぶってるサラリーマンは出版を目指せ!』(Amazon POD刊)、2019年1月刊行予定の『青臭さのすすめ』(はるかぜ書房)がある

がんと無縁だと考えていた働き盛り、2児のパパでもあるサラリーマンがある日突然、中咽頭がんステージⅣaと宣告されたら仕事は、生活はどうなるのか不安で一杯になる。

そんな思いを打ち消すかのようにがんと宣告された3日後にブログを立ち上げた男は、がん闘病中の日々を克明に綴っている。ブログで「がんチャレンジャー」と名乗り、がんを克服し復職を果たした花木さんに改めて今の思いを訊いた――。

<病歴>
2017年12月 中咽頭がんステージⅣaのがん告知を受ける
標準治療(抗がん薬、放射線)を開始
2018年8月 病巣が画像上消滅

中咽頭がんステージⅣaと告知される

PET/CTの画像:咽頭に1個、頸部リンパ節に2個黒い影が見える

花木さんが最初に頸部の違和感に気づいたのは2017年10月、会社の勉強会に出席していたときのことだった。何気なく頬杖をついた花木さんは首の右側がピンポン玉ぐらいの大きさに腫れていることに気づいた。

「当初は扁桃腺の腫れぐらいにしか考えてなかったので別に気にもしませんでしたが、念のため会社の近くにある耳鼻咽喉科に行ってみることにしました」

そのクリニックで「風邪だろう」ということで、抗生物質を処方してもらい1週間ぐらい飲んだが腫れは引いてくれない。「じゃあ、もう少し出しておきましょうか」、といった医師とのやり取りが1カ月近く続いた。

「私も頸部が腫れているとはいえ、自覚症状といえば声のかすれぐらいしかなかったので、そんなに重大な病いが隠れているとは考えていませんでした。ただ腫れは一向に引かなかったので、『どこか大きい病院で検査を受けてみたいので、紹介状を書いていただけませんか』とお願いしてみたんです。それで三井記念病院を紹介され、そこで触診と細胞診検査を受けました」

1週間後に検査結果を聞きに行くと、喉の腫瘍でクラスⅣだと告げられた。クラスⅣということはその細胞が悪性である可能性が非常に高いということだ。

その告知は花木さんにとって思いもかけないことだった。

そして「最悪のケースを想定すると、ここで検査を続けるよりももっと専門性の高い病院で検査、治療を続けたほうがいいかもしれません」と東大病院を紹介されたのだった。

12月5日、東大病院で「幸いなことに遠隔転移はありませんでしたが喉の外に、頸部リンパ節に2つほど腫瘍があるので中咽頭がんステージⅣaになります。ただきっちり治療すれば治る見込みは高いですよ」と告げられた。

クラスⅣと告げられたときに最悪のケースまでを想定していた花木さんだが、「正直、中咽頭がんステージⅣaと告げられたショックよりも、遠隔転移があることも覚悟していたので、最悪のケースではなかったことに安堵した気持ちのほうが強かったですね」と語った。

告知3日目にブログを立ち上げる

右側の首にピンポン玉くらいの大きさの腫れに気づいた

東大病院で中咽頭がんステージⅣaの告知を受けた花木さんだが、念のため他の病院でもセカンドオピニオンを受ける。2つの病院で受けたが、いずれも東大病院と診断、治療方針は大きくは変わらなかったこともあって実際の治療をどこで受けるべきか迷ったという。

そのうちの1つは、花木さんの自宅から車で15分くらいのところにある。セカンドオピニオンは本来転院目的のためのものではないし、当初はそんな近くの病院は、と若干の抵抗感があった。だがこれからの通院治療のことなどを考慮すると、自宅から近いほうが何かと便利じゃないかという考えに落ち着いた。

東大病院の主治医にその旨を相談したところ、主治医が以前その病院に籍があったこともあり、比較的すんなり新しい病院で治療を受けることを了解してもらった。

ここで注目すべきことは、中咽頭がんステージⅣaと宣告されて3日目にブログを立ち上げたことだ。花木さんは前の会社で社内報の制作などやライターなどをやっていたこともあり、書いて人に伝えることを得意としていた。

「自分ががんになったことで、その体験を人に伝えることが出来たら他の人にとって有益な情報になるんじゃないか、さらに自分ががんを克服出来たりすれば他の人に希望を与えられるんじゃないか、と考えると何だかウキウキしてきたんですね」

