着実なドナー確保と安全で公平な移植に期待

造血幹細胞移植新法の運用に患者・ドナーの声を反映させよう

取材・文●町口 充
発行:2013年4月
更新:2013年7月

  
同理事長の中野勝博さん
全国骨髄バンク推進連絡協議会事務局長の菅早苗さん

全国骨髄バンク推進連絡協議会
所在地:東京都千代田区東神田1-3-4 KTビル3階
電話:03-5823-6360
E-mail:office@marrow.or.jp
http://marrow.or.jp

昨年の国会で、「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」が可決されました。この法律は、白血病などに有効な造血幹細胞移植を円滑かつ適正に推進するのが目的です。しかし成立した法律はあくまで骨子であり、具体的な運用はこれからの論議にかかっているため、市民団体などは、患者やドナーの声を届けて新法に反映させようと動き出しています。

ドナー確保が必須課題

かつては不治の病といわれた白血病などの血液がんは、骨髄移植や臍帯血移植といった造血幹細胞移植によって多くの命が助かるようになってきました。

造血幹細胞とは血液のもとになる細胞のことです。移植に用いるものとしては骨の中にある骨髄、出産後のへその緒および胎盤から採取する臍帯血があり、最近は、全身を流れる血液中の造血幹細胞を薬で増やしてから採取する末梢血幹細胞も利用されるようになってきました。

造血幹細胞移植を行うにはHLA(白血球の型)が一致するドナー(造血幹細胞提供者)が必要です。兄弟・姉妹といった血縁者にドナーがいればいいのですが、いない場合、非血縁の一般の人たちの中からドナーを探さないといけません。

そこで、広く一般からドナーを探し、その人と患者さんを結びつける斡旋の役割をしているのが、「日本骨髄バンク(骨髄移植推進財団)」と、全国に8つある「臍帯血バンク」です。

ようやくできた法律

バンクは造血幹細胞移植を行うのに不可欠なのですが、これまで日本にはその根拠となる法律がなく、厚生労働省からの通達で日本赤十字社の支援を受けながら、善意に支えられて運営されてきました。移植のニーズがさらに高まるなかで、国の責任によって造血幹細胞の提供促進を図る必要があり、法整備が欠かせないとして、2012年9月、議員立法により新しい法律が制定されたのです。

全国骨髄バンク推進連絡協議会菅早苗事務局長は、次のように語ります。

「やっとできた法律ですが、私たちからすれば不十分な内容です。ただし、具体的な政令などは公布の日(2012年9月12日)から1年半以内に決める、と定められています。法律の運用が、少しでも患者さんやドナーの声を反映したものになるようにしたい。これからが正念場です」

国の責任をうたっているが…

同協議会は、骨髄バンクの普及啓発を行う全国のボランティア団体が集まってつくったNPO法人です。協議会は、国の責任を明確にした法律の制定を何年も前から要望してきました。それが昨年春、超党派による議員立法のかたちで法制化する動きが明らかになったのです。

法案を見た協議会は、「患者さんに造血幹細胞が提供されるまでではなく、元気に社会復帰を果たせるまでを見据えた法律にしてほしい」など、具体的な要望を出しました。ところが、結局は当初示された案とほぼ同じ内容のまま可決されました。

成立した法律では、造血幹細胞の適切な提供の推進に関して、基本理念を示すとともに国やバンクなどの責務を明らかにし、国民の理解の増進や情報提供、バンクの安定運営などを国の施策として規定しています。

また、バンク事業を許可制とし、ドナーの健康保護、品質確保に関する基準の遵守など業務遂行上必要な義務を課す条件が盛り込まれています。さらに、バンク事業を支援する機関を1カ所に限り指定するとしています。この支援機関には、日本赤十字社が想定されています。

「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律(造血幹細胞移植推進法)」の概要

移植に用いる造血幹細胞(骨髄・末梢血幹細胞・臍帯血)の適切な提供の推進に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及び移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する施策の基本となる事項について定めるとともに、骨髄・末梢血幹細胞提供あっせん事業及び臍帯血供給事業について必要な規制及び助成を行うこと等により、移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進を図り、もって造血幹細胞移植の円滑かつ適正な実施に資する。
(第1章第1条より)

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