進行した膀胱がんに有効な治療法は?
71歳の父のことでご相談します。1年半前に膀胱がんと診断され、すでに鼠蹊部のリンパ節に転移していました。内視鏡手術後、ジェムザール*とシスプラチン*併用の化学療法と放射線療法をしたところ、CT検査の結果、膀胱内がきれいになり、リンパの腫れも3分の1程度にまで縮小していました。昨年の春からUFT*を飲み始めましたが、半年前に鼠蹊部や頸部にしこりができました。前回放射線をかけていない部分に放射線をかけ、再度ジェムザール+シスプラチン併用の化学療法も行っていますが、リンパ浮腫も出てきました。今後どのような治療が可能でしょうか。
(大分県 男性 41歳)
A 副作用は強いが、別の化学療法という手もある
ご相談者のお父様が受けられたジェムザール+シスプラチン併用の化学療法は「GC療法」といって、進行している膀胱がんに対して最近第1選択とされている標準治療です。以前は、「M-VAC療法」が標準治療とされていました。これは、メソトレキセート*+エクザール*+アドリアシン*+シスプラチンの4剤併用療法です。GC療法とM-VAC療法の効果はほぼ同じですが、M-VAC療法に比べてGC療法のほうが副作用が圧倒的に少ないため、現在はGC療法が主流になっています。
お父様の場合、転移もしていた膀胱がんに対してGC療法と放射線療法を行って1度良くなったけれど、再発・転移してしまい、GC療法と放射線療法に再チャレンジしているということだと思います。リンパ浮腫が病気の進行によるものかどうかはわかりませんが、あと2クールほどGC療法を行い、それでも効果がないようならM-VAC療法を行ってみるという手はあると思います。
ただし前述したとおり、M-VAC療法の副作用は大変きついです。たとえば、重症の好中球減少の頻度にも大きな差があり、口内炎を含む粘膜炎も、GC療法では1パーセントほどの患者さんにしか現れないのに対し、M-VAC療法では22パーセントに現れます。
もう1つ、標準治療からは離れますが、ペプチドワクチン療法という方法があります。これは免疫療法の1種で、全国のいくつかの施設で膀胱がんに対する臨床試験が行われています。
しかし、HLAという白血球の型が適応していないと受けられないという制約があるため、誰でもできるわけではありません。また、患者さんの年齢やそれまで受けてきた治療内容など、それぞれの施設によって受けられる患者さんの基準が違います。臨床試験ですから治療費は無料だし、副作用が少ないというメリットもありますが、なかなか難しい面もあります。
*ジェムザール=一般名ゲムシタビン *シスプラチン=一般名 *UFT=一般名テガフール・ウラシル *メソトレキセート=一般名メトトレキサート *エクザール=一般名ビンブラスチン *アドリアシン=一般名ドキソルビシン