リンパ節転移のある膀胱がん。化学療法後の治療は

回答者・古賀文隆
がん・感染症センター都立駒込病院腎泌尿器外科部長
発行:2016年8月
更新:2016年7月

  

父(72歳)が膀胱がんと診断され、内視鏡下手術を受けたところ、上皮内がんを伴うT1(粘膜下層浸潤のある)膀胱がんとのことでした。その後BCG膀胱内注入療法を行う予定だったものの、直前の画像診断でリンパ節転移が判明し、BCG膀胱内注入療法の代わりに化学療法(GC療法:ゲムシタビン+シスプラチン)を行い、リンパ節のがんは小さくなりました。今後の治療法はどのようになるのでしょうか。また、リンパ節に再発する可能性は高いのでしょうか。

(48歳 女性 大阪府)

膀胱全摘術+リンパ節郭清 または膀胱温存療法も選択肢

がん・感染症センター都立駒込病院
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん

リンパ節転移のある膀胱がんは、全身的な疾患として捉えなければなりません。導入治療として全身化学療法を行い、治療効果が得られれば、根治的治療として転移リンパ節を含む病巣切除を行うという治療方針が、現在最も根治性が高いと考えられています。つまり、膀胱全摘術+リンパ節郭清が標準的な根治的治療ということです。

現在の膀胱内の病変は上皮内がんだけかもしれませんが、がん細胞が膀胱粘膜から膀胱外のリンパ節までたどりついた経路にも存在し得ることを考えると、リンパ節と周囲組織を含めて膀胱を全摘する治療が最も確実な治療法と言えます。

しかし、膀胱の全摘は尿路変向を伴い、術後のQOL(生活の質)が低下するため、患者さんの希望があれば膀胱温存療法(リンパ節郭清±化学放射線療法+BCG膀胱内注入療法)という選択肢もあり得ます。どちらを選択するかは、担当医とよく相談されてください。

今後の再発部位として、リンパ節郭清をした範囲のさらに上流のリンパ節再発の可能性が最も高いと思われます。転移のあったリンパ節の病理組織検査の結果、化学療法によってがんが消失していれば、5年生存率は7割前後と良好な経過が期待されるので、追加療法は不要と思います。

しかし、がんの残存が認められた場合は、術後補助化学療法を行ったほうがよいと考えます。

ゲムシタビン=商品名ジェムザール シスプラチン=商品名ブリプラチン、ランダ

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