腎臓に負担少ない抗がん薬はないか

回答者・古賀文隆
都立駒込病院腎泌尿器外科医長
発行:2015年1月
更新:2015年12月

  

尿管がんで右の腎臓も併せて摘出しました。その半年後に肺に転移していることがわかり、ジェムザールとパラプラチンの抗がん薬治療を始めました。しかし、ジェムザール投与のあと白血球が減ったということで、2回目のパラプラチンができない状態が続いています。私が心配なのは腎臓の機能です。クレアチニンの値は1.6で透析はまだ必要ないと言われていますが、腎臓に負担がかからないもっといい抗がん薬はないでしょうか。

(78歳 男性 東京都)

全身化学療法は必須 薬剤選択はありうる

都立駒込病院腎泌尿器外科医長の
古賀文隆さん

まずは、抗がん薬の位置づけから説明します。尿管がんや膀胱がんを総称して尿路上皮がんといいます。尿路上皮がんが肺などの遠隔臓器に転移した場合は、病気を全身疾患と捉えて、抗がん薬による全身化学療法を行うのが一般的です。

全身化学療法はがんの進行を遅らせることが主目的ですが、薬がとてもよく効いて、肺転移病変が手術や放射線で治療可能という状態になるケースもありえます。そのときは完治も望めますが、確率は高いとは言えません。

さて、相談者のケースは手術後に肺に転移したという状況で、全身疾患と捉えなければなりません。治そうという意図を持った治療は全身化学療法しかないのです。

ジェムザールとパラプラチンの併用化学療法では、ジェムザールを1日目に投与し、2日目にパラプラチン、そして8、15日目にジェムザールを投与します。パラプラチンを2回投与することは一般的ではありません。白血球や血小板が投薬基準値を下回る場合は薬剤投与を中止します。

クレアチニンの値1.6は片方の腎臓を切除した場合には許容範囲です。透析の必要はないけれど、数値は高いという状態です。

今回の併用化学療法も「腎臓にやさしい」という理由で選択されたものと思います。通常はジェムザールとシスプラチンを使うのですが、シスプラチンは腎機能が悪い方には使えないので、代替としてパラプラチンが使われるのです。パラプラチンは、シスプラチンと同じプラチナ製剤と呼ばれる種類ですが、腎機能に負担をかけにくいという特徴があります。ちなみに、最も負担が小さいのはアクプラですが、保険適用がありません。

さらに腎臓にやさしい抗がん薬の選択はあるかというご質問ですが、最近注目されているのが、ジェムザールとタキソールの併用です。保険が適用されます。ともに排泄経路が腎臓系ではなく肝臓・胆道系主体であるために腎臓に負担をかけないのです。

しかし、今切り替える必要があるかは、ご質問内容だけでは判断できません。ファーストラインの化学療法をしたが反応がない場合、セカンドライン、サードラインでタキソールを使うのが一般的です。腎機能が悪い場合にも選択肢の1つとなり得ると思います。

ご自分の気持ちや疑問、今後のライフスタイルなどについて、改めて相談されることをお勧めします。

ジェムザール=一般名ゲムシタビン パラプラチン=一般名カルボプラチン アクプラ=一般名ネダプラチン
タキソール=一般名パクリタキセル

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