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FP黒田尚子の知ットク!がんマネー処世術 1
乳房再建
黒田尚子 くろだ なおこ
1992年大学卒業後、大手シンクタンク勤務中にFPの資格を取得。1998年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。乳がん体験者コーディネーター
サバイバーの皆さんがすぐに使える最新トピックやオトクな情報。私自身が「これってどうなの?」と感じている素朴なギモンなどをお伝えしていきたいと思います。さて今回は気になる「乳房再建」についてです。
私が2009年末に乳がん告知を受け、右乳房を全摘すると告げられたとき。「おっぱいを取るんなら新しく作ってください!」――私にとって乳房再建は最優先事項でした。
しかし、乳房再建について調べていくうちに驚きの事実が!方法によって公的保険が適用にならない場合があるとのこと。「乳房再建」とは、乳がんの手術によって失われた乳房を、手術前の状態に近くなるよう修復(つまり再建)すること。現在行われている乳房再建法は、大きく分けて自分のお腹や背中の一部を用いる「自家組織移植法」と人工物(インプラント)を用いる「インプラント法」の2つ。私は後者のインプラント法による乳房再建を行いました。
そして費用は、病院によって異なり、私が再建した病院(都内のがん専門病院)の場合だと、自家組織50~60万円、インプラント100~150万円が目安です。この金額の差は何!? そうです。自家組織は保険適用されるのに対し、インプラントは適用されず全額自己負担だからです。これっておかしくないですか??
もちろんこの現状に現場の医師も患者もギモンを感じ、以前からインプラントの承認・保険適用を国に働きかけてきました。
そしてついに、2012年8月下旬、厚生労働省によるインプラントの薬事承認が通ったのです。しかし保険適用に関する審査はこれから。今のところ来春あたり保険適用になるのでは、という見通しのようです。
ただし、問題がないわけではありません。今回承認されたのは米国系医薬品会社アラガン・ジャパンの製品で、米国でも保険適用されているラウンドタイプのもののみ。筆者も使ったアナトミカルタイプのものは対象となりませんでした。
形成外科のドクター曰く、「一般的に欧米人であればラウンドタイプのような〝おわん型〟でも良いけれど、日本人の胸には〝しずく型〟のアナトミカルタイプのほうが適している」とのこと。つまり医療の現場において保険適用になるのは「使えない」シリコンとなります。
しかし、多くの方々の熱意と努力によって実現した大きな1歩であることは確か。これからの動きに期待しましょう。
FP黒田尚子からのひと言
多くの方が自分らしく生きるための乳房再建を選択できるよう1日も早い保険適用を熱望しています。