術後の補助療法で、放射線以外の治療法は?

回答者:牧本 敦
国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科科長
発行:2012年6月
更新:2013年12月

  

3歳の息子です。腎臓のウィルムス腫瘍(腎芽腫)で、手術を受けました。術後の補助療法については、化学療法に加えて放射線治療を勧められています。子どもの将来のことを考えると、放射線治療の後遺症が心配です。

(石川県 男性 35歳)

A 放射線量を減らし、抗がん剤を増やす治療法もある

ウィルムス腫瘍の治療では、手術でがんを取り除いた後に化学療法を行います。なかでも、がんを完全に取り除くことができなかった場合は、化学療法に加えて放射線治療も行う化学放射線併用療法が標準的な治療法になります。病期でいうと3期以上、具体的な状態でいうと、がんが腎臓内に残っている、リンパ節に転移している、肝臓・肺・骨・脳などに転移がある、両方の腎臓にがんがある場合などです。

腎臓に放射線を照射した場合には、治療後に遅れて出てくる後遺症に注意が必要です。具体的には、脊椎側彎症や腸骨の発育不全、軟部組織の委縮や発育不全、骨粗鬆症などが挙げられます。

腎がんの放射線照射では、片側の骨盤が影響を受けて小さくなり、左右アンバランスに発育するため、見た目や歩行の仕方に影響が出る場合もあります。

このウィルムス腫瘍の化学放射線併用療法では、化学療法ではコスメゲンとオンコビンの2剤を用い、放射線は総量20グレイを数回に分けて照射するのが一般的です。ただし海外の研究結果によると、化学療法の抗がん剤を前述の2剤にアドリアシンを加えた3剤に増やす治療に変更したうえで、放射線治療の総線量を10グレイに減らした場合でも、予後に差がないことが明らかになっています。

これをもとに考えると、10グレイまでは照射量を減らしても、治療効果には影響はないということになります。放射線照射による後遺症は、総線量20グレイを超えると明らかに影響が増えるといわれています。ですから、後遺症のリスクを減らすために、抗がん剤を3剤にし、照射総線量を10グレイに減らす治療を選択するのも1つの方法です。

一方、3剤での化学療法では、副作用はより強く出ます。2剤では脱毛があまり起こらないのですが、3剤では多くみられ、白血球減少によって感染症にかかりやすくなる傾向は強まります。

いろいろな点を含めて検討する必要がありますが、放射線治療は後遺症がなるべく少なくなるように照射法が改善されています。30年前に治療を受けた患者さんに起きていることが、今の患者さんの30年後に起こるというものではありません。息子さんの疾患とそのあたりの見通しとを併せて、主治医と相談されたらよろしいかと思います。

コスメゲン=一般名アクチノマイシンD オンコビン=一般名ビンクリスチン アドリアシン=一般名ドキソルビシン

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