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「治った人の体験談」を掲載するフリーペーパーが、若年がん患者の闘病を応援

取材・文●町口 充
発行:2012年12月
更新:2013年5月

  
熊耳宏介さんSTAND UP!! の運営委員長を務める熊耳宏介さん

35歳までにがんにかかった若い人たちが集まってつくったのが「STAND UP!!」。中高年のがんとは違って、若年や思春期のがんの患者さんには学業や就職、結婚などの悩みが尽きず、治療法も異なる場合があります。患者さんたちに「1人で悩まないで」と呼びかけるとともに、「若年性のがんのことをよく知ってほしい」と訴えています。

ガマンすれば治るはずが白血病が再発

「STAND UP!!」(代表・松井基浩さん)は、35歳までにがんにかかった若年性のがん患者による、若年性がん患者のための団体。2009年にスタートしましたが、当初数人だったメンバーが今年9月には150人を超すまでになり、フリーペーパーを発行するなど多彩な活動を行っています。

運営委員長を務める熊耳宏介さん(30歳)が、がんを発症したのは2000年7月、17歳の高校3年のとき。スポーツが得意で体力に自信があった熊耳さんは、突然、体調を崩して入院。詳しく調べた結果、急性リンパ性白血病とわかりました。

入院して抗がん剤治療を受け、病気を克服。2年ぶりに高校に復学し、大学にも進学しました。

「ところが、ようやくすべてが元通りになり、大学生活も楽しく、病気が思い出の1つになりつつあったころ」(熊耳さん)、再発。大学1年の21歳の秋のことでした。

「初発のときは、2年間ガマンして治療すれば治ると信じて頑張れましたが、再発したときは『またなのか』と、治療に向き合う気力が出ませんでした。もっと強い治療になるだろうし、『治療しても治らない』という気持ちが膨らみました。すべてがいやになって、『生きている意味なんてない、どうやって死のうか』と思った時期さえありました」

闘病には仲間が必要

2012_12_13_02

現在、3号までを刊行したフリーペーパー。全国のがん診療連携拠点病院や小児医療センターなどに置かせてもらっている。2号まではウェブサイトからダウンロードも可能

そんな熊耳さんに声をかけたのが、初発のときに同じ病棟に入院し、同じくがんが再発して入院していた友人でした。

「とても明るいヤツで、『熊ちゃんも再発しちゃったの? 俺なんか脚がなくなっちゃったよ。でも、脚が1本ぐらいなくても意外と何でもできるよ!』と笑いかけてきました。それを聞いてこっちも笑ってしまって、自分はなんてバカだったんだろうと思ったんです。脚がないのにこれだけ明るいヤツがいる。それだったら『どうせ治らない』と落ち込むのではなく、入院生活を続けるなら明るく、楽しく、笑っていようと思えるようになりました」

それは、病気に向き合うときには仲間が大事だなと、熊耳さんが実感した瞬間でした。

このとき、たまたま同じ病院に、悪性リンパ腫の治療のため、松井基浩さんが入院していて友達になりました。松井さんは、「がん患者には夢がある」というコミュニティをつくって何かやろうと呼びかけていました。これは、「がんになっても決して終わりではない。諦めることなく、夢をもって生きていこう」という思いから。闘病中で挫けそうなとき、夢を語る仲間に励まされ、互いに励まし合った経験から生まれた思いです。

同じ思いをもつ熊耳さんも、この呼びかけに加わりました。これが、若年性がん患者団体「STAND UP!!」の始まりです。そしてまずみんなで取り組んだのが、フリーペーパーの発行でした。

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