同種骨髄移植と末梢血幹細胞移植はどちらがよいか
45歳の夫が急性骨髄性白血病と診断されました。病型はM1(急性骨髄芽球性白血病)らしいとのことです。抗がん剤治療を受けて寛解*になりました。現在、体内に残存する白血病細胞を駆逐するための地固め療法を受けています。移植の適応になるとのことで、今後、移植を行う話も進行中です。幸い、兄弟にフルマッチのドナーが見つかりましたが、移植には同種骨髄移植と末梢血幹細胞移植とがあるようです。どちらがよいのか迷っています。両者の移植の違いについて教えてください。
(福井県 女性 43歳)
A 治療成績はほぼ同じ。どちらもメリット・デメリットがある
急性骨髄性白血病は、8つの病型(M0~M7)に分けられますが、M3(急性前骨髄球性白血病)は非常に特殊な病型です。M3以外の7つの病型は(1)予後が比較的よいグループ(2)中間のグループ(3)予後が悪いグループの3つに大別されます。いずれも最初に寛解を目的に化学療法を行います。
その後、(1)の場合には再発の危険が高いとか、再発したときには造血幹細胞移植を考えます。(2)(3)では一般的に移植を勧めています。ご主人の場合、すでに抗がん剤治療を受けて寛解となり、地固め療法を受けていて、M1らしいとのことですから、(2)のグループに入ると思います。現時点での移植をお勧めします。
造血幹細胞移植とは患者さん(宿主)の骨髄を破壊した後に、提供者(ドナー)の造血幹細胞を移植し、新たな造血システムを再構築する治療法です。骨髄移植と末梢血幹細胞移植、臍帯血移植の3種類がありますが、成人を対象にした移植では骨髄移植と末梢血幹細胞移植が中心です。両者を比較してみますと、患者さんに関しては、末梢血幹細胞は骨髄移植よりも回復が早いというメリットがありますが、移植後に起きる慢性GVHD*(移植片対宿主病)が重症化しやすいなどのデメリットもあります。治療効果はほぼ同じと考えられます。
提供者に関して言えば、両者では採取の仕方が異なります。骨髄移植では手術室で、全身麻酔をかけて骨髄から造血幹細胞を採取します。末梢血幹細胞移植では提供者に顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)という薬剤を注射して、骨髄中の幹細胞を血液中に導き出してから成分採取装置を用いて採取します。どちらも提供者に多少の危険が伴い、そのリスクはほぼ同じと考えられます。なお、骨髄移植にはドナー対象の傷害保険がありますが、末梢血幹細胞移植には今のところ傷害保険制度がありません。現在、国内では骨髄移植と末梢血幹細胞移植の無作為化比較試験*が行われており、協力者を募集しています。2つの移植の違いや比較試験について、主治医からよく説明を受けて選択してください。
*寛解=永続的、一時的を問わず臨床的に症状が消失または検査成績が好転する状態(白血病の場合)
*GVHD=移植された骨髄中のリンパ球が患者の身体を異物として認識し、免疫学的に攻撃すること
*無作為化比較試験=患者を無作為に2群に振り分けて治療法を比較する臨床試験