HER2タイプ乳がんの皮膚転移。今後の治療法は?

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
発行:2013年6月
更新:2019年8月

  

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12年前に右乳房温存術(髄様がん・HER2陽性・腋窩リンパ節郭清)をしました。2年前、右乳房に再発(53歳のとき閉経)したため、ハーセプチン+タキソテール(3クール)、ハーセプチン+ナベルビン(4クール)の術前化学療法後に全摘をしました。現在、ハーセプチン単剤を投与中です。先日、PET検査をしたところ、皮膚転移が疑われると言われました。今後の治療法はどうなるのでしょうか?

(福岡県 女性 63歳)

A 通常の転移と同様、抗がん薬療法へ

まず第1に、PET検査の結果だけでは、偽陽性のこともあるため、組織学的な診断で、本当に皮膚転移かどうかを調べる必要があります。皮膚転移と確定診断がついたという仮定で、お答えしましょう。

乳房全摘後の皮膚転移は、小さな限局性のしこり以外の場合、全身再発とみなすことが妥当です。そのため治療も根治をめざすよりは、どちらかというと緩和、延命が目的となり、患者さんに適した方法を選び、QOL(生活の質)を保ちながら治療を行っていくようにします。

ホルモン治療をやってないことから、ホルモン感受性がないと考えられるためホルモン治療の適応はありません。

現在、ハーセプチン単剤による補助治療中であり、ハーセプチンへの感受性が落ちている可能性はありますが、抗がん薬と併用すればまだ効果がある可能性も高いと考えられます。

したがって、今後の治療法としては、ハーセプチン+抗がん薬による治療が一般的です。

併用する抗がん薬として、2年以上前の投与だったため、再度タキソテール、ナベルビンも可能でしょう。

その他にもタキソール、ハラヴェン、ゼローダなどがありますが、副作用が少なく脱毛もないことから、ゼローダがよいかもしれません。

ハーセプチンは継続したほうが良いとされています。ハーセプチン+抗がん薬が無効になった場合には、タイケルブ+ゼローダが有用です。ただ、皮膚への副作用が強いという欠点があります。

また、2013年2月にFDA(アメリカ食品医薬品局)が認可した、ハーセプチンとエムタンシンを結合させたトラスツズマブエムタンシン(T-DM1・一般名)は、奏効率が高く副作用も少ないため期待されています。現在、日本でも承認申請がされており、近々使えるようになると思われます。

いずれにせよ、治療法はたくさんあるため、担当医と相談をしながら自分に合った方法を選び、QOLを保つことが大切です。

ハーセプチン=一般名トラスツズマブ タキソテール=一般名ドセタキセル ナベルビン=一般名ビノレルビン タキソール=一般名パクリタキセル ハラヴェン=一般名エリブリン ゼローダ=一般名カペシタビン タイケルブ=一般名ラパチニブ

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