腎がんの薬物療法の選び方を知りたい
1年前、定期健康診断のとき、肺に影が見つかりました。精密検査の結果、右の腎臓にがんがあり、それが肺に転移していたとのことです。すぐに、右の腎臓を全摘する手術を受けました。手術後は、肺に転移したがんの治療のため、免疫力を高めるインターフェロンαを用いています。ただし、いつかこの治療は効果がなくなると聞いています。最近、分子標的薬と呼ばれる新しい薬が使われるようになったようです。私の場合、今後、どんな薬を選択したらよいのでしょうか。
(徳島県 女性 60歳)
A インターフェロンの次に分子標的薬
日本では、腎がんの転移が肺だけで、その大きさが1~2センチと小さくて、患者さんがお元気なら、一般的には最初にインターフェロンαを用いた治療を行います。ご相談者は、これらの条件を満たしていたので、この治療を受けておられるのだと思います。インターフェロンαで肺転移が消えた方の報告もあります。
腎がんに対する分子標的薬は、いずれも腫瘍に栄養を送る血管の新生を抑えて、腫瘍が大きくなるのを防ぐ薬です。現在、日本で使える分子標的薬は3種類出ています。1つ目はネクサバール(一般名ソラフェニブ)、2つ目はスーテント(一般名スニチニブ)。この2つの分子標的薬は、VEGF(血管内皮増殖因子)の受容体を阻害し、血管新生を抑制する経口薬です。3つ目は、今年4月に発売されたアフィニトール(一般名エべロリムス)。経口のmTOR(哺乳類ラパマイシン標的たんぱく質)阻害薬です。VEGF阻害薬が効かなくなったときに、有効な分子標的薬といわれています。これから1~2年の間に、パゾパニブ(一般名)、アキチニブ(一般名)、テムシロリムス(一般名)という分子標的薬も使われるようになると思います。
これらの分子標的薬を使う順番については、どういう順番が最もよいかまだ検討中です。現在は最初にネクサバールかスーテントを使って、効かないときにアフィニトールを用いることが多いと思います。分子標的薬はインターフェロンαと比べ効き目が早く、スーテントだと2週間も使えば、腫瘍が小さくなります。ただ、腫瘍を小さく抑えている期間は決まっていて、ネクサバールで平均7カ月、スーテントで平均11カ月です。これは平均なので、1年以上効いている方もいます。効き目がなくなると、小さくなった腫瘍があっという間に大きくなってしまうこともあります。また、分子標的薬は非常によく効く薬ですが、副作用も多く認められています。副作用が強いため、休薬や薬の減量をして用いることもあります。
ご相談者の場合、60歳という年齢を考えると、インターフェロンαが一定の効果を示しているようですので、現在の治療を継続され、もし、腫瘍が大きくなり、分子標的薬を使う必要が生じたら、主治医とどの薬を使うか相談されるのがよいでしょう。