「がんと診断されたときから、在宅ケアの情報を」と訴える兵庫県の市民運動

安心して家で療養するために在宅、緩和ケア体制の充実を

取材・文●増山育子
発行:2013年6月
更新:2013年9月

  
「ひょうごがん患者連絡会」事務局長の田村美生夫さん
2013_06_10_02会長の黒田裕子さん
2013_06_10_03理事の武内務さん

ひょうごがん患者連絡会
会長:黒田裕子
所在地:〒651-2109 兵庫県神戸市西区前開南町1-2-1 
阪神高齢者障害者支援ネットワーク内
TEL:078-976-5050  FAX:078-977-0224
http://hyogo-capa.net/


2006年6月に制定された「がん対策基本法」に基づいて翌年に策定されたのが、「がん対策推進基本計画」。各都道府県には、これを踏まえた独自の計画の策定が義務づけられ、がん対策が総合的・計画的に進められてきました。2012年に国の基本計画が見直されたのに伴い、各都道府県でも市民の声を反映したがん対策推進計画の改定が行われています。兵庫県で要望案をつくってきたのが、「ひょうごがん患者連絡会」です。

がん対策推進計画の策定に患者の声を届ける

2012年6月に策定された新しい「がん対策推進基本計画」(以下、基本計画)では、がん診療連携拠点病院(以下、拠点病院)や緩和ケア体制のさらなる整備や、がん患者さんの就労問題、小児がん対策という、新たな課題の推進が盛り込まれました。それに伴い、各都道府県でも推進計画の改定が進められてきました。

「ひょうごがん患者連絡会(以下、連絡会)」は、兵庫県のがん対策推進計画にがん患者の声を反映させるべく意見書を提出したり、県当局との協議を重ね、県の審議会の委員として意見を述べるなどの活動をしてきました。

連絡会の意見はがん医療全般にわたっていますが、今回の新しい基本計画に盛り込まれた「在宅ケア・緩和ケア」にとくに力を入れています。

在宅療養を後押しする制度の実現へ

2012年秋、「がん政策サミット」に出席した連絡会のメンバーたち。各県の取り組みについて情報交換

現在、国の施策は、医療・介護の再編構想に基づいて「病院から在宅へ」と移行する方向に進んでいます。近年はとくに、がん患者さんの高齢化が顕著になってきており、在宅医療・介護サービスへのニーズが高まり、在宅療養中の患者さんが安心して生活できるしくみをつくることは緊急の課題です。

在宅療養支援に積極的な診療所を優遇する制度として、すでに2006年に「在宅療養支援診療所」が設けられました。この診療所には、他の診療所や病院、訪問看護ステーションなどと連携して、24時間体制の往診や急変時の入院先を確保しているなどの要件を満たす施設が認定されます。

連絡会事務局長の田村美生夫さんは話します。

「実際にその役割を果たせているのは、全国的にみて2割くらいだと言われています。せっかく在宅療養支援診療所ができたのだから、もっと活用を促さなければと、対策案を県にくり返し出してきました」

さらなる制度として、2012年には上記の在宅療養支援診療所に24時間365日の対応を確実に行う「機能強化型」という区分が新設され、緊急往診や在宅での看取りを行える施設が認定されるようになりました。

2012年11月現在、兵庫県には812カ所の在宅療養支援診療所があり、そのうち機能強化型在宅療養支援診療所は191カ所です。ただし現状の問題点として、どの診療所が強化型の在宅診療を行っているかが、一般の患者さんにはわかりにくい点が挙げられます。

「がんになったときから在宅時にもかかれる医師を見つけておくと安心です。病院から在宅への移行が進むなかで、信頼できる〝在宅かかりつけ医〟を見つけるために在宅療養支援医療機関の情報が必要です。そこで県下の強化型在宅療養支援診療所を県ホームページに公表してほしいと要望しています」(田村さん)

連絡会会長の黒田裕子さんは、「拠点病院などのがん診療専門病院が果たす役割も大きい」と話します。

「患者さんが退院するときに、病院側から、在宅療養に必要な情報が提供されるようにすべきです。一通りの情報や制度がここで伝えられれば、支援が必要となった際に情報にアクセスしやすくなり、家族の負担も軽減できます」

在宅療養支援診療所制度「機能強化型」区分=3人以上の専任医師が常駐する「単独型」、または1医療機関が核となり10医療機関までが連携して、緊急往診や在宅看取りを行う「連携型」などがある

がんと診断されたときから在宅の情報を

連絡会が3月16日に企画した在宅療養支援体制シンポジウム「がんでも自分らしく、わが家で過ごすために」。病院、および診療所医師や訪問看護ステーション関係者、行政担当、患者などさまざまな立場のパネリストの発言をきっかけに会場ではまざまな意見が交わされた

終末期こそ、自宅で過ごしたいと考える患者さん・ご家族は増えています。それを実現するために、同会では「拠点病院に緩和ケア外来、在宅緩和ケア支援センターが必要である」と、前期の兵庫県がん対策推進計画を策定するときから要望してきました。

しかし、現状では、緩和ケア外来は県下1病院で週1回診療、在宅緩和ケア支援センターも1病院のみであり、十分に機能しているとは言えません。

今回の基本計画改定では、「がんと診断されたときからの緩和ケアの推進」が掲げられています。それを受けて県は、「3年以内に、拠点病院を中心に、(中略)緩和ケアチームや緩和ケア外来などの専門的な緩和ケアの提供体制の整備と質の向上を図る」ことを目標に組み込みました。

県内には、すでに4施設で緩和ケア病床が設置されています。しかし、今後、在宅療養の患者さんが急増したときのための対策が迫られています。そこで、連絡会では、実践案として次のような提案をしています。

①全ての地域がん診療連携拠点病院に「緩和ケアセンター」を設置し、地域全体の緩和ケア診療体制の構築を支援する。

②2017年度までに、すべての地域がん診療連携拠点病院に緊急緩和ケア病床または緩和ケア病棟を設置して、地域の在宅療養患者の症状の急変や難治性症状に対応できる体制の強化を図る。

「県は、『当面は県のがん診療連携拠点病院に設置する予定として検討していく』と回答するに留まっていますが、地域の要望を反映して、なるべく早期に多くの施設で設置されることを望みます」(黒田さん)

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