平滑筋肉腫が転移・再発。何かよい治療法は?
夫(75歳)のことでご相談します。夫は後腹膜腫瘍のため、おととしの7月に手術を受けました。腫瘍は十二指腸と尿管・腎臓のあたりに食い込んでいて、それぞれ約7センチと約5センチ、切除してもらいました。平滑筋肉腫との診断でした。その後、おととしの12月に、右肺と臀部への転移が確認され、また手術を受けました。去年の7月には、後腹膜の原発部位への腫瘍の再発が認められ、放射線治療を受けました。さらに今年の3月には、右肺と右の臀部に腫瘍が認められ、これ以上の治療はないと言われました。そして、対症療法をしてもらうようにと、近くの診療所への紹介状をもらいました。45歳頃から、めまい、じんましん、呼吸苦の既往症があります。カンジタ菌が肺にいると言われ、薬を飲んでいました。現在は、30分ほど歩くと、脚に痛みが出て、呼吸も苦しくなるなどの症状があります。何かよい治療法はありませんか。
(熊本県 女性 72歳)
A 支持療法・緩和療法を受けるという選択肢もある
お手紙からは、後腹膜平滑筋肉腫の局所再発と多発遠隔転移を起こしている状態と考えられます。
こうした状況の患者さんには、一般的には、まず抗がん剤による全身治療が考慮されます。具体的には、アドリアシン(一般名ドキソルビシン)とイホマイド(一般名イホスファミド)のいずれか、あるいは両方が第1選択の薬です。これらのほかに、ベプシドまたはラステット(一般名エトポシド)を使うこともあります。
しかし、75歳という年齢や肺に基礎疾患があることなどを考えると、効果が現れるほどの抗がん剤を投与できるのかという問題があります。大量の抗がん剤を投与して、強い副作用が現れ、そのことでかえって体力を落としてしまうことも危惧されます。
抗がん剤治療のほかには、手術と放射線治療が考えられますが、いずれも局所治療です。放射線治療だけで腫瘍を消失させるのは極めて困難ですし、手術で腫瘍を取り切れたと思っても、この方の場合は、目には見えない腫瘍が残っている可能性はかなりあると考えざるを得ません。
現状では、無理に肉眼的な根治をめざすよりも、症状の緩和や精神的なサポートを主な目的とした支持療法・緩和療法を主軸に考えるのが最もよい方法かもしれません。一見消極的に感じられても、結果的にはそれが最も長くよく生きることにつながる可能性は十分あるように思います。