腎細胞がんで、部分切除を希望。全摘手術との違いは?
先日、早期の腎細胞がんと診断されました。場所は左腎の下部で、大きさは4センチ程度です。右腎は正常です。医師からは左腎の全摘手術を勧められていますが、4センチくらいでも部分切除の適応になることがあると聞きました。できれば部分切除を希望しているのですが、再発など、今後のことを考えると、全摘のほうがよいのでしょうか。
(茨城県 女性 53歳)
A 部分切除が適応になるケースはさまざま
ご質問にお答えする前に、腎臓の部分切除術の適応についてお話ししてみましょう。
ほぼ絶対的に部分切除術が適応になるのは、主に次の3つの場合です。
1つは、何らかの理由ですでに腎臓が1つしかない場合。2つ目として、左右両方の腎臓があっても、がんのないほうの腎臓が何らかの理由で機能していない場合。3つ目として、左右両方の腎臓ががんになっている場合。これらのケースは、ほぼ絶対的に部分切除術が適応になります。がんのある腎臓を全摘出したら、腎機能が廃絶して透析療法などが必要となるためです。
相対的に部分切除術が適応になるのは、両方の腎機能が低下している場合や、糖尿病性腎症などの腎疾患がある場合などです。これらのケースでは、腎臓を1つ切除してしまうと、将来、末期的な腎不全になる危険性があるため、部分切除術を選択することがあります。
上記のケースが当てはまらない場合、標準的な治療法は、がんのある側の腎臓を全摘出する手術になります。ただし、次の条件に当てはまる場合は部分切除を行うこともあります。
1つ目は、がんの大きさが4センチ以下であること。2つ目として、がんと正常組織との境目が比較的明瞭であること。3つ目として、腎門部の脂肪組織にがんが達していないこと。腎門部の脂肪組織には、大きな血管や腎盂腎杯(尿の集まる部分)などが集中しています。脂肪組織に切り込んでしまうと、大きな障害が出る可能性があるため、腎門や腎門付近にがんがある場合は部分切除は勧められません。また、4つ目として、患者さん本人が希望されているということです。
ご相談者は、右側の腎臓は正常なわけですから、絶対的および相対的な部分切除術の適応はありません。がんの大きさが4センチというのは適応のギリギリの線です。すると、もっとも問題になるのはがんのある位置です。「左腎の下部」と書いていますが、どの程度、腎門から離れているかが問題です。がんが腎臓の内側に進出しているタイプのがんの場合は、部分切除術はあまり勧められません。
片側の腎臓をすべて摘出した場合も、部分切除の場合も、再発率はあまり変わりません。ただし、部分切除術は全摘手術に比べ、手術自体が難しく、出血リスクが高いなどの問題もあります。
がんのある場所などによりますが、文面だけでは、左腎の全摘出手術をおすすめします。最終的には、以上のことをお知りになった上で、再度、主治医と相談してお決め下さい。