「撮った日が記念日」今度はみんなの笑顔を届けたい 大腸がんで音楽ユニットからフォトグラファーに転身

取材・文●髙橋良典
写真提供●YUTA
発行:2022年8月
更新:2022年8月

  

YUTAさん フォトグラファー

YUTA(ユータ) 1990年静岡県熱海市生まれ。歌手を目指し20歳で上京。2015年5人組音楽ユニット「UNIONE(ユニオネ)」を結成。翌年7月SMEレコーズからメジャーデビュー。2017年「第59回レコード大賞新人賞」受賞。2019年5月大腸がん罹患。2020年12月末「UNIONE」を脱退。現在、実家のある静岡県熱海市でフォトグラファーとして活動中

2016年7月SMEレコーズからメジャーデビュー。翌年、第59回レコード大賞新人賞を受賞した人気5人組音楽ユニット「UNIONE」のメンバーとして活躍していたYUTAさん。2019年29歳の若さで、大腸がんと診断された。その上、術後、縫合不全であわやという事態に。退院後、音楽活動に復帰するも、2020年末に脱会する。現在、実家のある熱海でフォトグラファーとして活動するYUTAさんに、がんを経験したことでどんな変化があったのか、を訊いた。

S状結腸に5㎝の大きな腫瘍がモニターに

現在、熱海でフォトグラファーとして活動しているYUTAさん(32歳)。

彼は2020年12月末まで、5人組人気音楽ユニット「UNIONE」(ユニオネ)のメンバーとしてコンサート、テレビの音楽番組やラジオ番組のDJと多忙な毎日を送っていた。

人気音楽ユニット「UNIONE」メンバーのYUTAさん(右端)

その彼が、いま何故、生まれ故郷の熱海でフォトグラファーをしているのか。

それは29歳のとき大腸がんステージⅡと診断されて、入院生活を送るなかで彼の生き方に変化があったからだ。

最初はこんな体の変化だった。

「ツアーで全国を回っていた2019年2月頃、下血がありました。でも、長時間の車移動が続いていたので、『切れ痔になったのかな』としか最初は思っていませんでした」

しかし、その1週間後、今度は粘血便が出たことで、さすがにこれは「普通じゃない」と気になり、インターネットで調べると芳しくない情報ばかりが出てきた。

「『何かが腸にできていて、そのできものからの出血なので粘血便になる』と出ていたのですが、20代での症状で調べてみると大腸がんの可能性は薄いものでした」

YUTAさんは酒もタバコもまったく嗜(たしな)まない。だから「潰瘍だろう」と考えてもみた。

しかし、「万が一がんだったら」と、やっと5月になって東京の病院で内視鏡検査を受けた。

麻酔がよく効かなかったのか、腸にカメラが入っているとき目が覚めたYUTAさんの目に飛び込んで来たものは、大きな肉団子のような塊のモニター映像だった。

「これはもしかしたら……」と見ていると、内視鏡を操作していた医師から「これはがんで、5年くらい前から進行していますね」と告げられた。

腫瘍はS状結腸にあり、大きさは5㎝くらいの、腸閉塞になる寸前まで大きくなっていたという。

「医師からは、『ステージがどのくらいかは、CT検査して、手術で腫瘍を切除したあと病理に出さないとわかりませんが、取り敢えず即手術です』と言われました」

その日のうちにCT撮影して、画像を見た医師はYUTAさんに「がん細胞が他の臓器には転移してないようですね」と告げ、手術日が7月30日と決まった。

「それまでは大きな怪我や病気などしたことがなかったので、まさか自分がそんな大きな病気になるなんて! という衝撃はありました。でも、精神的に落ち込むとかパニックになることはなくて、自分でも不思議なくらい冷静でした。最初モニターに映し出された大きながんを見たときには、人生で初めて死を意識しましたが。

それでも、その直後CT撮影をして、医師から『転移はなさそうだ』と言われて、これは治せるという自信が湧いてきました。もう手術日も決まったので、あとはがんを切除してよくするだけという気持ちにシフトしていきました。

それと、もし仮にこれで命を落とすことがあっても、29年間の人生を振り返ったときに『普通の人ができないような経験がたくさん出来た』という満足感みたいなところもあって、そうした思いが大きく落ち込まなかった理由の1つかもしれません。両親には電話で伝えました。自分は気持ちを切り替えていたので冷静に伝えたつもりだったのですが、知らせを聞いた両親はパニック状態になっていたのを覚えています」

