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患者と医師とで情報を集め共有するサイト「血管肉腫と闘うために」からの呼びかけ

より早く、より適切な治療を!「血管肉腫」を知ってほしい

取材・文●池内加寿子
発行:2012年11月
更新:2013年4月

  
山本正隆さんインターネットサイト「血管肉腫と闘うために」を立ち上げた山本正隆さん

「血管肉腫」は、おもに頭部皮膚に発生する稀少な悪性腫瘍だ。早期発見が大切だが、数少ない病気であるがゆえに専門医が少なく、診断が遅れがちになる。また、治療法が確立していないため、医療機関によって治療方針が異なることも患者さんを惑わせる。こんな状況を改善する解決策は? 患者さんと専門医が連携して立ち上げた交流サイト「血管肉腫と闘うために」は、解決への手がかりになりそうだ。

希少な病気なために専門医にたどりつけない

■写真1 血管肉腫の腫瘍部分の1例
■写真1 血管肉腫の腫瘍部分の1例

血管肉腫といわれる悪性腫瘍群のなかには、リンパ管肉腫も含まれる。血管肉腫は腫瘍からの出血症状が特徴的だが、リンパ管肉腫は透明なリンパ液の流出やむくみが特徴としてみられる。いずれも頭部の皮膚によく発生するが、他の部位の皮膚や臓器にもみられる。進行すると皮膚以外の臓器にも発症して、症状が悪化する

血管肉腫は、血管やリンパ管に発生し、おもに高齢者の頭部や額などの皮膚に紫斑や紅斑となって現れる悪性腫瘍だ(写真1)。

打撲等の刺激が発症の原因になるともいわれ、異常な毛細血管が増殖して出血や潰瘍を伴うことも多い。進行が早く、治療が難しいので早期発見が大切だが、頭髪等に隠れていると見つけにくい。そのため、発見されたときには進行して肺や肝臓などに転移していることもあり、治療が難しくなる原因となる。

2010年に、医療者と共同で、この疾患の情報普及を目指し、インターネットサイト「血管肉腫と闘うために」を立ち上げた山本正隆さん(78歳)は語る。

「発症者が数少ない難病であるがゆえに、専門医も情報も限られています。知識をもつ皮膚科医が少ないために、見逃されがちで、患者さんが適切な専門医療機関にたどりつくまでに時間がかかる。これがこの病気の問題なんです」

病院を巡っている間に悪化してしまう例も

山本さんが専門医にたどり着くまでの紆余曲折の過程は、病気の情報が少ないために苦労する患者さんの典型例だ。

血管肉腫を山本さんが発症したのは、2005年3月のこと。

「額にできた小豆粒ほどの紫色のアザが大きくなり、色も濃くなってきたので、4つの医療機関で6人の皮膚科医にかかりましたが、血管肉腫と診断されるまでに3カ月もかかりました」

当初は、近所の皮膚科医に処方された軟膏を塗っていたが効き目がなく、アザがふくらんできて水疱になった。次にかかった総合病院で「悪性の恐れ」が急浮上し、受診を勧められた大学病院で病理検査の結果、「血管肉腫」の可能性が強まった。さらに、この病気を専門とする北里大学病院皮膚科臨床教授(当時)の増澤幹男医師を訪ねると、「血管肉腫に間違いない」と診断され、急遽入院となった。

「そのころには出血もあり、もっと早く病名がわかっていれば病状も進行せずに治療を受けられたのではないかと思いました」と、山本さんは歯がゆい思いを語る。しかし、多く患者さんの実情は、さらに厳しいのだ。

「私の場合は、北里大学病院に縁のある総合病院をたまたま訪ねたことなど、幸運が重なり、専門医の診断を受けるまでの期間は、これでもかなり早いほうだったのです」

実際、専門医療機関で治療を開始するまでに時間がかかり、病状を悪化させてしまう患者さんも少なくない。希少疾患に共通の問題だが、打開されるべきだと山本さんは話す。

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