最後まで自分らしく生きたい
患者さんが緩和ケア冊子を作成
池谷光江さんと前田典子さんの2人の乳がん患者さんが、自分たちはこんな緩和ケア情報が欲しいと患者目線の「緩和ケア冊子」を企画。後に続く患者さんのためにも、実用的な冊子が欲しいと、2人は1年をかけて自費で、2015年秋、完成させました。
ホームページ:kanjyakanwa.jp
1人暮らしのがん患者さん
私と、前田典子さんの2人の乳がん患者で『がん患者のための緩和ケアの受け方』という冊子を作りました。
乳がんの肺転移治療中の前田さんは、東京で1人暮らし。情熱を込めて取り組んでいた仕事を後輩に引き継ぎ、今は、趣味を楽しむ優雅な生活ですが、1人で最期を迎えるには準備が必要と考えました。
そこで、2人で、緩和ケア病棟について調べ始めました。思っていた以上に、緩和ケア病棟の数は少なく、病院によってケアの質は様々だとわかってくると、「元気なうちに自分で準備しておかなくては大変なことになる」と思うようになりました。
患者仲間でも、「緩和ケアは最期の最期」「がまんできないようなひどい痛みのときの治療」と、誤解している方も多くおられました。
がん患者は、自分の状況や治療について正しい知識を持って、自分が納得できる治療を選び取ったほうがよいのでは?と思っていた私たちは、患者の目線でわかりやすくまとめた緩和ケアの冊子を作ることにしました。
自分たちの体験を盛り込む
前半は、「痛みをがまんしないで」というタイトルで、疼痛治療の基本的なことをまとめています。痛みを正確に医療者に伝えるために、投薬と痛みを記録できる表のサンプルも掲載しています。コピーをして実際に使っていただくこともできます。また、誤解の多い疼痛治療薬についても患者目線で簡単にまとめました。
私たち患者からは興味と期待が高い「漢方、鍼灸、アロマテラピー」についても専門の先生方の監修をいただいて掲載しました。そして、まだあまり知られていない「セデーション」「がんで亡くなる場合の体力の落ち方」についても、自分らしく最期を迎えるためには知っておきたい情報だと考えて載せてあります。
なかには、「怖くてそこまで知りたくない」と言う方もおられるかもしれませんが、私たちは、元気な今のうちにわかってよかったと思っています。
後半は、2人で緩和ケア病棟探しをした経験をフローチャートにまとめました。まずは、がん相談支援センターで相談することから始まるのですが、実際に足を運んだからこそわかったポイントなども盛込みました。「お役立ちサイト」「全国のがん相談支援センターリスト」も見ていただけます。
専門家のチェックを得る
この冊子は、前田さんが資料を集め、2人で読み込み、私が文章にするという形で1年がかりで進めてきましたが、何といっても素人が書いた文章なので、専門家の先生にチェックをしていただく必要がありました。たまたま「がんサポート」誌に掲載されていた余宮きのみ・埼玉県立がんセンター緩和ケア科長の記事を読み、「この先生だ!」という直感で、何の紹介もなく不躾に手紙を差し上げました。
余宮先生は、本当に快く応じてくださり、細かいチェックを何度もしてくださいました。他にも、多くの皆様からたくさんの優しい手助けをしていただき、完成しました。心から感謝しています。
がん支援センターなどに配布
現在、国立がん研究センター中央病院、埼玉県立がんセンター、近畿大学医学部附属病院などのがん相談支援センターや、患者会に置いていただき、必要な患者さんにお届けできるように活動しています。
10月5日には、埼玉県立がんセンターの「ホスピス・緩和ケア週間」で緩和ケア科・金島先生の講演の後に、この冊子を紹介する機会を頂きました。
私の知識が足りなかったために、不本意な乳がん手術を受けてしまった苦い経験から始めた私のがんに関わる活動も、15年目になります。
がん患者さんにはいろいろな状況と段階があり、それぞれの段階で必要な情報を正確に受け取れるかどうかが、その後の生活を大きく変えてしまいます。これからも、患者目線で正確な情報を発信してゆく活動を続けていければと思っています。