直腸がん手術から10年 その後も次々と襲いかかる病いを笑い飛ばして生きる坂田流人生術

取材・文●髙橋良典
撮影●「がんサポート」編集部
発行:2021年6月
更新:2021年6月

  

坂田 勝さん 厨房器具メーカー専務取締役

さかた まさる 1945年福岡県飯塚市生まれ。1967年東京電機大学電気工学科卒。設計会社に勤務するも2年で辞め、芝居の世界に入る。薄田演技研究所、三島由紀夫が設立した浪漫劇場を経てフリーに。1974年に劇団「雄叫」を立ち上げる。劇団解散後、タップダンス教室の運営などを経て厨房器具を製造する(有)コスモステンレスに入社。現在、同社専務取締役

2006年に妻を膵がんで失い、その5年後、自身も直腸がんに罹った坂田勝さんには2014年7月号に直腸がん体験者として登場してもらった。その後、リンパ腫や心臓の異常でペースメーカーを埋め込んだ。また新型コロナにも感染するなど数々の病魔に襲われながらも、明るく笑い飛ばして生きる坂田さんにその元気の源を聞いた。

おむつが手放せない

直腸がん切除から10年経って手術する前の状態近くまで戻ってきたと語る坂田さん

現在、3人の子どもたちも独立し、埼玉県北浦和の自宅で独り暮らしをする76歳の坂田勝さんは10年前、直腸がん体験者として「がんサポート」に登場してもらっている。2006年12月に膵がんで妻久美子さんを53歳の若さで亡くし、本人も直腸がんを体験、その闘病体験の詳細は2014年7月号をお読みいただくとして、手短に手術までの経緯を記しておく。

2010年夏に下血があったが、痔だろうと思い放っておいた。

しかし、2011年5月になってトイレで大量の下血があり、さいたま市立病院を受診。直腸がんステージⅢと診断され、術前化学療法を受け、同年9月中旬、直腸切除術を受ける。

幸いにも人工肛門になることは免れたが、便が漏れる状態になったため、常時おむつが手放せなくなった。

坂田さん「いつまでおむつをしてなければいけませんか?」

主治医「人間の体はうまくできていて、もとの状態になってきますから」

坂田さん「どのくらいの期間がかかりますか?」

主治医「10年ぐらいかな」

「主治医の返事を聞いたときは長くかかるなと思いましたが、確かに10年経って肛門が締まって手術する前の状態近く戻ってきました。それでも、まだ時々便が漏れる不具合はありますね。だからいまでもおむつは離せません」

手術でがんから救われたものの、体が術前の状態に戻るのはなかなかに難しいことが坂田さんの体験からもよくわかる。

坂田さんが直腸がんの手術をしてから10年が経つ。その間にがんに対する治療や情報、医師や患者の認識も大きく変わってきた。

久美子さんが膵がんに罹ったのは2006年。いまから15年前だ。

「当時はいまと違ってがん告知ひとつ取ってみても、本人に告知するかどうかを主治医から相談されましたからね。私のときはハッキリ直腸がんと告知されました。久美子のときと、私のときとでは5年の間にそれほど変わったということですよ」

リンパ腫が見つかる

直腸切除後、定期的に検診を受けていた、2015年12月、CTの画像を見ていた主治医から突然「お腹の下のほうのリンパに何かおかしいものが写ってます」と告げられた。

「何ですか?」と尋ねる坂田さんに、医師は「組織検査をやらなければハッキリしたことは言えませんが……」と曖昧に答えた。

直腸がんで開腹手術をした坂田さんは、また開腹手術をして組織を採ることに抵抗があった。中学時代に盲腸で開腹手術を受けているので、3度目の開腹手術はできれば避けたかったが、ハッキリさせたいと覚悟を決めて組織を採取するため開腹手術に臨んだ。組織検査の結果、〝リンパの何かおかしいもの〟とはがんだった。

「また、がんか……」と思いはしたものの、がんが見つかったからといって、自分としていまの体の状態が悪くなったと感じているわけではないので「自分は大丈夫だ」と自分自身に言い聞かせた。

「私は役者をやっていたので、自分の身体を客観的に見る訓練をしてきました。それがこういうときに役に立ちましたね」

幸い1カ月の放射線治療でがんは消滅し、その後は半年ごとに検診を続け、昨年(2020年)やっとその検診からも解放された。

次々に襲い掛かる病い

しかし、まだまだ坂田さんに病いが襲い掛かってくる。

2017年春頃から頻脈になったり徐脈なったりして、歩くことも難しくなってきた。

「これはおかしい」と循環器科を受診。しばらく医師からもらった薬を服用していたのだが、一向に症状が改善しなかった。

2018年5月、冠動脈にステントを挿入するカテーテル手術を行った。しかし、心臓の調子はもとに戻らず、2019年6月にペースメーカーを入れなければならなくなった。

このことで、またまた新たな病気が発見されることになる。ペースメーカーを入れる手術をする前に心臓の組織を調べた。すると医師から「アミロイドーシスの疑いがある」と言われたのだ。

アミロイドーシスとはアミロイドと呼ばれる繊維状の異常タンパク質が全身のさまざまな臓器に沈着し、機能障害を起こす病気の総称である。全身に沈着する全身アミロイドーシスと、ある臓器に限局して沈着する限局性のものがある。限局性でよく知られている病気にアルツハイマー病がある。

「どんな病気かよくはわからなかったんですが、この病院では治療する方法はないと言われ、専門医を紹介されそうになりました」

坂田さんは医師に「私はあと5年ぐらい生きれば充分だから、こんな病気に関わって大事な時間を病院通いに使うなんて真っ平です」と言ったという。

すると「そうだよな、坂田さんが40歳ぐらいだったら治療を受けなさいと言うんだけどね」と医師は応えた。それだけ緊急性はないのだろうがあまり気持ちのいいものではない。

さらに、これ以外にも坂田さんはまだまだ病いがあるという。

「3年前から腰に痛みがありますが、整形外科医からは『様子みてみましょう』といわれるだけで、その原因はいまだわかっていません。最初に痛みが来たときは2階のベランダで洗濯物を干していたとき膝に痛みが走り、それから腰の痛みが始りましたね」

また緑内障も患っている。

こんな満身創痍の坂田さんが、またまた病いに襲われることになった。その病いとはいま世界を席巻している新型コロナである。

昨年(2020年)8月にPCR検査で感染が判明した坂田さんは、さいたま市立病院の個室に2週間入院することになった。高齢者の上に基礎疾患も充分すぎるほどある坂田さんだが、幸いなことに肺に異常は見られず、高熱が出るなどの症状もなかった。

「一昨年の12月にリフォームしたばかりの市立病院の個室に入院することができたので、きれいな部屋で3食付きの2週間を過ごしました。でも、あまりに暇なので病室にカラオケを持ち込んで歌ったり、運動不足解消のためタップダンスの練習なんかをしてましたよ」と笑いながら話す。

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