膀胱全摘術後に行う尿路再建で、再発率の低い方法は?
トイレに立ったら、突然血尿が出ました。コーヒー色で異様な感じでした。痛いとかの自覚症状はありませんでした。気になって、近くの診療所で診てもらったところ、精密検査が必要と言われました。紹介先の病院に入院して、尿道膀胱鏡検査などを受けた結果、筋層に浸潤する腫瘍とのことでした。膀胱全摘術を提案されています。全摘手術のあと、尿路を再建するとのことです。再建法にはいくつかあるようですが、手術後の日常生活に負担がかからなくて、再発率の低い方法を選びたいと思います。アドバイスをお願いします。
(神奈川県 男性 66歳)
A 再発率の低い方法は、回腸導管と自己導尿型代用膀胱
膀胱全摘の手術後は、新たな排尿機能を作らなければなりません。尿路再建法は大きく3種類あります。
最近、患者さんから人気がある再建法は、自排尿型代用膀胱(新膀胱)です。小腸の一部を60センチほど利用して、袋状の代用膀胱を作り、これを尿道につなぎます。自然の膀胱にもっとも近い形に再建できます。ストーマという排尿のための出口と体外装具をつける必要がないため、ボディイメージのよいところが長所です。ただ、神経がつながっていないため、尿意を感じることはありません。括約筋を緩め、お腹に力を入れて、排尿をするようにします。こうした排尿の方法を身につけるには、一般的に2~3カ月間の訓練が必要です。失禁が起こりやすい方もいます。100パーセント完全ではありませんが、もちろんうまく排尿できるようになります。
新膀胱は、尿道を残すことを前提にした再建法です。(1)膀胱の再発を繰り返してきた方(2)尿道の中に広範囲にがんが発生している場合(3)尿道と前立腺がつながる後部尿道、前立腺部尿道にがんが及んでいる場合――には、尿道再発のリスクが高くなりますから、安全第一であれば、他の尿路再建法にしたほうがよいと思います。
2つ目の再建法は、回腸導管法です。小腸の一部の回腸を15センチほど切り離して、尿管をつなぎ、導管の一方をふさぎ、もう一方はその先端をお腹の外に出して、ストーマを作ります。その際、尿道は切除します。これは従来から行われていて、もっとも一般的な方法です。ストーマにビニール袋のような採尿用具をつけて、その袋に尿をためます。ただし、4~5日ごとに採尿袋の交換などのケアが必要です。
3つ目は、自己導尿型代用膀胱です。1つ目の新膀胱のように、小腸か大腸の一部を利用して体内に代用膀胱を作り、その際、やはり尿道は切除します。
腹部にストーマを作り、そのストーマから代用膀胱に細い管(カテーテル)を入れて排尿します。尿を垂れ流すというわけでなく、ある程度尿をためて、いっぱいになったらカテーテルを使って、排尿します。
ストーマに採尿具をつけないので、見た目によいですし、ストーマにガーゼや絆創膏を貼れば、わかりません。公衆浴場でも目立ちませんし、海水浴もできます。性生活にもあまり邪魔にはなりません。
ただし、カテーテルが入りにくくなったり、1日に6~7回に及ぶカテーテルを用いた排尿が面倒になったり、合併症が多いという短所もあります。ストーマをさらに目立たなくするために、代用膀胱をおへそにつなぐ方法もあります。この方法なら絆創膏を貼る必要もありません。
再発率の低い方法を選びたいとのことですが、尿道再発のリスクが無いのは、尿道を切除する、回腸導管と自己導尿型代用膀胱です。自排尿型代用膀胱では、残した尿道に、がんが再発するリスクがあります。全身的な転移、局所再発は、どの再建法でもリスクは同じです。これらのことを考えて、担当医とよく相談されたうえで、再建法を選んでください。