粘液型の脂肪肉腫。手術後は経過観察だけでよいか
痛みはとくになかったのですが、左膝の裏側が膨らんだため、整形外科医院を受診しました。その後、大学病院で本格的な検査を受けると、脂肪肉腫と診断されました。タイプは粘液型で、幸い肺などに転移は見つかりませんでした。主治医からは、手術で肉腫を切除し、その後は経過観察になると言われています。粘液型の脂肪肉腫は、それほど悪性度が高くないと説明を受け、少しホッとしていますが、手術の後、経過観察だけで本当に大丈夫なのか不安です。抗がん剤治療などは必要ないでしょうか。
(栃木県 51歳 男性)
A 多くの場合、抗がん剤治療や放射線治療は不要
脂肪肉腫は軟部肉腫の一種です。軟部肉腫の治療法は共通した部分が多いため、まず軟部肉腫に対する一般的な治療法に関してお答えします。
転移の認められない軟部肉腫の患者さんに対しては、原発巣の手術(広範切除術)が最も重要な治療です。この手術を適切に行うことにより、軟部肉腫の60~80パーセントは治癒します。そうしたこともあり、全ての軟部肉腫に対して抗がん剤治療を行うことは一般的ではありません。
しかし、転移しやすく、悪性度の高い軟部肉腫に対しては、抗がん剤治療も行ったほうがよいのではないかという専門家の意見もあります。ただし、この意見にも未だ十分なエビデンス(科学的な根拠)があるわけではありません。
粘液型の脂肪肉腫は、ご本人もお書きのように、基本的には悪性度の高くない軟部肉腫に分類されるため、抗がん剤治療は基本的には推奨されません。しかし、まれに悪性度の高い粘液型脂肪肉腫もあるため、その場合には担当の医師とよく相談して抗がん剤治療を検討されるのもよいと思います。
また、放射線治療は手術で腫瘍を十分に切除できなかった場合に有効と考えられています。しかし、放射線治療を行うと、患肢の腫れやリンパ浮腫、皮膚の萎縮、骨折など、いろいろな障害や副作用が起こるリスクが高まります。そうしたリスクと再発抑制の効果を勘案して、受けるかどうかを検討されるとよいと思います。手術で腫瘍を十分に取り切れたのであれば、多くの場合、放射線治療は必要ありません。