乳がんの早期発見やがん治療中の不調対策にアロマを使って欲しい
アロマの力をがん患者のQOLアップに役立てて!
アロマテラピーは芳香植物が生み出す香りの成分である精油(エッセンシャルオイル)を使って、心身の健康に役立てる療法です。西洋医学では補えない不快な症状や不眠やイライラ、免疫力の低下などに効果を発揮します。
暮らしの中にアロマテラピーを取り入れると、がん治療も楽になるのではないでしょうか。
ホームページ:blog.goo.ne.jp/rubanrose-
乳がんに罹患してアロマテラピーに出会う
乳がん患者会Ruban Rose(リュバン ローズ=ピンクリボンという意味)の主宰者である飯田智子さんがアロマテラピーに出会ったのは、乳がんの手術が終わり、術後の治療に不安を感じていたときでした。
「当時(2003年)は大学病院の看護師で、多忙な日々を送っていました。勤続20年のリフレッシュ休暇をもらい、海外旅行へ出かけ、帰国してのんびりおふろに入って乳房のセルフチェックをしたとき、かたいしこりがあるのを感じたのです。
職場で検査を受け、乳がんとわかったときは、医療現場で働く私でも目の前が真っ白になりました。がんの大きさは1cm弱で、検査の翌週には入院し、乳房温存術で腫瘍を切除しました」
入院中は個室病棟に入ったため、ほかの乳がん患者さんと会う機会もなく、孤独を感じたという飯田さん。病気の知識はあったものの、実際に乳がんを体験した方の話を聞きたいと強く思ったそうです。
退院した飯田さんは、インターネットで情報を集め、1人の乳がん患者のホームページを見つけます。乳がんと診断されてから生活の中にアロマテラピーを取り入れ、治療中の不安や不調を解消しているという、千葉治子さんのホームページでした。千葉さんはハーブを使ったレシピや精油の使い方などを紹介し、多くの乳がん患者がコメントを寄せていました。
「千葉さんの自宅で乳がん患者の集まりがあると知って参加し、そこで初めてアロマテラピーを知りました。心地よい精油の香りは、不安だった私の気持ちを落ち着かせてくれて、アロマはメンタル面で効果があることを実感しました。そこで私の職業魂というか、長年医療に従事してきたクセなのか、アロマテラピーを乳がん患者のメンタルケアや、治療中の不快な症状の緩和に役立てられないかという発想が浮かんだのです」
飯田さんは病院勤めを続けながら、ボランティアで患者サポートを始める一方、メディカルアロマの学校へ通い、アドバイザーとインストラクターの資格を取得。2006年、千葉さんとともに「ブレストケアサポートチーム」という患者会を発足し、2010年、名称を「Ruban Rose」に変更。アロマテラピーやハーブを楽しむユニークな患者会として活動しています。
がん治療中の様々なシーンでアロマを取り入れて欲しい
Ruban Roseでは、乳がん体験者を対象にしたアロマテラピーの講習会を開き、肩こりやリンパ浮腫を改善するためのマッサージ、アロマテラピーを利用した石鹸、化粧品作りなどを行っています。
「患者さんたちから好評だったのは、ハーブを使った料理です。食欲のなかった方が、ハーブのスパイスに誘われて食べられるようになったと言ってくれました。また、ハーブバスの講習も人気で、肩こりや不眠に効果があった、リラックスできたなどの声が聞かれました」
がんの治療中は「アロマが役立つシーンがたくさんある」と飯田さん。例えば、入院するときは、携帯用のアロマディフューザーを持参し、ラベンダーの香りをかぐと手術前夜や化学療法の前などの緊張や不安をほぐす効果が。化学療法中は白血球の数が低下するので、抗菌作用のあるユーカリの精油をスプレー容器に入れて、マスクにシュッと噴射しておくと役立つそうです。
ほかにも、「ホルモン療法の副作用で見られるホットフラッシュやだるさ、頭痛などの症状の緩和や、治療後のQOLアップにアロマを利用すれば、楽になる患者さんはたくさんいるはずです。がんと診断されたショックや再発の不安を抱えている患者さんも、アロマでリラックスできるので、ぜひ取り入れて欲しい」と、飯田さんは言います。
