神経芽腫の治療中。イリノテカンは使えるか

回答者:牧本 敦
国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科科長
発行:2013年2月
更新:2013年12月

  

3歳の娘が神経芽腫の治療をしています。シスプラチンを含む4剤併用の化学療法を3コース行いましたが、腫瘍の縮小が十分でないため、手術ができないと言われました。ネットで調べていて、イリノテカンという薬が「小児悪性固形腫瘍」に使えるようになりそうと知りました。どのような薬なのでしょうか。娘にも使えるのかどうかなど、知りたいです。

(神奈川県 女性 40歳)

A セカンドラインまでの治療を検討してから

神経芽腫の標準的な薬剤(シスプラチンを含む4剤併用の化学療法)で効果がなかった場合は、次に効果があると思われる薬剤(セカンドライン)を使っていくことになります。具体的には、イホマイド、エトポシド、パラプラチンから、2剤ないし、3剤を併用する治療法です。

ファーストラインのこのシスプラチン等による治療が効かなかった患者さんでも、セカンドラインの薬剤による治療で腫瘍が縮小する効果が見られる場合もあり、腫瘍が縮小すれば、当初の予定通りの手術ができる可能性は残っています。

一方、イリノテカンは、小児固形腫瘍に効果があることが評価され、2012年11月に小児悪性固形腫瘍への適応についての公知申請が認められました。この申請が認められた時点から保険診療で治療が受けられることになっています。

神経芽腫は小児悪性固形腫瘍の一種なので、保険診療としてこの薬を使うことができます。

ただし、イリノテカンは、セカンドラインの薬よりは、効果が劣るとみられています。また、セカンドラインの薬による治療とイリノテカンの治療では、出る副作用の種類がかなり異なります。

具体的には、イリノテカンでは血球減少などの副作用が出ることは少ないですが、下痢などの消化器症状が強く出る人がいます。つまり、血球減少をなるべく抑えたい患者さんには、イリノテカンによる治療を選ぶという方法も考えられます。

一般的には、まずはセカンドラインの薬を使ってみるべきだと思います。薬の効果があまり現れなかったり、副作用が強すぎる場合に、イリノテカンの使用を検討することではいかがでしょう。

また、イリノテカンを使用する場合は、事前に代謝酵素の型を調べる血液検査を行うことが推奨されています。この検査をすると、例えば下痢などの副作用が非常に強く出るなどの、イリノテカンの毒性の出方がかなり予測できます。

担当の医師にそのあたりのこともよく相談なさってみてください。

シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ イリノテカン=商品名カンプト/トポテシン イホマイド=一般名イホスファミド
エトポシド=商品名ラステッド/ベプシド パラプラチン=一般名カルボプラチン
公知申請=すでに日本で承認されている医薬品について、適応外での使用が欧米ですでに認められていたり、科学的根拠があると認められる場合に、臨床試験を新たに実施しなくても保険適用が可能となる制度

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