つらい入院治療はやめたい、でも在宅は不安……がん終末期のジレンマを絶つ

医療者とボランティアで在宅ホスピス実現を!

取材・文●阿鹿麻見子
発行:2013年9月
更新:2019年7月

  

在宅での終末期を望むがん患者さんは多いが、それを実現できる地域の医療支援が、まだまだ整備されていない。この現実に対して、いま何が求められているのだろうか。がんによる終末期を、痛みや苦痛から解放されて有意義に過ごすことを、8年前から模索してきた「吹田ホスピス市民塾」。この会が推進するのは、緩和ケアを医療者が身につけ、市民によるボランティア支援で在宅ホスピスを実現することだという。


会長の小澤和夫さん
会員の益田由紀恵さん

吹田ホスピス市民塾
会長:小澤和夫
〒564-0081 吹田市藤が丘町27-1-405
TEL&FAX:06-6388-6257
E-mail:zaitaku51@nifty.com
http://suita-hosupisu.jimdo.com 

在宅でも入院でも不本意な終末期

現在の医療環境のなかでは、がんの患者さんが終末期を生き抜く過程が、つらいものになる場合が多々あります。背景には、緩和ケア診療を含めた在宅医療での看取りが普及していないため、抗がん薬治療などのアクティブな治療を受けない患者さんは、入院を続けることが難しい点があります。

在宅に戻れない患者さんの場合は、病院での末期の治療に疑問を感じながらも、限られた選択肢のなかから不本意な選択をせざるを得ないことが少なくありません。

「がんによる人生の終焉のときを、精神的・身体的苦痛から解放され有意義に過ごすためには、何がどうあるべきなのか」

『吹田ホスピス市民塾』の会長、小澤和夫さんは、同会を市の研究活動の委託事業として立ち上げた2006年から、このことを考え続けてきました。

「吹田市(大阪府)は、がんで亡くなる方の数が多いという統計があります。全国平均が30%であるのに対し、大阪府全体の平均が33%、吹田市が36%です」

吹田市近辺には、大阪大学医学部附属病院、国立循環器病研究センター、淀川キリスト教病院など、大きな病院が数多くあります。そのため、他の地域では往々にして亡くなるケースが多い心疾患などが救命され、結果としてがん死の率が上がっているのではないかという医療関係者による分析もあるにはあります。

このような吹田市の立地的な背景を考慮に入れつつも、小澤さんは、「がんによる死亡率の高さに危機感を募らせずにいられない」と話します。

患者支援を語る医師の姿に心動かされて

看護師による小児ホスピスの講演会の様子。がんについての幅広いテーマを掲げた講演会は、会の活動の柱の1つだ

『吹田ホスピス市民塾』の前身として、小澤さんは『終末期在宅ホスピスを考える市民塾』を2006年に立ち上げました。

その第一歩のきっかけとなったのは、定年後の60代半ばに受講した大阪市主催のボランティア養成講座でした。講師の1人だった兵庫県のK医師は当時、「とくにがん患者さんの終末期はつらく、寂しい思いのなかで亡くなる人が多い」と語られたのです。

「ライフワークに出会ったと感じた」と小澤さんは当時を振り返ります。熱弁をふるうそのK医師の背広は破れていました。がん患者さんの終末期に寄り添い、その処遇改善を願って地道に取り組む医師の苦労を察し、とにかく動き始めることにしたのです。

その後、会場と費用を2年間市がサポートする「吹田まちづくり市民塾」の制度を知り、応募。2006年度に市の研究活動の委託事業として採用され、「吹田ホスピス市民塾」をスタートしました。

現在約90人の会員がおり、これまでにのべ50回、がんをテーマにした公開講座を開催しました。がんの予防と早期発見・早期治療という「川上」から、終末期の「川下」までを考える市民グループに成長するなかで、会員の病状の悪化や逝去に伴い、がん患者さんの家族会や遺族の会も必然的に発足しました。

会員の益田由紀恵さんは、24年前、38歳の夫を胃がんで亡くしました。吹田ホスピス市民塾に、病院に勤めた経験を役立てられればと出席したところ、思わぬ体験を得たといいます。

「夫を亡くした当時の話をしようとすると涙があふれ、残念だった気持ちや、『あのときは実はどうすべきだったのか』という思い、『告知していたら夫はどんな言葉を遺してくれただろうか』など、自分も知らぬ間に引きずってきた思いに気付かされたのです。慰められたり支えられたのは私のほうで、求めていた場所を見つけたのかもしれません」

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