飯田さん自身は、乳がん治療の中で放射線治療が最もつらかったとか。
「私の乳がんのタイプは、ホルモンレセプター陰性、HER2陽性で、術後は再発を防ぐために放射線治療、抗がん薬治療を受けました。放射線治療は仕事をしながら受ける予定だったのですが、照射した部分のほてりが気になって仕事どころではありません。敏感肌だったせいか、患部がジクジクしてやけどのようになってしまい、精神的にも落ち込みました。このような場合は、アロエジェルを塗ると炎症が治まるので試されるといいですよ」
乳がんのセルフチェックはリラックスすることが大切
飯田さんは、乳がんの早期発見のための活動も積極的に行っています。2014年は、東京都中野区の区民向けの講座や、新宿区の職員向けの講座で、乳がんのセルフチェックの重要性について話したそうです。
「都内でも区によって乳がんの検診率は差があります。検診率の低い区で講座を開いて、もっと検診率をアップさせていきたいですね。私が勧めているセルフチェック法は、精油を練りこんだ石鹸を使って、入浴のとき乳房を触る方法と、トリートメントオイルを使って行う方法の2つです」
しこりを見逃さないポイントは意識して行うこと。「ササッと済ませようとせず、しっかり乳房を触ることが大切です。だからこそ、アロマでリラックスしながら行うと効果があるのです」と飯田さんは強調します。
さらに、「乳がん以外のがん患者さんにもアロマのケアを広げていきたいし、男性にももっとアロマに興味を持って欲しい」と飯田さん。アロマトリートメントは女性が行うものというイメージがありますが、男性にも心地よさを体験して欲しいと言います。
がん患者さんが自分らしく生きられるように
Ruban Roseの現在(2014年)の会員数は約200人。ブログを見た患者さんが全国各地から集まり、中にはアメリカ在住の方もいるそうです。
「会員が増えたのは、本の力もあります。2012年、乳がんの医学情報と、自宅でできるアロマやハーブを使ったセルフケアを紹介する本を、千葉さんと共著で出版しました。体験談や不快な症状を緩和する方法も盛り込み、私と千葉さんが心を込めて作った本です」
飯田さんは、この本に特別な思い入れがあります。この本の刊行の少し前、千葉さんが他界されたのです。
「彼女は最後まで諦めず、入院中も精力的に本の写真選びをしていました。亡くなる2日前、彼女がジャスミンの香りのマッサージオイルが欲しいというので、翌日作って入院先へ持っていきました。私がトリートメントをしてあげると『向こうはお花畑のようなところらしいわよ』と言って、やすらかな表情をしていました」
飯田さんは言います。「千葉さんの闘病生活はアロマに支えられていました。最近、医療現場でのアロマへの関心が高まっていることを感じています。彼女の意思でもあるので、今後も患者さんをサポートする活動を続けてきたいと思います」
さらに「がん患者さんには、がんになったからといって塞ぎ込んでしまうのではなく、前向きに、自分らしく生きていて欲しいですね。アロマはきっと、がん患者さんの強い味方になってくれます」
アロマテラピーを楽しむ仲間が集まる
乳がん患者会「Ruban Rose」
●主な活動
茶話会や乳がん体験者を対象としたアロマテラピーの講習会などを開催。また、乳房健康研究会主催のピンクリボンウォークに参加(2011年)、東北地方で女性の健康支援「ピンクリボンでつなぐ絆プロジェクト」(2011年)に参加するなど、ピンクリボン活動も積極的に行っています。ピンクリボンウォークでは、オリジナルハーブティの試飲と販売、精油のルームスプレーや香りの石鹸作り、マッサージオイルを紹介。
●入会案内
乳がん患者、患者家族、乳がん以外のがん患者でもアロマテラピーやハーブでのケアに興味のある方であれば入会できます。会費は無料。
入会すると講習会に参加できます(有料)。入会希望の方はホームページにアクセスしてください。