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断端陰性も再発が心配

回答者・上野貴史
板橋中央総合病院外科医師
発行:2013年10月
更新:2015年2月

  

乳房温存手術後の病理検査で、「胸の前の部分が0.3mmで断端陰性だけど、ぎりぎり取りきれた状態だ」と言われました。今後は放射線治療に入るそうです。腫瘍内科医からは、「陰性部分は皮膚面なので放射線治療できれいにできるし、再手術の必要もない」とも言われました。私としては、局所再発が怖いので、再手術もしくは全摘を希望しています。今後の治療法について教えてください。

(大阪府 女性 44歳)

A 再手術・全摘の必要はない

手術で切除した組織の辺縁や切り口を断端(margin)と言います。この断端にがん細胞が残っていないかどうかを病理医が調べます。この検査を断端検査と言います。術中に同じ目的で「術中迅速診断」を行うこともありますが、迅速凍結標本では像が粗く確実性に欠けるため参考程度にとどまり、術後の永久標本での検査が重要になります。

標本をきちんとオリエンテーションをつけた上で、断端が陰性か陽性の判断、最も断端が近い部位のがんの断端からの距離と、その浸潤巣、非浸潤巣の区別を評価します。

一般には切除標本の表面にインクで色をつけ、色のついた部分を断端とみなします。インクのついた部分にがん細胞がなければ断端陰性とみなします。がん細胞があれば断端陽性と判断し、その場合には断端が陰性となるまで追加切除(追加部分切除または全摘術)が必要です。

断端陰性としてから、高齢者を除き原則放射線照射を行います。

断端陰性でも2mm程度しか余裕のない場合(close margin)には追加切除を勧める報告もありますが、乳房全体への放射線治療のほかに、切除部分を中心に追加照射(ブースト照射)を加えることで対処することが多いです。

断端陽性でも部分的な場合(focal positive)は、追加切除せずにブーストで対処することもありますが、あまり勧められません。追加切除が安全です。

追加切除後に再び断端陽性と判断されたときは、再々手術になることも考えなければなりません。2回再切除をしても断端陰性とできない場合は、温存療法困難と判断して、一般的に乳房切除が行われます。

なお、断端が問題になるのは乳腺の腺組織(gland)での水平方向への進展です。

今回のケースのように腹側面や、後面の筋膜面(垂直方向)に関しては、乳管内進展とは無関係であり、断端の距離は問題ありません。

肉眼的に露出したようなケースでなければ、放射線治療で十分と考えられます。腫瘍内科医の意見に賛成です。

皮下脂肪がよほど少ない場合では皮膚の切除も考慮できますが、通常は再手術を行う必要はないと考えます。

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