編集部の本棚 2018/4Q
すい臓がんステージⅣから還ってきた男
川嶋勝美著 発行:タッケンホールディングス 1,200円(税別)
膵がんは、他のがんと比べて生存率は極めて低いことが知られている。先日、国立がん研究センターが発表した5年生存率は10%でしかない。その膵がんステージⅣaと診断、余命7カ月と宣告された男の11年2カ月に及んだ闘病生活を綴った貴重な記録である。
著者は大酒飲みで、しかも煙草は1日3箱以上、運動はまるでしないという生活を送ってきた。そんな著者が2006年10月に突然の激痛に襲われる。4カ月後、地元の弘大附属病院で膵がんステージⅣaの診断を受ける。著者はセカンドオピニオンを求めてがん研有明病院に行くが、結果は同じだった。
「一時も早く処置をしたほうがいい」と言うがん研の医師の勧めもあって、弘大附属病院で手術を受けることを決断。2007年3月、8時間に及ぶ手術は無事、成功。以後、抗がん薬ジェムザール投与が5年間続くことになる。
その間のことは本書に譲るとして、2017年12月19日、青森県立中央病院で担当医から「CT検査はこれで終わりにしたいと思います。これで全て終了です。おめでとうございます」と告げられる。
余命7カ月と診断された男が、膵がんに勝利した瞬間だった。
著者は言う。「この体験を今、がんで悩み苦しんでいる方や家族に少しでもお役に立てればとの思いからだ」
巻末には、まとめとして「がんで死なない」「がんにならない」ための食事、運動、脳、生き方、暮らし方など不規則な生活を送った著者の体験から学んだ60カ条が記されている。(良)