術後の縫合不全で大出血

入院中のYUTAさん

退院したら普通にトイレに行けることを楽しみに入院生活を送る

手術日まで2カ月近く間があったので、YUTAさんはライブ活動やTV出演などこれまでの活動に戻っていった。

しかし、入院、手術となれば音楽活動を一時休止しなくてはならないので、スタッフとメンバーには「がんと告知された」ことを話した。

「ぼくら5人のグループは、オーディションでの寄せ集めではなく20代の最初の頃の音楽仲間で、友達同士のグループだったのですごく心配してくれて、泣いてくれるメンバーもいました」

YUTAさんは7月29日に入院、翌30日に腹腔鏡手術でS状結腸を少し長めに切除した。手術は無事に終了したかにみえた。

しかし、麻酔が切れた直後から、腹部に異常なくらいの痛みがあった。

これまでに経験したことがないような痛みだったが、本来痛みに強いYUTAさんは、手術してお腹に穴を開けているのだからこの痛みは仕方ないと我慢していた。

しかし、明け方に腹部の痛みが、とうとう我慢の限界を超えた。

術後の体には管が3本繋がっているので、自分ではトイレに行けない。看護師からは「オムツのなかに出してください」と言われていたが、若いYUTAさんには非常に抵抗があった。

しかし、どうにも我慢できなくなって排出するとすべてが血だった。

朝、主治医がやってくるまでそれを5~6回繰り返した。出血量は出血死ギリギリの大量出血だったという。

主治医は朝一番で緊急再手術を行った。切除した腸の繋ぎ目の縫合不全からの大出血だった。緊急手術が終わったあと、駆け付けた両親がYUTAさんを見たとき「顔色は真っ青だった」と後日聞かされた。

両親が主治医から聞かされた話によれば、「血管が弱くなっているところを縫合したが、繋いだときはもちろん出血はなく手術成功ということだったが、血圧が戻ったとき繋がっていた箇所が血流の力で離れてしまったのではないか」という説明だった。

病理診断の結果から腫瘍は5㎝と大きかったがS状結腸内に留まっていたため、S状結腸がんステージⅡと診断され、術後化学療法は行わなくて済んだ。

縫合不全のため、退院は予定の10日間より3日程度延びたが、退院後は療養を兼ねて東京から実家のある熱海に一旦帰り静養することにした。

30歳を機に音楽ユニットを脱退

YUTAさんの音楽活動復帰は10月に決まった。最初はお客さんの前に出るのではなく、ミュージックビデオの撮影などから活動を再開し、10月からステージ復帰を果たす。

小さいときから歌は好きだったYUTAさんは東京でオーディションがあることを知り、始めて上京。オーディションには受からなかったものの、3カ月後に再び上京する。

「なんのツテもコネもなかったのですが、こんな積極的な行動をしたのは初めてだったので自分でも驚きました」

上京後、芸能スクールの音楽コースに入所。100名を超える同学年の生徒が3クラスに振り分けされ、隣の席にいた生徒が後のメンバーとなる1人との出会いだった。

その彼とライブハウスのイベントに2人で出ようと、養成所の先輩が関係している渋谷のライブハウスに出演することになった。

そんな活動を始めたなかで新たに出会った3人のメンバーと2015年12月14日、5人組音楽ユニット「UNIONE」を結成する。ユニット名はUNION(団結)+ONE(ひとつ)を併せたものだという。そして2016年7月、26歳のときSMEレコーズからメジャーデビューを果たした。

2017年には第59回レコード大賞新人賞を受賞。以降、オリコンチャートでトップ10入りするシングルやアルバムを立て続けにリリースするなど人気音楽ユニットとして、コンサート活動やテレビの音楽番組に出演するなど幅広く活躍することになる。

今後の人生を考え、2020年12月30日に「UNIONE」脱退を決断

退院後、音楽活動を再開したものの、以前とは違う自分がいることを感じていた。入院中、改めて自分の人生について考えてみる十分な時間があったからだ。

「それまでは、自分のことしか考えていませんでした。病気になっても自分は大丈夫、必ず治せる、と。でも実際は自分より家族や友人のほうがよっぽど心配し苦しんだのだな、ということに気づきました。確かに身体的に苦しかったのは自分ですが、精神的に苦しい思いをしたのは自分の大切な人たちだったのだ、と思い至りました」

「僕のやっていた音楽の仕事はすごく不規則で、体力的にもハードな仕事なんです。自分の大好きな音楽の仕事を続けて行きたい半面、また再発も含めて大病に罹らないとはいえないという思いと、年齢的にもちょうど29歳から30歳に差し掛かっていたときだったので、今後の人生を考えた結果、2020年12月30日の脱退を決断しました」

「メンバーからは最初は引き止められました。でも自分が病気になったことをみんな知っているので、『本当は続けてもらいたいけど、YUTAくんが自分で決めてその道に進んでいくなら止めない』と言ってくれました」

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