4センチほどの腫瘍。全摘出手術以外の治療法について知りたい

回答者:中澤 速和
東京女子医科大学東医療センター 泌尿器科准教授
発行:2007年10月
更新:2013年12月

  

最近、会社の健診で腹部超音波検査を受けたとき、左の腎臓に異変が見つかりました。精密検査が必要とのことで、造影剤を使ったCT検査を受けました。4センチほどの腫瘍があるといわれました。担当医からは全摘出手術を勧められています。できれば、身体に負担の少ない手術を受けたいと思っています。全摘出手術以外の治療法と、その効果を教えてください。

(宮城県 男性 51歳)

A 腎温存手術がある

ご相談者の場合、第1選択の治療法は手術です。

腎臓がん手術には、腎臓のすべてを摘出する全摘出手術と、腎臓の一部を温存する腎温存手術とがあります。どちらの手術法を選択するかは、腫瘍の大きさのほかに腫瘍のできた場所によって変わります。腫瘍の大きさが4センチとのことですから、一般的には、全摘出手術も腎温存手術もできると思います。

また、腎臓がんの手術は、開腹して行う方法と、腹腔鏡を用いる腹腔鏡手術とがあります。最近、腎臓の全摘出手術では、腹腔鏡手術を行うことが多くなっています。私の病院では、腎臓がんの全摘出手術の80~90パーセントは腹腔鏡手術で行っています。腹腔鏡下での腎臓の全摘出手術はそれほど難しくはありません。

腎温存手術は腎臓の機能を保てることが大きな利点ですが、腹腔鏡手術ができる場合とできない場合とがあります。通常、腫瘍のある腎臓の反対側の腎臓が正常で腹腔鏡下での部分切除が可能な場合、腹腔鏡手術を行います。腫瘍の場所などの関係で、腹腔鏡下での腎温存手術が難しいときには、開腹による腎温存手術を行います。腎温存手術を腹腔鏡下で行うかどうかは、施設によって、かなり差があります。現状では、腹腔鏡下で腎温存手術を行える施設は全国的にもごく限られています。腹腔鏡手術は、開腹手術に比べて、身体への負担は少なく、術後の回復も早いというメリットがあります。両者の5年生存率はほぼ同じです。

手術以外の治療法としては、高齢者や合併症を持つ方などを対象に、ラジオ波焼灼療法や、凍結療法なども行われています。ただし、それらの治療法の根治性や長期生存率などは明らかではなく、確実性に乏しいといえます。また、放射線療法や、抗がん剤治療は、その治療効果が明らかにされていません。

ご相談者は、腫瘍が4センチで、無症状だとすれば、手術で根治する確率は非常に高いと思います。5年生存率は95パーセント以上です。

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