縮小手術をすれば、骨肉腫の治癒といえるか

回答者:川井 章
国立がん研究センター中央病院 整形外科医師
発行:2009年7月
更新:2013年11月

  

13歳の男児のことで相談です。ふくらはぎの骨に、骨肉腫ができました。骨肉腫による転移は、見られないとのことです。抗がん剤治療後に、腫瘍だけを摘出する縮小手術を予定しています。この縮小手術をすれば、骨肉腫は治癒したといえるのでしょうか。再発はないと考えてよいのでしょうか。

(福島県 女性 48歳)

A 手術と術前・術後化学療法の治療成績は向上している

骨肉腫の標準治療は、全身の抗がん剤治療(化学療法)と、腫瘍のできた骨と周囲の筋肉を一緒に切除する広範切除です。手術では、再発リスクを最小にし、しかも機能障害が最小となるような方法を担当医とよく相談して選ぶことが大切です。

化学療法はアドリアシン(一般名ドキソルビシン)、シスプラチン(一般名)、超大量メソトレキセート(一般名メトトレキサート)、イホマイド(一般名イホスファミド)の4種類の抗がん剤を組み合わせて行うのが一般的です。使用する抗がん剤の順番や、使用量は各施設によって多少異なります。

2~3カ月間の術前化学療法のあと、手術を行います。その後、術後の化学療法を5~7カ月間行います。適切な切除が行われた場合の局所再発率は10パーセント以下と考えられます。遠隔転移の生じる頻度が最も高い臓器は肺です。

治療終了後は最低でも5年間、できれば10年間外来で定期的にレントゲンやCT(コンピューター断層撮影装置)で経過を観察して、転移や再発のないことを確認する必要があります。

転移のない骨肉腫に対して、きちんとした手術とともに術前・術後の化学療法を行った場合、現在の5年生存率は70~80パーセントです。これらの治療体系が確立される前の5年生存率は20パーセント以下でしたから、骨肉腫の治療成績は近年かなり向上したといえると思います。長い目で見て、患者さんにとって最も大切なことは、最初からきちんとした治療をして、再発や転移の可能性を最も小さくすること、手術・治療によってどのような機能障害、長期的な問題が出現する可能性があるかを主治医とよく相談してください。

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