肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 33

昨年は異常がなかったが、子宮頸がんに。前の病院の責任は?

解決人 渥美雅子(あつみ まさこ) 弁護士
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2012年7月
更新:2014年3月

  

多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624


昨年、ある病院で子宮頸がん検診をしましたが異常はありませんでした。今年は別の病院で検診をしたのですが、1期の子宮頸がんと診断され、広汎性子宮全摘出術が必要と診断されました。主治医は、がんがすでに数年前からあったと思われると言っております。前の病院の責任を問えないでしょうか。

(30歳、女性)

病院側の責任を追及することは難しい

初期のがんはなかなか見つけにくいものだと言われております。また子宮頸がんの原因とされるヒトパピローマウイルスに感染したとしてもがん化せず、ときには自然に消退してしまうこともあるようです。

あなたは今年の検診で子宮頸がんが見つかり、広汎性子宮全摘出手術を行うことになったということですが、それにしても、それが進行度「1期」であったのなら「数年前からがんであって」しかも「手術を要する状態であった」とはちょっと考えにくいような気もするのですが。

もしかしたら、この1年の間にがん化したのではないでしょうか。

ただ、もしも昨年の検診段階からすでにがん状態だったとしても「問診」であなた自身、体の異常を訴えたのかどうか、「子宮頸部の細胞診」をしたのかどうか、つまり担当した医師が、がんを疑うに足りる十分な情報を得ていたのかそれも問題です。

とりわけ集団検診の場合には、担当医が次から次へデータを見て即断していくので、問診の結果や全身的な症状と総合してがんを疑ってみる余裕はありません。

例えば、判例を見ると(肺がんのケースについてですが)

「医師は1時間で約400枚のフィルムを流れ作業的に読影する。それ故、集団検診における肺がんの発覚には限界があり、がんが判明した患者について、前年の検診で撮影された間接写真を遡及的に検討すると、既に腫瘍陰影が出現しているとされた症例が、全体の60%から78%にのぼる。しかしながら、その時点での識別は困難であったとされる症例が、全体のおよそ40%を占めることが、多くの文献で報告されている。したがって、検診結果の確実性はその程度に止まるのが現状であって、集団的な健康水準の維持からは有効な方法であるが、個別的ながんの発見方法としては完全とはいえないものであり、受診者もがん検診はこのようなものであることを予期すべきである」

として検診担当医の責任を免除したものがあります。

この判例に見るとおり、集団検診の際の医師の注意義務は決して高くはありません。

また個別の検診にしても、あなたが「私、がんではないでしょうか。なぜなら最近……」と症状を細かく訴え、さまざまな検査をしたのとは違って、医師側の注意義務はやはりやや低いと言わざるを得ません。

それを前提に考えると、前の病院が誤診だったとか、担当医ががんを見落としたとして責任を追及することはかなり難しそうな気がします。

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