BCG治療による影響は

回答者・亀山周二
NTT東日本関東病院泌尿器科部長
発行:2014年5月
更新:2014年8月

  

膀胱がんのT1期で内視鏡的切除(TUR)でがんを取ることができましたが、再発の可能性があるため今後も治療を続けると言われました。再発を非常に心配しています。

BCGを膀胱内に入れる治療をするそうなのですが、再発はどのくらい抑えられるのでしょうか。また、BCGは結核菌とのことで、小さい子供がいるのでトイレの使い方などに不安を感じています。

(43歳 男性 静岡県)

BCGは再発防止に高い効果。人には影響なし

NTT東日本関東病院泌尿器科部長の亀山周二さん

ご相談者の場合、深達度はT1ということですので、筋層非浸潤がんに相当します。早期がんの範疇に入りますので、まずはご安心ください。

こうした表在性がんは進行する可能性は低いとは言えますが、1度膀胱がんを内視鏡的に切除しても、多くは1~2年間の間にまた膀胱内に腫瘍が再発してきます。先ほどの腫瘍のタイプにより、低リスク群には、Taで低異型度の人が相当します。

一方、高リスク群には、T1で高異型度の人が相当します。リスク別に内視鏡的切除後の治療方針が決められます。低リスク群では、内視鏡切除後に抗がん薬(アドリアシン、マイトマイシン)の注入を1回のみ行います。高リスク群ではBCG注入療法を選択されることが多くなっています。

BCG菌を膀胱内に注入することで、免疫能が上がること、また膀胱炎が起こり、粘膜表面が炎症を起こすことによってがん細胞が脱落すること、などにより抗がん効果を生み出していると言われています。

最近では、とくに再発および進行リスクの高い群には、最初の内視鏡切除後の2カ月以内に再度の内視鏡切除が推奨されています。これは「セカンドTURBT」と呼ばれています。腫瘍の取り残しや筋層浸潤が見逃されている可能性があるためです。これだけでも再発を約半分近くに抑えることができていると言われています。

一般的な内視鏡的切除のみの場合には、再発率は約70%であり、多数の人が再発します。一方、BCGの注入を行いますと、11~27%と再発率が低くなります。つまり、BCG注入により、50%以上は確実に再発を抑えることが可能になります。

BCG菌の注入は、通常毎週1回ずつ、計6回または8回ほど行います。BCGの膀胱内注入後、2時間溜めておき、それから排尿します。この尿は、院内で消毒薬と混ぜて処理されます。BCG菌を注入して、2週間後には排尿すると大部分の菌はなくなります。尿中には微量の菌が1週間過ぎても残ることはありますが、数週間以内にはほぼ検出されなくなります。

このBCGによる治療の副作用としては、膀胱炎が必発することです。治療開始後、2~3回目で排尿痛、また発熱があります。

使用しているBCG菌は、ヒトに肺結核を起こすヒト型結核菌ではなく、ウシ型結核菌で弱毒性です。このBCG注入は日本でも1980年代から開始されており、長期間にわたる実績のある治療法です。ヒトからヒトへの感染はなく、また報告もされていません。したがって、子供さんとの接触の仕方においても、これまでと変わらないことで問題ありません。トイレ、入浴においても格別な注意はありません。

アドリアシン=一般名アドリアマイシン マイトマイシン=一般名マイトマイシンC

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