頭蓋咽頭腫で、受ける放射線療法の副作用が心配

回答者:牧本 敦
国立がん研究センター中央病院 小児科医長
発行:2008年1月
更新:2013年12月

  

7歳の娘(小学1年生)が脳腫瘍の一種である頭蓋咽頭腫と診断されました。良性の腫瘍なので、手術で腫瘍をすべて摘出できれば治る可能性があると言われ、手術を受けましたが、全摘できず、腫瘍が残ってしまいました。今後は放射線療法を受ける予定ですが、副作用や後遺症がとても心配です。どんな副作用や後遺症が予想されるでしょうか。それらを軽減する方法はあるでしょうか。また現在、視野障害が起きていますが、これは治るでしょうか。病気が完治して、長生きできるでしょうか。

(東京都 男性 37歳)

A 内分泌障害などが起こる。定位放射線療法などで軽減も

頭蓋咽頭腫とは、ホルモンの中枢である脳下垂体の近くに発生する良性の腫瘍です。脳腫瘍は悪性にしろ良性にしろ、閉鎖空間である脳の中にできるため、手術をしたり、放射線を当てたりすると、正常組織に何らかの影響を与えてしまいます。

この方は、手術で腫瘍を取りきれなかったということなので、脳下垂体とその周辺に放射線をかけることになると思います。放射線をかけないでいると、腫瘍が再燃(再増大)してくる可能性が高いと思われます。

放射線療法を行うと、副作用として、ホルモンの分泌障害(内分泌障害ともいいます)が起こる可能性があります。下垂体ホルモンは体の機能を正常に保つ働きを制御していますから、これに障害が起きると、全身のバランスを崩してしまい、日常生活に支障をきたす可能性も出てきます。

ただし、放射線療法は当然、しっかりした照射計画のもとに制限した線量を照射するので、副作用は最小限になるように工夫がされるはずです。

また、定位放射線療法などの新しい方法を行っている医療施設もあります。定位放射線療法では、放射線を病変の形状に正確に一致させて集中照射し、周辺の正常組織を温存して病変だけを治療することを目指します。

ホルモンの分泌障害が起きた場合には、ホルモン補充療法を行います。これによって、問題なく日常生活を送れるようになる可能性が高くなるでしょう。

視野障害は、腫瘍が視神経に触れて、血行障害が起きたり、神経細胞に何らかのダメージが与えられているために起きていると考えられます。

神経細胞は再生しないため、残念ながら、視野障害自体が回復する可能性は低いと思います。しかし視野が狭くても、通常、眼球運動や首の運動でカバーできるように徐々になっていきます。完全に元のようにはいかないまでも、慣れとともに、日常生活にそれほど大きな影響は出なくなる可能性があります。

頭蓋咽頭腫が発症して15年後生存率は、およそ80パーセントです。悪性腫瘍に比べれば、かなりよいといえます。7歳で15年生きても22歳とまだ若いではないかと思われるかもしれませんが、多くの患者さんを何10年も経過観察することが困難なために、データが存在しないだけで、その後の事を保証していない訳ではない、と御理解下さい。

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