ただそのブログを立ち上げるに当たって若干の反対意見があった。

「妻は私が発信したがりなのは知っていましたので反対はしませんでしたが、一部の友人、知人からの『そんなことしているよりも治療に専念すべきだ』等の反対意見はありました。実際、ブログを立ち上げたときにはまだ治療先も治療開始日も決まっていませんでしたから」

しかし、そういう意見があることは自分の覚悟が試されているんだと思い、意を決してブログを立ち上げた。

花木さんの場合、社員向けのメルマガの編集担当をしていたこともあり、それがたまたま休職の前の日に発行されるタイミングだったので、その編集後記を使って自分ががんに罹り休職する旨の原稿を200人余りの社員全員に配信した。

「結果、それがきっかけで私のブログを読んでくれる方も出て来たし、また、その方たちが会社の様子を知らせてくれるようにもなりました」

僕が毎日やっていること

抗がん薬治療は2017年12月18日、タキソール、パラプラチン、アービタックスの3薬点滴投与からスタートした。

「初日の点滴時間は4時間ぐらいの予定でしたが、なんやかんやで病院に9時間近く滞在することになりました」

抗がん薬の副作用はどうだったのか。

「投与を受けた直後は平気なんですが、3日目ぐらいからガクときて立ち上がれなくなり、頭も痛く気持ちも悪くなり、食事も摂れなくなりました」

そんなつらい状況でも12月23日のブログには、「やはり奇跡は当たり前のことをコツコツとやり続けることによってのみ起きるに違いない」と記している。

そして「今の僕が毎日やっていること」としてこんなことを箇条書きにしている。

・ご飯をできるだけ毎食食べる
・妻や親族らに選んでもらった栄養補助剤を欠かさず飲む
・病院から出された薬を飲む
・乾燥しやすい肌を中心に保湿する(来るべき次の副作用、肌荒れに備える)
・食塩水でうがいをする(来るべき次の副作用、口内炎に備える)
・歯をしっかり磨く(来るべき副作用、虫歯に備える)
・疲れたら眠り、免疫力を上げる
・できるだけ笑う(これが最も難しい。元気なときでも僕は笑うのが苦手なのだ)
・入浴などで体を温める
・体温を測り、治療手帳に書き留める
・ネガティブなことや過去の出来事を振り返るのではなく、できるだけポジティブなことや未来に思いを馳せる
・周囲のサポートや応援に感謝の気持ちを持つ
・「一度始めた治療は、最後までやりきる」という気持ちを持ち続ける

「ブログに書いて公開すれば、自分が副作用でつらいことがあってもやらないわけにはいかなくなる。だから他人に伝えるというより自分に言い聞かせるつもりで書いたんだと思います」と花木さんは振り返る。

治療中も規則正しい生活を送ることに努めた

2018年2月13日に前半戦の抗がん薬治療2クール(計8回)は終了したが、副作用の口内炎(口腔粘膜炎)が酷くなり睡眠も不規則になってきた。

2月26日に放射線治療のための入院し、翌27日には胃に栄養を直接送り込むための胃瘻(いろう)を造設する手術を行った。

胃瘻を使って食事中(左)。喉奥の口蓋垂(こうがいすい)は炎症で水を飲むのも苦痛だった

3月6日から後半戦のIMRT(強度変調放射線治療)とシスプラチン(3週間に1度の投与)の併用療法が始まった。

放射線治療は一度の照射時間は10分程度で、最初の頃はまったく何の問題もなかったが、久々に入れる抗がん薬の副作用は、吐き気とだるさが襲ってきてきついものだった。

3月16日に一時退院する。花木さんのがん治療後半戦は平日毎日通院しての放射線治療(計35回/約2カ月)だ。

9時から治療を受けられるよう通院しなくてはならないため、1日のスケジュールをキチンと決め規則正しい生活を送るように努めていたという。

ある日のスケジュールはこうだ。

7時 起床
8時半 出発
9時 治療開始(週2日は診察もあり)
11時 陶板浴や買い物 昼食
17時 次男の保育園迎え
18時 風呂 夕食 団らん
23時 就寝

「会社を休職中だったので、規則正しく生活するスケジュールを決めておかないとだらだらしてしまうと思ったんです。1日も早く復職したかったので、日常があまりにもずれてしまってはいけないと考えていたんだと思います」

タキソール=一般名パクリタキセル パラプラチン=一般名カルボプラチン アービタックス=一般名セツキシマブ シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ

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