FP黒田尚子のがんとライフプラン 58

がん患者が「傷病手当金」受給で知っておきたい3つのポイント

黒田尚子●ファイナンシャル・プランナー
発行:2019年1月
更新:2019年1月

  

くろだ なおこ 98年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。乳がん体験者コーディネーター。黒田尚子FPオフィス公式HP www.naoko-kuroda.com/

がんに罹患後、治療で入院したり、治療の副作用などのため仕事を休職したりする場合があります。健康保険の「傷病手当金」は、会社員などの休職中の収入減をカバーする公的制度の1つ。支給額は1日につき、標準報酬日額の2/3相当額ですから、生活費のベースになり得ます。利用されたことのあるがん患者さんも多いと思いますが、今回は、傷病手当金について相談が多いポイントを3つ紹介したいと思います。

よくある質問その1「傷病手当金は退職するともらえない?」

基本的に傷病手当金は、最長でも1年6カ月しか受給できません。しかし、協会けんぽの「現金給付受給者状況調査」(平成29年度)によると、傷病手当金の平均支給期間は162.77日(約5.5カ月)。傷病別にみると、「新生物」は、179.66日(男性191.11日、女性164.67日)となっています。

傷病手当金を受給できる期間が残っていても、さまざまな事情から復職するがん患者さんが少なくないのでしょう。

その一方で、傷病手当金受給中に退職するというケースも考えられます。

退職すると、残りの期間の傷病手当金は受け取れないと思っている方もいるようですが、以下の3つの要件を満たせば、退職後も傷病手当金を継続して受給することは可能です。これを「資格喪失後の継続給付」といいます。

①資格を喪失する日の前日(退職日等)までに継続して1年以上被保険者であること
②資格を喪失する日の前日(退職日等)に傷病手当金を受けているor受けられること
③資格を喪失する日の前日(退職日等)に現に休んでいること

よく「退職日に働くと傷病手当金が受け取れない」と言われるのは、上記③の要件があるためです。ですから、残務整理や引き継ぎは早めに済ませておくのが肝心です。

なお、退職後、健康保険の任意続被保険者にならなくても、国民健康保険に加入あるいは被扶養者になる等、保険の種類等は問われません。

よくある質問その2「傷病手当金と雇用保険の基本手当は併給できない?」

一般的に、退職となれば、失業者の生活を支える収入源として、雇用保険の「基本手当」(いわゆる失業手当)が考えられます。

傷病手当金を受給している人が退職した場合、基本手当も同時に受け取れるのか? というのもよくある相談です。

基本手当は、働く意思と能力があるにもかかわらず仕事に就けない状態を「失業」とみなし、一定の受給要件(原則として離職の日以前2年間に被保険者期間が12カ月以上ある)を満たした人が、手続きを行うことで基本手当が受給できるものです。つまり、基本手当=「仕事の意思も能力もある人のための給付」です。

ところが、傷病手当金は、「傷病で仕事ができない人のための給付」です。したがって、基本手当とは目的が相反するものであり、同時に受給することはできません。

そこで、退職後、がんの治療のためなどで、継続して30日以上働けないのであれば、ハローワークに行って受給期間延長(最長4年間)の申請をしましょう。その上で、傷病手当金を法定期間分(1年6カ月)受給し、体調が戻って仕事ができるようになってから就職活動をするときに、基本手当を受給すれば、両方の給付を受けることは可能です。

基本手当の受給要件として、離職前2年間(倒産・解雇等の場合は1年間)の間に疾病、負傷、出産、育児などの理由により引き続き30日以上賃金の支払いを受けることができなかった場合は、これらの理由により賃金の支払いを受けることができなかった日数を加えた期間(加算後の期間が年を超えるときは4年間が最長)により受給に必要な被保険者期間があるかを判断する

出典:セールス手帖社保険FPS研究所「がんとお金の真実」黒田尚子

よくある質問その3「再発・転移した場合に傷病手当金はもらえない?」

傷病手当金は、原則として「1つの傷病につき支給開始から1年6カ月」受給できるものです。これは支給されるトータルの日数でなく、支給開始から1年6カ月が経過すると治療中でも支給は打ち切りとなります(ただし、組合健保の場合、金額の上乗せや受給期間延長などの付加給付があることもある)。

ただし、がんのように、再発の可能性がある病気の場合、この条件が適用されないケースがあります。

例えば、がんと診断されて治療のため休職し、傷病手当金を受給。その後、治療も終えて復職し、一定期間が経過した後に再発した場合、医学的には同一傷病だったとしても、社会的には病気が治った(=治癒した)状態だったとみなされて、再発を便宜上他の傷病として取扱い、改めて傷病手当金が受給できるケースがあるのです。

これを「社会的治癒」と言い、最終的な判断は、各健康保険に委ねられます。「もしかして該当するのでは?」と思った場合は、加入先に相談をしてみましょう。

 

今月のワンポイント 健康保険の傷病手当金や雇用保険の基本手当など、収入を補てんするものは、税制上、非課税所得に分類されますので、所得税や住民税はかかりません。「難しくて良くわからない……」という場合は、あれこれ悩まず、協会けんぽや健保組合等に確認してみましょう。

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