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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第67回 マティスにつつまれて<背中立ちのポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2023年12月
更新:2023年12月

  

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

今年もまた暮れていこうとしています。1年の過ぎ去るのがなんと速いことか。そんな感慨をこれまでもなんどもつぶやいてきました。もう言わずもがなことではあります。

美しい楽しい時は速度を超越して……

しかしながら1年を振り返ってみると、均等に素早く時は過ぎていくわけではありません。美しい楽しい時間は、速度を超越しています。

今年、ダントツだったのは「マティス展」でした。

日本では20年ぶり開かれた大回顧展だそうです。20年前の展覧会を見てないわたしにとって、まとまったマティスの作品群に会えるのはほとんど初めての機会。

アンリ・マティス(1869~1954年 フランスの画家)は、72歳になって切り絵をはじめたことを初めて知りました。1941年、十二指腸がんになり、その後の療養を南仏の中世の街で過ごし、ベッドとイスが中心の生活になり、そこから切り絵の作品を創作していったというのでした。

そもそもマティスが画家の道を志すようになったのも、21歳で長期の病気療養中に母親から送られた絵の具セットであったそうです。

そして、集大成と呼ばれるヴァンスの修道院ロザリオ礼拝堂の内装という仕事を手がけることになります。それも病気療養中に介護を受け持ち、かつモデルも務めた女性が修道女となり、数年後に再会。その縁もあり手がけることになった仕事でした。

ロザリオ礼拝堂のマティスがデザインした内装を体験

もちろん現地を訪れなくてはその全体を体験できないでしょうが、展示の工夫で相当程度までロザリオ礼拝堂内を味わえるものになっていました。

その礼拝堂についてのマティスの言葉、「信仰があってもなくても、ここを訪れた人の心が軽くなること」を願ってデザインしたというのでした。

心が軽くなる――その言葉に打たれました。ほんとにその通りなのです。ステンドグラスも壁面も祭壇も、参列者が座る椅子や配列、司祭の着用するマントにいたるまでマティスはデザインしています。そのなかでマティスの色彩につつまれていると、不思議なことに心が軽くなっています。

11月の午前11時の光の中で、もっとも美しさが引き出されるようにデザインされているのだそうです。

マティスの色彩は信じがたく美しい。

美しいもの・ことにふれる機会を大切にしたい。1人ひとりが大切にしている美しいもの・ことを丁寧に味わいたい。

マティスのがん手術とその後の療養期間というのは第2次世界大戦中でした。

礼拝堂が完成するのは1951年、日本ではサンフランシスコ講和条約締結によって敗戦後の連合国による統治を終結させた年になります。戦禍による傷跡が生々しい時代でした。

今、再び戦争の足音が遠く耳を打つ時代です。

今年は史上類のない膨大な数の難民が国境を越え、漂流しているそうです。暮らしが一瞬のうちに瓦解する映像にわたしたちは日々接しています。

不自由がもたらす自由

歳を感じることが多い1年でもありました。スムーズにできなくなっていることに気づかされるたびに、半ば自動的に自分をディスったりしてます。あーあ。やだ。くそっ! ほとんど気にもとめないくらい軽い調子で。

でも、思い通りにいかない体に、ヨガはしみじみと味わい深いものとなっていきます。

今月紹介する「背中立ちのポーズ」、以前に紹介した2022年3月号「壁を使った背中立ちのポーズ」も合わせて見ていただきたい。どちらもお腹を楽にしてくれます。腸には脳以上の数の神経細胞があり、気分を左右する物質を放出しているそうです。腸活の1つにぜひ加えてほしい。

わたしは最近、腰が上がりにくくなっているのに気づいて、ショック。

お尻を上げようとするのではなく、腰を浮かすと意識すると良いようです。腰と尻、スタートの姿勢で意識すると、微妙に位置が違うことがわかり、面白がっています。

ヨガの実習は通常食後すぐには薦められません。だいたい1~2時間後以降に行います。

でも、「背中立ちのポーズ」は食後すぐに行っても大丈夫です。胃腸を重く感じるときには腰の下に握りこぶしを入れて、腰を少し高くするだけの「背中立ち」をやっても楽になってきます。

<背中立ちのポーズ>

 

胃腸をリラックスさせるポーズです。

①仰向けになり両膝を立てます。両腕を上方に伸ばし、大きく伸びをします。背中も腰もリラックスします
②両腕を体の脇に戻し、息を吐きながら両膝を胸に引き寄せます。このとき、骨盤も少し浮きます
③吸う息で下腿部を上方に上げ、両手を腰にあてがいます。これ以降は全部、自然呼吸で
④腰を上げていく過程では、自分のやりやすいやり方があるようです。
骨盤の上部(ウエスト)に手をかけ、腰を支えます。頸の上に足が来るように、背中と脚部が「く」の字になるように調整していくと、お腹がふっと楽になる位置がわかります。わからなくても、適当でいいのです。そのまま20~30秒キープ
⑤戻すときはそのまま戻そうとすると、尻がどしんとマットに落ちます。なので、いったん足のほうに腰を移動させて、ゆっくり背中の上の方から椎骨を1本ずつマットに戻してきます。そのまま休んでも、足を投げ出して「完全なくつろぎのポーズ」で休んでもOK。1セット

<腰が上がりにくい場合>
③から腰が上がりにくい場合、握りこぶしを腰の下に置き、足は緩やかに上方に(膝を伸ばそうと頑張らない)、そのまま20~30秒キープ

■前述のマティス展を見逃した人へ朗報
コロナ禍で延期されていた「マティス 自由なフォルム」展が2024年2月14日から5月27日まで国立新美術館にて開催予定

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

こころとからだクリニカセンター
PC www.kokokara.co.jp/
携帯 www.kokokara.co.jp/m/

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